LIBORの公表停止、または公表停止予定を発表すると、LIBORとRFRとのスプレッド計算が行われることになるが、そろそろ停止予定の発表があってもおかしくない。USDの公表停止は18か月延期されたが、スプレッド計算のトリガーとなるアナウンスメントは、様々な通貨について同時に出る可能性が高いので、これが行われるとマーケットへのインパクトも予想される。
英国では、新レートへの移行やフォールバック条項の導入が困難なタフレガシー契約については、Synthetic LIBORの利用可能性が高まっている。英国当局のFCAがIBA(ICE Benchmark Administration)に対してLIBORの算出方法を変更させる権限を行使する、という回りくどい言い方で報道はされているが、要はLIBORの代わりにSynthetic LIBORが使えるということだ。
計算方法はRFRに何らかのスプレッドを加えるものになるだろうが、これによって、LIBORが公表停止になったとしても、新レートに移行できなかった古いレガシー契約に対する手当ができることになる。
USDの場合は既に18か月の延長があるので問題がなく、CHFとEURについては、それほど取引も多くないので、おそらくSynthetic LIBORが使われることはないと想定されている。USDとともに、引き続き検討とされているのがJPYである。
社債のバイバックや新レートへの移行、あるいは既存の契約に頑健なフォールバック条項を入れたりといった手当が進んでいけば、Synthetic LIBORに頼る必要はないのだが、日本の現状を見るとこの移行作業が進んでいるとは到底思えない。したがって、Synthetic LIBORに期待している市場参加者がかなり多いものと予想される。
欧米ではタフレガシー契約に対して立法的解決策の検討が行われているが、日本ではこうした議論があるとは聞いたことがない。海外からも、日本の状況を憂慮する声が日に日に大きくなっているのを感じる。英国法だったりNY州法だったり、異なる準拠法で行われた取引もあり、本来であれば厳密な分析をしておくべきなのだろうが、なかなか統一見解がない。
極力新レートへの移行が望ましいと思っていたのだが、やはり日本円Synthetic LIBORの利用に向けて声を上げていくべきなのだろうか。だとするとすぐにでも作業を始めなければならない。あるいは、現状は様子見をしている日本の投資家も年末に向けてどこかで一斉に動き出すのだろうか。