今年は、欧州で5000憶ドル超、米国で1.2兆ドルにも及ぶ社債発行が行われてきたが、直近ではこのペースに陰りが見えてきた。一方で市場には潤沢な資金が継続して流れ込んでおり、金余りの様相を呈している。この流れが継続すると信用スプレッドのタイト化は続くだろうし、中小企業まで新規社債発行の動きが広がっていくことになるのだろう。大企業はほぼ来年までの資金調達を終えているように見えるため、第四四半期はサイズの小さな発行が主流になり、全体としてのボリュームは減少することが予想される。
一部の企業の中にはその信用スプレッドが、感染拡大前の水準をも下回っているところがある。つくづく市場は政府、中央銀行の行動によって動くものだという認識を新たにさせられる。それでもさすがにここまでスプレッドがタイトになる(社債価格は上昇する)と、そろそろ投資適格社債ポートフォリオから資金を引き上げる動きもみられて始めているようだ。特に社債ETFからは9月以降資金が流出しており、個別の社債へその資金は流れているようである。
また、AT&T、BPなどのように社債のバイバックを行い債務を減らす動きも見られ始めている。今年は社債発行は多いが、同時にバイバックも昨年比40%増程度で推移している。危機前に資金手当てをしておこうとした企業が、実は経済混乱は思ったよりひどくないため、無駄な債務はやはり減らそうとしているようだ。大統領選で思ったほどの混乱が起きないという予想も市場のセンチメントを変えているのかもしれない。
それにしても日本の社債市場ではこうした話があまり聞かれない。外債発行をした場合はグローバルな投資家の需要を集めるため、海外と全く同様の動きになるが、円債市場は全く別物のようだ。円債を発行するよりは銀行にローンを借りた方が楽ということなのだろうか。確かに周りにも株を買う人は多いが、社債を買う人はあまりいない。円債に投資するファンドも海外に比べると少ない。
マイナス金利になったり、中央銀行がお金を刷り続ける中では、現金を持っていることも危険なはずなのだが、やはり投資をする方が危険と思う人の方が多いのだろう。日本の資産運用ビジネスの拡大に期待したい。