市場の雰囲気が変化し始めた

直近では、米国で物価をめぐる議論が盛んに行われているが、米国労働局のデータを見ると、想定したような物価の動きになっており、日本の統計に比べると肌感覚にあうようなうごきに見える。

8月のデータ(前年比)を見ると、学食や職場の食堂の食品価格が3%下がっているのに対し、家庭での食品価格が4.6%上昇している。出社頻度が減るためスーツや高級衣料の物価が17%下がり、化粧品価格も3%減だが、パジャマの価格が4%上昇している。新聞やケーブルテレビの価格は思った通り上昇している。ホテルや航空券は当然のことながら急減している。授業料上昇にも歯止めがかかり、カメラ、ミシン、自転車等の価格上昇がみられる。

とは言え、全体的な需要は弱く、第二波、第三波の懸念もあるため、インフレを予想する声は少ない。特に少なくとも大統領選までは追加の大型政府支出が見込めないことが明らかになってきたため、これまでの流れが逆回転するかもしれない。失業や家計所得の減少からの需要減もあって、一般的にはデフレ圧力がかかりやすいかと思われる。

これまで上昇を続けてきた貴金属価格も下がり始め、テクノロジー株の上昇とドル安基調にも終止符が打たれ、インフレ期待は一気に下がり始めた。米国債のスティープナー推奨をする意見も一気に後退した。社債価格もハイイールド債を中心に現金を引き上げる動きもみられる。とは言え、その資金の流れる先がないため、引き続き株価が支えられる可能性もあるので、このまま膠着状態が続くのだろうか。

IBOR Fallbacks Protocolの公表が遅れている

LIBOR改革に関するISDAのProtocolの公表が遅れに遅れている。先週水曜の9/23のISDAのアナウンスには、週の初めに当局にレターを送り、その中で、プロトコルの発効日を2021年1月中旬から下旬と想定していると書かれている。独占禁止等、公平な競争環境を確保するためのレビューによって遅れているとは報道されていたが、ここまで遅れることなるのは想定外だったに違いない。米国司法省からのフィードバック待ちとのことだが、このプロセスはISDAサイドではコントロール不能とのことで、若干のFrustrationが表れているようにも思える。

司法省からのゴーサインが出た時点で、ISDAは約2週間の期間を与えて公式な効力発生日を伝えることになっている。この期間に市場参加者は「in escrow」でプロトコルに批准できることになっている。この期間をエスクロー期間という。つまり、批准の事実は公開されないものの、プロトコルが有効になった時点で批准の効果が発生することを確約するといった意味になろうか。

プロトコルの発効はその後約3か月後とされているが、年末だと混乱するため、来年1月の後半までは発効しないと見込まれている。FCA高官からのLIBOR Cessationのアナウンスが年末までに出てもおかしくないというコメントは注目を集めたが、過去5年中央値のスプレッド調整の計算は、すでに決められた方法に基づいて行われる。これはプロトコルの発効日に関係なく行われるということだ。

以前日本でも地銀の統廃合を進めたい金融庁と、公正取引委員会の意見の相違が明らかになったことがあったが、同じような事情なのだろうか。いずれにしても、ただでさえ時間のない中対応に苦慮している業界にとっては、早急なアナウンスメントが強く望まれることろである。