無料サービスによってビジネスを拡大を目指すのは悪か?

欧州ESMAから、MiFID IIのResearch Unbundlingによる悪影響はなかったという分析結果を出している。2006年から2019年までの8000社について分析を行ったとのことだ。

2018年にMiFID IIの一環として導入されたこの規制は、リサーチを無料で配る代わりに取引執行を求めるという慣行が不透明として、リサーチには独自の料金を払うように求めたものである。これによって、調査対象企業が大企業に集中し、小型株の調査の質が悪化し、これらの中小株の取引き流動性にまで影響を与えたという批判が一部ではあったが、それを真っ向から否定した形だ。

リサーチレポートが発行される企業数は確かに減少しているものの、これはMiFID IIの影響ではないという主張のようだ。アナリストの数も減ってはおらず、リサーチの質も特に変化していないとの主張となっている。

先に紹介したように7月に欧州委員会からこのUnbundlingの一部緩和策が発表されていたが、やはり規制緩和は一筋縄ではいかないのかもしれない。

とはいえ、リサーチを無料提供することがそれほど悪なのか、個人的にはよくわからない。弁護士事務所やコンサル会社もよく無料でセミナーをやったり、規制アップデートなどを無料で行って、その後のビジネスにつなげようとしている。メルマガを無料で配って優良プログラムに誘導したり、特売品や何らかの特典を打ち出して集客を図る小売店やサービス業も多い。

何かをしてもらったらお返しをしたくなるという人間の返報性に訴えるやり方なのだが、このようなことは古今東西様々な業界で行われてきたことのように思える。確かに、銀行が自分のポジションに都合の良いリサーチを発行するのはまずいし、特別な報酬としてみなされてはいけないといか、投資家の利益を損なうような利益相反があっては困るなどという観点もあるだろうが、リサーチを別料金にすればこれがなくなるという類のものでもないような気もする。

ただ、昨今の世論からすると、規制を作るのは比較的簡単だが、規制を緩和するのはかなり厳しいので、しばらくはこのままの慣行が続くことになるのだろう。