USD IRSディスカウントレート変更プロセス

今後のマーケットインパクトもありそうなので、LCHやCMEで10月16日から19日に行われるディスカウントレート変更についてまとめてみたい。LCHではUSDのみならずKRW、CNY、INR、BRL、TWDなどのNon Deliverable通貨やMXNスワップも対象となる。また現金決済ではなくスワップ決済のスワップションも、行使によってクリアされた瞬間にSOFR割引となる。

デリバティブ取引は結局は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたものなので、割引率(ディスカウントレート)が変われば当然ポジションの時価が変動する。時価が変化すると言うことは、その時点で得したリ損したりする人が出てくる。もともとのスワップのクーポン等のキャッシュフローには何の変更も起きない。

時価とともにもう一つ変化するのがリスク量だ。相対取引でヘッジをしていた場合、CCP取引の方だけ割引率が変更になると、ヘッジのズレが生じてしまう。したがって、従来と同じような状態を続けるには、損をした人はその分の現金を受け取り、得をした人は現金を払い、CCPとの間でリスクをフラットにするための新たなスワップをブックすることになる。

おそらくクライアントクリアリングでLCHに参加している人は、このCash onlyかCash+Compensating Swapかの選択をするよう通知を受け始めているものと思う。ちなみに、Cash onlyを選択することをOpt Outするという。期限は9月4日と報じられている。

通常はSwapも同時に行った方が、リスク量の変化がないので、CCPとしても望ましい。ちなみにLCHではディーラー自身のポジションにはこのOpt Outが認められず、強制的にSwapをブックすることになる。それくらい通常であればSwapもセットで行うのだが、デリバティブ取引に明るくないエンドユーザーの中には、何だかよくわからないスワップを行わなければならないならCash Onlyで良いという選択をする人が多いかもしれない。CMEにはこのような選択肢はなく、強制的にスワップがブックされるようだ。

このスワップはFFとSOFRのベーシススワップになるはずだが、オークションを行うことによってその後解約され、オークション時に得られた情報によってスワップのValuationが行われる。

つまり、このオークションにどのくらいのスワップがかけられるかというのは、その時のスワップの時価とどの程度のエンドユーザーがOpt Outするかにかかってくる。これによってマーケットが動くことも十分予想されるので、今後もモニタリングが必要だろう。