10月のUSD IRSのディスカウント変更プロセスについて書いてきたが、SOFRとFFのベーシス拡大を予想する声が大きくなってきた。確かに6月以降このベーシスは若干拡大しているように見える。
通常リアルマネーと言われる保険会社や年金ファンドは、金利リスクをヘッジするため、長期の固定受けスワップを持つことが多い。一方アセマネのフローは、固定クーポンの社債を買ってそれをヘッジするニーズがあり、どちらかというと固定払いが多くなる。
既存の固定受けスワップは昨今の金利低下によって勝ちポジションが大きくなっているが、割引率変更時にはSOFRを受けてFFを払うスワップを入れることになる。つまりリアルマネーはSOFR受けのスワップをブックし、アセマネは払いのスワップをブックすることになる。
LCHではこのベーシススワップを行わないOpt Outができることになっているが、そうするとこのベーシススワップがオークションにかけられマーケットに出てくることになる。このオークションにかかるスワップの想定元本は、その時のスワップの時価と等しくなるので、スワップの勝ち分がどの程度か、またOpt Outを選択した参加者がどの程度いるかに依存する。
つまり、SOFR-FFベーシスが拡大するということは、固定受けのリアルマネーがOpt Outし、SOFR受けのベーシススワップの方が多くオークションにかけられるということを市場が予測しているということになるのだろうか。また、アセマネは固定払いに偏るとは言え固定受けのニーズもあるため、どちらかというとリアルマネーのフローが大きくなるという予想のもとで動いているのかもしれない。そして金利が下がれば下がるほどスワップの勝ち分が増えるので、この動きが増幅されていくことになる。
一方、スワップの勝ち分をリセットする方法にリクーポニングがあるが、こうした動きも観測されているようだ。つまり、以前1.5%の固定受けのスワップを行っていればその勝ち分が大きくなっているが、その1.5%を例えば0.5%に変更すれば、勝ち分は少なくなる。当然少なくなった分は損をするわけではなく、現金で受け取れる。こうすればディスカウント変更時に行うベーシススワップの想定元本が減らせる。
オークション自体はLCHが10/16に、CMEが10/19に予定されているが、オークションにかけるかどうかの選択はCMEが10/2までにCMEに連絡、LCHが9/4までにクライアントクリアリングブローカーに連絡することになっている。LCHがオークションサイズの予測値を公表するのが9/18である。こうした日程をめがけてマーケットがどのように動くかに注目が集まる。
こんにちは。ためになる記事をありがとうございます。いつも大変参考にさせていただいています。
初歩的な質問で申し訳ないのですが、「割引率変更時にはSOFRを受けてFFを払うスワップを入れることになる。つまりリアルマネーはSOFR受けのスワップをブックし、アセマネは払いのスワップをブックすることになる。」はなぜでしょうか?コンセプトとしてSOFR/FFのベーシスリスクが発生しそうなのは理解できるのですが、方向をどのように考えればいいのか疑問に思っております。お手数をおかけしますが、ご教示いただけると大変助かります!!
方向はややこしいですよね。間違っているかもしれませんが、私の理解を書いておきます。
生保や年金は長いところで固定受けのスワップを持つ傾向があるので、金利低下局面では大きなインザマネーのポジションを抱えていると思われます。
その勝ちポジションは今後はSOFRで割り引かれるので、SOFRが上がれば価値が下がってしまいます。したがって、SOFRを受けるスワップを行っておけばSOFR上昇時にそのスワップの価値が上がることになり、スワップの減価を相殺できるのではないかと思った次第です。
お返事が遅れてしまい大変失礼しました。ご丁寧な回答をありがとうございます。生保が受け持ちのスワップに関して、クリアリングハウスからもらうヘッジがSOFR受け・FF払いのくだり、よくわかりました。
1日に発表された仮想ポートフォリオでは30年のみがその方向となりましたが、全年限でSOFR/FF縮小してしまっていますね…全く読めないです…