お金が回らなくなると経済活動が停滞するというのが個人的な経験測だが、米国でも資金の流れが悪くなってきているように感じる。日本では、個人が銀行預金にお金を回し、銀行が重厚長大産業にその資金を回していたころは良かったが、国債や外債に回り始めてから経済が停滞した。
一方、米国では、商業銀行の資産に占める現金の割合は約10%程度であったが、最近では15%を超えるようになってきている。通常金融危機やコロナショック時には現金を潤沢に準備しようという意識が働くのでこれが高くなるのは当然なのだが、シリコンバレーバンクなどの危機が去った今でも現金比率が高止まっている。規制強化もあり、現金がないと不安という心理が働いているように感じる。
12月末に短期金融市場でSOFRが急上昇して市場を驚かせた。期末に資金がひっ迫するのは珍しいことではないが、それでも今回の上昇幅には危機感を覚えた人も多かったものと思われる。何もイベントがなくてもここまでマーケットが動きうるというのは、何か構造的な問題があるように思えてならない。
これで米国債の清算集中規制が始まると、さらに証拠金ニーズが高まり、現金がひっ迫する可能性も高まるため、引き続き注視しておく必要があるだろう。米国債の発行も増え、銀行が手元にリザーブしておく現金も増え、規制により証拠金が増えると、現金が経済活動に回らず、カストディアンやFEDに滞留するということが起きる。国債に回った資金が成長資金に回ればまだましだが、この資金がどこまでうまく使われるかは政府にかかっている。
いずれにしても銀行サイドは、貸出に慎重な姿勢を続けることが予想される。資金を集めるために、預金金利を高めに保とうとするところも出てくるだろう。投資面でも極力現金比率を上げようとするため、マーケットメークにも消極的になるかもしれない。そうすると当然市場のボラティリティが上がる。
急激な市場変動は昨今あちこちで起きているが、今年も何らかのきっかけで市場がクラッシュする可能性は高いと考えた方がよさそうだ。