欧州のクリアリングに関する規制はEUのEMIRで定められているが、Brexit後基本的に英国もこれを踏襲する形になっていた。EU側がEMIR3.0の議論を進める中、英国でも若干独自色を出した改正がなされるのではないかという報道が出ていた。何らかのアナウンスメントが今月か来月にでも出るのではないかと言われている。
欧州のルールは、どちらかというと保護主義的になってきており、LCHからEURスワップのクリアリングをEU域内に移そうということで、域内で最低限クリアリングをしなければならない取引量を定めたりしているので、英国が規制の独自色を強めるのはある意味当然の流れなのだろう。
英国では、2022年の9月にトラス政権の大型減税が金利の急上昇を招き、担保が出せなくなったアセマネなどのバイサイドが、手持ちの国債を現金化して担保に充てるという動きが市場の混乱を増幅させた。この時に適格担保を現金以外に広げるべきという議論が持ち上がった。その後のコモディティ価格の急騰でさらなる担保不足が発生し、銀行の保証状を適格担保として認めるべきという議論も盛り上がった。そして今回のEMIR3.0でこれが認められることになりそうだ。
英国では特にトラス政権時代の経験があるため、同じような適格担保の拡大が盛り込まれる可能性が高いものと思われる。これ以外にもどのような独自色を出してくるかに注目が集まるが、CCPのルールはFMI原則がベースになっているので、それほどドラスティックなものにはならないかもしれない。ただ、日本ではあまりこうしたルールの修正が行われていないため、海外の動向を睨みながら、グローバルな流れから取り残されないよう注意を払っていく必要がある。