米国では、LIBORの二の舞とならないよう、オーバーナイトのSOFRに流動性を集中させるべく、タームSOFRの銀行間取引が実質的に制限されているが、カナダではターム物の利用が許されるかもしれない。
カナダのリスクフリーレートはCORRA(Canadian Overnight Repo Rate Average)と呼ばれるが、カナダでベンチマークについて協議をするCARR(Canadian Alternative Reference Rate ) Commiteeから、ターム物のの利用を広く認めても良いのではないかというコメントが出されている。
カナダのマーケットの特性を考慮すると、ARRCのガイダンスに従う必要はなく、ターム物の銀行間取引はむしろ望ましいことなのではないかとのことだ。これが先例となると、他の通貨についてもターム物の利用が拡大するかもしれない。日本でもターム物の利用を制限すべきという意見は少なく、当局サイドからも利用を促進するようなコメントも聞かれることがあるので似たような状況なのかもしれない。
そもそもここまで流動性が上がってくれば、LIBORで起きたようなことがSOFRで起きるとは考えにくい。何よりも金融機関内部の雰囲気が10年前とは全く異なる。わざわざ刑務所に行くリスクを冒してまでターム物周りで不正を働こうという人は少ないうえ、金融機関内部でもそれを取り締まる人員が10年前の数倍に膨らんでおり、システム的にも不正を防ぐ仕組みが整備されている。
カナダには、信用リスクを含んだレートであるCDOR(Canadian Dollar Offered Rate)というものもあるが、これもあと一年で公表停止となるが、CORRAへの移行は順調に進んでいる。したがって、カナダの金利指標はCORRAに集中されていくことになる。将来の方向性としては、オーバーナイトのリスクフリーレートを中心としつつ、先物とターム物が使われるという方向性になるのだろう。そして米国のAmeriborやBSBYのようなクレジットセンシティブレートが細々と使われ、TIBORも同じような位置づけになるのだろう。