金融ショック時に取引、流動性供給を継続するには

これだけ市場変動が激しくなると海外ではオプション取引によって損失の影響を最小化しようという動きが出てくる。しかし、ここまでくると資本規制に起因する銀行のリミットが上限に近づいてくる。これを受けて米国の取引所が銀行に流動性を支えるために資本上の免除手当を入れられないか働きかけているという報道があった。

これまで何度も紹介してきたCEMからSA-CCRへの移行を早めることにより、顧客のためのポジションを元本でなくリスクによって決める方法の早期導入を求める内容だ。今回の市場変動を受けて3月のオプション取引量が過去5年で最大になったと報じられている。既に3月18日にFED副議長らに宛てた文書が送られているが、当局の動きが注目される。

これまで日本の当局の対応について少しコメントをしてきたが、もしかしたら業界サイドにも問題があるのかもしれない。この取引所が当局に出したレターのように、海外では業界団体を含む業界サイドからの働きかけも多いように思う。

日本においては、証券自己資本規制等がCEM方式を取っているが、これも証券会社が流動性を支える障壁になっている。未だに格付に頼った方式になっているのも問題だ。つまりどんな優良企業であっても格付が存在しなければ信用リスクが高いとみなされ、高い信用リスク資本賦課を要求される。

また、決済関係が遅れている日本の場合は、マージンコールのオペレーションを避けるため、無担保で為替取引を行うケースも多いものと予想されるが、これをヘッジする先は有担保なので、この資本コストもばかにならない。グローバル金融機関で、このような顧客取引のリスクを本社に移転している場合は、対本社は有担保、日本の顧客は無担保となってしまう。本社が銀行出なかった場合は、証券自己資本上の信用リスク資本賦課も大きい。

グローバル展開をしているアセマネも、海外では有担保だが、日本の年金資産等を扱う時だけは無担保ということもありうる。こうした取引はグローバルでは問題になるのだろうが、日本の特殊性ということでおそらく今でも続いているのだろう。しかしこのような市場変動が起きると、いざという時に取引が止められるということもあるのではないか。オペレーションが面倒だというのも理解できるが、有事に安定的に取引を継続できるメリットも大きいものと思われる。今回の危機でその重要性がまた再認識されたと思う。

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