金融におけるガラパゴス

コロナショックにより人の移動は少なくなるものの、お金の動きなど金融に関しては引き続き世界とのつながりが深くなっていく。特にデジタルエコノミー、電子マネー、即時決済等、今後の金融は極力標準的であった方が有利である。

その意味で、昨日コメントしたようなレポなど、やはり極力標準的なやり方に揃えていかないと資金が日本に流れてこない。日本には日本のやり方があるため、それは極力大事にすべきという論調もある程度理解できるのだが、こと金融に関しては、これが裏目に出ているケースが多い。本来はJust in timeなど、日本で優れたやり方を開発してそれを海外に広げれば良いのだが、残念ながら金融に関してはお世辞にもうまくいっているとは言えない。以下いくつか例を挙げてみる。

税制
レポについての記事でも書いたが、税金の扱いが異なることによって日本からビジネスが逃げているものが多い。例えば、危機に瀕した海外銀行が、ローンやデリバティブポートフォリオを二束三文で売り出した時、日本の金融機関がこれを買うのは難しい。海外では1億円の不良債権化したようなデリバティブポートフォリオを1千万円で買えば、そこにXVAなどのリザーブを引いたその時の想定利益に対して税金がかかるが、単純化していうと9千万円に税金がかかってしまっていた。当然CVAの導入に合わせてこれを変更しようという努力は続いているため、将来的には問題なくなるだろうが、不良債権処理が進みにくい理由の一つになっている。

選択権付債券売買取引
これはグローバルではBond Optionなのだが、日本では全く別の形態で取引が続けられている。実態としてはBond Optionというオプション取引なのに、日本では債券売買として扱うため、外資系の日本法人の帳簿管理上非常に面倒な処理が入る。そして、これはほとんど無担保で行われるので、証拠金規制の対象にもならないため、担保を避けるためにも使われてしまう。ほかのデリバティブ取引とのネッティングもできず、システム上もデリバティブとしてブックされないよう、グローバルシステムに特殊な変更を入れる必要がある。

着地取引
これも日本独特のルールがあるため、海外からBond Foward取引が来た時も、着地取引に該当する可能性があるからと、コンプライアンス部門が保守的なところでは、様々な制限をかけられてしまうこともあると聞く。選択権付債券売買と同じく、これも無担保でISDA上のネッティングができないためにリスクが大きくなるのだが、日本だけ特殊な扱いになっている。米国でも決済までの期間が長いものについては無担保であった時期があったが、現状はMSFTA(Master Securities Forward Transaction Agreement)によって標準的な取引方法が確立しつつある。
ひょっとしたらこうした取引にすれば取引の時価評価をしなくても良いというルールを作れるところもあって、期間損益を自由に操作できるということもあるのだろうか。証拠金規制や各種デリバティブ規制が入ってきたにも拘わらず、なかなかこれらの取引がなくなる気配がない。ISDAマスター契約がここまで標準的になり、各種規制もこれを前提に作られているので、こうした日本独自の取引形態は極力グローバル標準に近づけていった方が望ましいと思われる。

Derivatives Discount
通常デリバティブ取引は、適切な割引率で時価計算が行われる。円担保であれば翌日物無担金利、ドル担保であればFF等市場標準ができているが、日本ではこうした変更が追い付いていないところがあり、必要担保額の計算で未だに金額が合意できない。未だに無担保も有担保も同じ割引率を使っているところすらあるかもしれない。LIBOR改革でEURとUSDの割引率変更がもうすぐ起きるため、海外では急ピッチでシステム改訂が行われているが、日本であまり話題にならないのは割引率が適当だからなのだろうか。さすがに今はないだろうが、支店によってシステムが違うため割引率が違う事があるという話を昔聞いたことがある。割引率が違うということはデリバティブ取引の時価が違うということであり、財務諸表が正しくないということになるため、海外ではかなり神経質にチェックされるのだが、LIBOR改革もあるので、日本も海外並みに厳格化していく必要がある。

印鑑文化
コロナショックが起きて真っ先に3/8にこのブログで書いたのが印鑑文化の見直しであるが、その後各種メディアでも大きく取り上げられるようになり、一気に見直し機運が高まった。ただ、今でも郵送以外を正式な書類としては受け付けないところ、マージンコールもメールだと気づかないので、FAXか電話を要求するところなど、自動化に逆行するリクエストは多い。口座開設にしても印鑑証明書という独自文化は海外投資家には理解不能で、逆に部長印などを押されても、そんなものは誰でも押せるではないか、きちんと権限のある人が押しているのかと疑われる。印鑑証明書等の各種証明書類も役所に取りにいかなければならず、契約交渉が長引くうちに6ヶ月の期限切れになり、新しいものを依頼したら、面倒だからもう諦めると言われたこともある。この状況ではとてもでないが、海外投資家を国内に呼び込むのは難しい。収入印紙も実物を貼って印鑑を押したりするのはあまりにも面倒だ。

他にも多数あるが、残りはまた別の機会に書き足したい。

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