資本規制、担保規制、清算集中規制、電子取引への移行が市場変動を増幅させている

昨日と同様の規制のUnintended Consequenceの話を続ける。米国の国債先物と現物のスプレッド取引の大規模解約が起きているというニュースが出ている。こうした状況を改善するため、FRBもタームレポを増やしているが、引き続き流動性枯渇に対しては予断が許さない。直近に発行されたカレントのOn the runの国債と、少し前に発行されたOff the runの間のスプレッドは通常であれば非常にタイトなのだが、これが先週は10bpを超えるような以上な水準にまで拡大した。

株式暴落を受けて益出しが可能なもののを現金化するニーズと、急速に変化するポートフォリオ時価変動に対応したマージンコールに応えるために、Off the runの債券売りを誘発しているとの見方が多い。最も流動性があると言われている米国債ですらこのような状況なので、他の資産の流動性は更に激しく低下していることが予想される。

通常は、バランスシートコストがかかる現物保有より、先物やデリバティブの方が有利であるため、現物との価格差が発生する。この差を取る裁定取引が一般的には行われるのだが、マーケットがこのような状況になってくると、一般的な取引ストラテジーが通用しなくなる。

日本でも、先物とJGB、スワップ金利が全く別物のように動いており、理論価格をベースにした裁定取引は全くPeformしていない。米国債と同様On the run、Off the runのスプレッド差は拡大しているため、マーケットメークは非常に難しくなっているものと思われる。これにJSCC-LCHスプレッドも加わる上、日本にはTIBORとLIBORのベーシス、DTIBORとZTIBORのベーシス等、様々なリスクが存在している。ドル調達懸念からドル円ベーシス市場も激しく変動している。清算集中規制はカウンターパーティーリスク削減には寄与したが、増え続ける当初証拠金及び清算基金、日中緊急証拠金などの急変によって、市場流動性に圧力がかかり、市場変動は以前より大きくなっているような気がする。

時間が経って市場が落ち着けば、また以前のように裁定が効くようになっていくのだろうが、マージンコールによって解約を余儀なくされるポジションが増えてくると、この動きが加速してしまう。最近の動きを見ていると、かなりの解約が入っていても不思議ではない。解約に応じる金融機関のリスク許容度もほとんどなくなっているだろうから、市場変動が激しくなっており、アルゴ取引がその動きを加速させる。リーマンショックの時は、資本規制や流動性規制が今ほど厳しくなく、ストレステストなどの制約も少なかったため、銀行のリスク許容度はそこそこ大きかった。

今回は銀行が危機に陥っているわけではないが、顧客取引の解約に応じて規制比率を下げることは困難である。つまり、リーマンショックの時よりも市場変動が大きくなる可能性があり、ポジション清算もより困難になっていると言えるのではないだろうか。銀行リスクを減らすために銀行の金融仲介機能を規制で制限している中、レポ市場等を支えられるのは中央銀行しかない。

つまり、バーゼルなどの資本規制、欧米のバランスシート規制、清算集中規制、証拠金規制、ボルカールール、電子取引規制等は、市場からカウンターパーティーリスクを減らし、金融機関の連鎖倒産を防ぐという点で効果を発揮したのだが、皮肉なことに、それは市場変動リスクを高め、逆に投資家が被るリスクを高めてしまっているのではないだろうか。

コメントを残す