米国クリアリングの盲点

以前から何度か書いてきたことであるが、資本規制強化によってクリアリングブローカーの数が減り、ポジションが集中しすぎていることに対して当局サイドからも懸念が聞かれ始めている。主要16CCPのマージンやポジションの集中度合を調べたRisk.netの分析によると、半数以上のリスクがトップ5のブローカーに集中しているとのことである。

BNYや野村などの撤退により、この集中度合は年々高まっており、Basel III Endgameを経てさらに加速していくことが懸念されている。当初に比べるとクリアリングブローカーの数は7割減という意見もある。一方でクライアントクリアリングの市場は拡大の一途をだどっており、クリアリングのキャパシティ不足が指摘されている。前にも書いたように、こんな状況では、ディーラー破綻時にデフォルトマネジメントプロセスがワークするはずもなく、ポジションの強制解消が市場混乱を巻き起こすのは目に見えている。こうした状況にあって、米国では更に資本規制を強化しようというのだから、規制というのは政治がからむと本当にややこしい。ウォール街を支持するような意見を出せば、選挙で負けることを懸念する政治家もいるのだろう。

もし今後新たな銀行危機が起きた場合に、その顧客ポジションを引き受けるかどうかという判断を短期間で迫られれば、おそらく自分だったらNoと言ってしまうだろう。もちろんポジションのサイズ、方向、既存顧客かどうかなど様々な要因を分析したうえで判断する必要があるが、大きなポジションを引き受けてしまってから将来的にさらなる規制強化が起きる可能性もあるので、保守的にプライシングをせざるを得ない。しかも、一方向かつ長期に大きなポジションを持つ傾向のある、生命保険会社やアセマネなどのリアルマネーのポジション引き受けにはさらに慎重にならざるを得ない。

米国債の清算集中規制の導入も検討され、市場がますますクリアリングの方向に進む中、生保などのエンドユーザーが、クリアリングへのアクセスに苦慮する状況になるというのは皮肉なものである。