短期金利低下のインパクト

政府中央銀行の刺激策により、現金が溢れかえり短期の米国債の利回りが低下を続けている。このままだと短いところの金利はマイナスになっていくだろう。そうするとこれにある程度連動するSOFRなどもマイナスになる可能性がある。

LIBORの代替指標とされているSOFRがマイナスになるというのは、かなりのインパクトがあるように思えてしまう。ただし、おそらくFRBはリバースレポなどによって、これがマイナスにならないようにするのだろうが、そうするとSOFRがゼロ近辺に張り付くことになってしまう。

そしてこれが1年、2年、5年といった年限にも波及すればイールドカーブのスティープ化が起きる。日本でも短期国債の増発が続き、今後の平均年限の長期化が課題となっているが、同じことが世界的に起きている。

特に米国の場合はいつも話題になる債務上限の話があるから、なおさら厄介だ。FRBの負債項目である財務省一般口座(TGA:Treasury General Account)の残高は現状1兆5000億ドルと報道されているが、昨年夏に採用された予算上の債務上限によれば、これは来年8月までに1/10以下の1330億ドルに下げなければならなくなると報じられている。

現状の短期米国債が満期を迎えていくと、巨額の現金が市場に放出されることになる。イエレン新財務長官は、国債発行計画に関して難しいかじ取りを迫られる。債務上限を上げて巨額の刺激策が導入される可能性もある。

欧州でも周辺地域の信用スプレッドは、堅調な需要に支えられて下がり続けている。ポルトガルの10年物利回りは先週初めてゼロを下回った。スペインやイタリアの金利も最低水準に近づいている。

ECBは1兆3,500億ユーロの緊急資産購入プログラムをさらに5,000億ユーロ拡大すると予想されていることから、市場の安心感も強い。

こう考えると、今や世界中の中央銀行が、実質的には日本と同じイールドカーブコントロールを行っているように思えてしまう。実際は否定しているものの、現実的には短期金利を下げて長期をプラスに保ちたいという行動に見えてしまうからだ。

そしてインフレは低く抑えられ資産価格が上がるので、しばらくは株価上昇も続くのだろう。ただし、このような緩和を永遠に続け債務を増やし続ければどこかで限界が来るので、その瞬間に突然インフレが起き、すべてが崩壊するということになるのかもしれない。

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