欧州の危機対応資金は企業ではなく国債に流れた?

欧州銀行が保有するイタリア、スペインなどの周辺国の国債保有を増加させている。コロナショック前に比べると15%程度増えているという報道があった。

3月の7500億ユーロの緊急資産買い入れプログラムが6月に13.5兆ユーロへと拡大され、市場に豊富な流動性を供給し、債券価格安定に資したことは間違いない。しかし、その目的通り必要なところに資金が回ったのかどうかは定かではなく、結局それがリスクの高い国々の国債保有に回っただけなのかもしれない。米国でも同じようにローンが増えずに国債投資に資金が回ったという報道があったので米国も同じだが、信用力に不安のある国の国債に回っている点が欧州の特徴だ。

欧州危機時にはこうした周辺国へのエクスポージャーが多いだけで市場の不安を煽ったため、金融機関もこうした国の国債保有には消極的だったが、今回はそうした心理的なタガも外れてしまっているように思う。

現在の資本規制の下では、国債を保有したとしても資本賦課がほぼ無視できるので、銀行が国債保有をしやすいのではないかという意見もある。一方、企業向けローンや社債保有を増やしてしまうとあらゆる資本比率に影響を与える上、引当金も積まなければならない。

特にローンの場合は急に減らすこともできず、社債も一たびマーケットが荒れれば売却が難しくなる。また、SLR、NSFR、LCR、ストレステストと、複雑に絡み合う資本への影響を考えると、国債を保有しておいた方がインパクトが理解しやすいという側面もあろう。

日本でも同じようなことが他国に先駆けて起きていたが、日本の場合は日銀の国債保有シェアが大きい。とはいえ、感覚としては海外よりは企業向けローン等に資金が回っているような印象を受ける。時間のある時にデータを見てみたいと思っている。

日本においては、資本賦課が低いからローンより国債というような議論を聞くことは海外より少ない気がする。あまり資本対比のリターンに気を使わなくて良いということの裏返しなのだろうか。または日本の銀行には、営利だけでなく、社会的責任を重視するという文化があるかもしれない。

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