日本におけるLIBORからのシフト(その2)

先週末にOISの取引量拡大についてコメントしたが、その後新聞でも同様の内容が報道されていた。もともと日本では、金融に関するニュースが海外に比べて少なかったが、今回の報道記事は、きちんと調べて書かれていて良い記事だったと思う。

LIBORがなくなるとは言え、プロトコルさえ批准すればOKと思っている市場参加者が多いのか、このままでは来年以降何が起きるか非常に不安な状況である。計算期間の最後に金利が決まる後決め複利が日本では敬遠される傾向があり、ターム物リスクフリーレートであるTORFに期待する声が多いが、TORFの流動性を上げるにはOISの取引を増やすことが重要だ。したがって、どのタイミングでOISの取引が増えていくのかに注目が集まっているわけだが、期限を考えるとそろそろ限界が近づいている気がしてならない。

10月の日銀金融システムレポートを読むと、71頁に以下のようなくだりがある。

「⾦融機関に対しては、LIBOR 利⽤状況調査の継続的な実施やヒアリング等を通じて、個別⾦融機関の対応状況を確認し、必要に応じて直接的な働きかけを⾏っていく。」

そして脚注34にこう書かれている。

「第 2 回 LIBOR 利⽤状況調査について、現時点では、2020 年 12 ⽉末を報告基準⽇とし、2021 年 1〜3 ⽉中の調査票の発出を予定している。前回調査(2019 年6⽉末時点)以降における、移⾏作業の進捗等を確認することが主眼である。」

つまり年末時点でLIBOR取引を集計して、1年半前と比較してどの程度移行が進んでいるかを確認するということになる。あまり進捗がみられないと、「必要に応じて直接的な働きかけを⾏っていく」ことになるのだろうか。

もしかしたらこれがきっかけで12月までにOIS取引を増やしておこうという動きが出てくるかもしれない。前回の調査結果を見ると、PV01で集計することの多い海外とは異なり、想定元本ベースでの報告だった。第2回がどうなるかわからないが、日本はデリバティブはリスク量というよりは元本という文化が支配的でもあり、継続性の観点からも、想定元本で継続される可能性が高い。つまり、短期のOIS取引を増やせば元本は大きくなるので、移行が進んでいるように見えることになる。

このからくりに気づく人が増えれば、12月に向けて急速に短期のOISの取引量が増えるかもしれないが、いずれにしてもOISへの移行が進むのは業界にとっても望ましいことである。

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