割引率変更に伴うUSDスワップション取引の価格変更に関するARRCガイドラインをめぐる混乱

米国では、市場参加者間でARRCのガイドラインをめぐる混乱が起きているようだ。5/14の当初ガイダンスによると以下の2点が推奨されている。

  1. 市場参加者は、2020年10月16日以降に期限が到来する米ドルスワップションについて、ISDAのSupplement 64の対象となるように修正し、合意された割引率としてSOFRを指定するとともに、これらの価格差を現金交換(Cash Compensation)する。
  2. 市場参加者は、2020 年 6 月 30 日までに、カウンターパーティに連絡し、上記1に従うか決定する。

その数か月後、大多数の市場参加者はCash Compensationが市場の意向に沿ったものと思ってはいるものの、現実にこれは難しいのではないかということが明らかになったと書かれている。これを受けて9/11に以下のガイダンスが加えられた。

  1. 2020 年 10 月 16 日までに、Cash Compensationに関する合意がなされていない場合には、スワップションを修正して Supplement 64 の対象とし、Agreed Discount Rateを指定するべきである。

そして、このガイダンスは任意のものであり、何ら法的義務はなく、カンターパーティー間の合意に基づいて決められるべきであると結ばれている。

一つだけ明らかなことは、Supplement 64の対象にするということなので、10/16以降に存続するスワップション取引の割引率はSOFRに変更されるという点だ。スワップションにはオプション部分とUnderlying Swapがあるが、おそらくオプション部分については10/16以降の変更になるだろうが、Swap部分の割引率に関しては既に変更している銀行もあるのではないかと思われる。

このガイダンスに従うと、10/16以降はスワップションの時価が自動的に変更され、合意があったかどうかに関係なく、マージンコールも新しい時価に基づいて行われるということになるのだろう。Cash Compensationを行うかどうかはその後当事者間で議論をすることになる(あるいはマージンDisputeになる?)のだろうが、これを一つ一つ交渉するというのは気が遠くなる作業である。

そもそもARRCのガイダンスの行間を読むと、当初はCash Compensationを推奨したものの、EURの割引率変更時に明らかになったように、実際にこれを行うところがほとんどなかったため、本当はガイダンスの変更をして、Cash Compensationをしない方向に変更したかったのかもしれない。もちろん当初ガイダンスに従って、既に交換してしまったところもあるかもしれないので、苦肉の策として当事者間に判断に委ねるということになってしまったのではないか。

9/24のISDAの文書においても、ISDA will not set or discuss calculation of any resulting compensation paymentsとして明確な回答が避けられている。

確かに一社一社これらの交渉をするのは不可能に近いので、米国では単純にCash Compensationを行わないということでほぼコンセンサスが出来上がっているという話も聞かれるが、これは後数週間もすれば明らかになっていくのだろう。

コメントを残す