円のシンセティックLIBORは必要か

GBPのみならずUSD LIBORにおいてもSynthetic LIBORの話が持ち上がり、ではJPYはどうなのかという質問が増えている。確かにLIBOR移行は想像を絶する作業であり、期限内にすべての契約が移行できるかどうかは定かでなく、移行が困難なタフレガシー契約は一定程度残ってしまうことは確実だろう。

これに関しては、FCAがベンチマークをNon-representativeと判断すれば新規取引に対する利用を禁じることができる(Article 23A)。また、Article 23Dによれば、FCAは10年以内でベンチマークの公表を続けさせる権限を持っている。この権限は英国の市場参加者、英国法準拠の契約のみに及ぶように見えるが、最終的にはJPYにも影響を与えるのだろう。

通常日本などでは、LIBORといったら民間で利用しているものであり、当局が細かく指示をするものではないと言われそうだが、LIBORに関しては、FCAにかなりの権限が与えられているような印象を受ける。ただし、この新たな権限を用いて方法論の変更を行うかどうかについては、市場参加者の意見を考慮し適宜協議するとされている。

USDについては、FRBのクオールズ監督担当副議長が、移行の困難なタフレガシー契約への対応についてFCAと協議しているとのコメントがあった。

2020/11/30の一連のアナウンスメントによって、LIBORパネル行が、USDに関しては2021年末以降もレートの提示を継続できる見込みが高まった。そして、市中協議の結果次第ではあるものの、GBPについては予定通り2021年末でのLIBORの公表停止と、シンセティックLIBORによるタフレガシー契約対応という方向性が固まりつつある。おそらくEUR、CHFも同じタイミングで公表停止となろう。

ここで、最も不透明なのはJPYである。JPY LIBORのパネル行の中に日本の銀行は4行しかなく、他の外資系がJPYだけレート提示を続けるとは考えにくい。1月末にコメント期間の終わる市中協議の結果次第ではあるものの、やはりJPY LIBORは2021年末以降は存在しないと考えておくのが無難だろう。市中協議でいくら日本円も延期してほしいという意見が多かったとしても、パネル行がレートを出さなければ元も子もない。

では、日本円のシンセティックLIBORが必要かという話になるのだが、おそらくデリバティブ取引については、プロトコルへの批准が進んでいることから、何とか移行が完了するのではないかと思われ、ローンについてはTIBORがある。一番困難なのはキャッシュ商品、つまり社債だが、債権者集会開催等のハードルが高いので、シンセティックLIBORが使われるとしたらここである。あとは、2021年末を超える変動金利の社債がどの程度残っているかということになるのだろう。

ただし、JPYのシンセティック LIBORを作る努力をするほどの社債残高が2021年以降残っているとも思えないので、ここさえ何とかなればJPYのシンセティックLIBORは必要ないということになる。

プロトコルへの批准を遅らせようという市場参加者が出てくるとの懸念もあるが、FCAからも、ここで批准をしないところは、当局からLIBOR移行リスクにどのように対処するかSeirous Questionを受けることになるとのコメントも出ている。そしてSynthetic LIBORが作られるかどうかは、プロトコルの批准状況も関係していると述べられている。

いずれにしても、まずは市中協議でどのような意見が出されるかに注目したい。

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