レバレッジ比率一時緩和に効果はあるか

ECBから資本規制の追加緩和のアナウンスメントがあった。4月に米国で行われたのと同様のレバレッジ比率規制の一部緩和だ。米国と同じように中央銀行に預けられている銀行預金をレバレッジ比率の分子から除外できるというものになる。

この預金は総額2兆ユーロともいわれているので、金額的には大きいように見える。米国は中央銀行預金と米国債を来年3月までレバレッジ比率の計算から除いて良いとしていたが、ECBは来年6月27日までとしている。ECBの試算では、3月末のユーロ圏の銀行の合計レバレッジ比率は5.36%とのことだが、これが5.66%に上昇することになる。G-SIBsにとっては、TLACの要件緩和にもなるとのことである。

ただし、このレバレッジ比率は、免除期間中もこの中央銀行預金を含んだ比率の開示を続けなければならないとされている。レバレッジ比率規制導入以前にも、厳密には従わなくても良いものの、その水準を公開しなければならない期間があったが、各銀行とも実質的にはすでに規制が導入されているかのように順守していた。危ない銀行とみなされるの嫌ったという理由もあると思う。

したがって、免除があったとしてもそれを利用してレバレッジ比率を下げれば、健全性が低いという印象を市場に与える可能性があるため、積極的にレバレッジを取るという行動にはならないだろう。

金融機関内でも規制が緩和されたのだからポジションを増やそうという号令がかかるかというと、一部のコロナ対応融資以外ではそうしたことは起きにくい。

したがって、いつもの四半期末のひっ迫を和らげる効果くらいはあるかもしれないが、銀行の行動が大きく変わるとは思えない。米国でも同様で、レバレッジ比率規制の一時的緩和はあまり銀行の行動に影響を与えていないように見える。

レバレッジ比率規制は、内部モデルによるリスク管理等のバックストップとして作られたはずのものなので、基本に立ち返って恒久的に緩和し、リスク管理高度化のインセンティブを与える方が、業界にとって望ましいのではないだろうか。

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