ネット情報が株価を動かす

今年の初めの頃から米国のオンラインフォーラムが株価を動かしているという噂が出ていたが、昨日FTの一面に出たソフトバンクのニュースもこれに関連した記事になっている。今般のテクノロジー株の上昇でソフトバンクが40憶ドルもの利益を株式オプション取引から上げたというニュースだが、これはwallstreetbets(別名WSB)というオンラインフォーラムで流行っていたやり方である。単純にコールオプションをディーラーから買うとディーラーがそのヘッジのために株を買うため、株価上昇を促すことができるのではないかという理論だ。

孫社長からの指示で行った取引と報じられているが、米国動向に詳しい孫氏が、米国で流行っていた取引に目を付けたとしても不思議ではない。WSBにも、ソフトバンクがWSBの戦略をまねたとのコメントも多くポストされている。ソフトバンクのこの取引が最近の米株上昇に寄与したのではないかとも報じられているが、どちらかというと、すでに流行っていた戦略にソフトバンクが乗っかり、上昇を加速させたということなのではないかと思われる。確かにここ一か月くらいの単一株式のコールオプションの買いはこれまでにないくらいに急上昇している。一方プットオプションの買いもじりじりと増えてきているので、そろそろ転換点を迎えてもおかしくない。

WSBは2012年頃から存在していたのだが、多くの人が職を失ったり、在宅勤務になった今年、急速にその存在感を増してきたように思う。一応価格操作を意図したようなコメントはご法度とはってはいるものの、株価が不自然な動きをした場合にやり玉に挙げられるケースが多くなってきている。インサイダー取引という訳ではないだろうが、ここまで影響力が大きくなってくると、規制強化という話にもなるかもしれない。正直あまり詳細には追っていなかったのだが、今回のニュースもあり一層知名度が高まりそうだ。

トランプ大統領のTweetがマーケットを動かしたり、Twitterのコメントを分析して株価の行方を予測するインデックスが作られたりと、ネット情報の影響は日に日に高まっている。こうした動きは株式市場の流動性を上げて市場の安定性向上に寄与するというよりは、市場変動を激しくする方向に働く。

ソフトバンクは、まだ日の目を見ない将来性の高いベンチャーに資金を回すという役割を果たしてきたが、今回のような取引が金融の発展に資するとは思えない。何か他の理由があるのかもしれないが、投資損失を取り戻そうと躍起になっているとしたら黄信号とも言えるだろうか。このニュースを受けてコールオプションを解約するという連想も生まれてくるだろうし、これをきっかけに一旦大きな調整が起きる可能性も考慮しておく必要がありそうだ。

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