ドル調達懸念は払しょくされたか

今年はドルのひっ迫がみられない。ドル円ベーシスは安定しており、全般的にマーケットも落ち着いている。

2020年のG-SIBリストも公表されたが、例年に比べてG-SIBサーチャージを理由にラインを絞る動きは見られない気がする。今回はJPM、GS,ドイツ銀行等がランクを下げて資本保全バッファーが0.5%軽くなっている。邦銀ではMUFGが1.5%バッファー、MizuhoとSMBCが1%バッファ―となっている。

やはり中銀によるドル供給プログラムが3月まで継続しているという安心感が相当強いのだろう。足元の利用度は下がっているが、春から夏にかけては、特に日本勢の利用が最も多かった。つまり、ドル円ベーシスに対するインパクトは相当程度あるものと思われる。

また、各国の金利が下がる中、ドル建てJGBの金利が相対的に高くなっている。簡単に言うと、通貨スワップでドルを円に換えて0.5%受け取れるとなると、たとえJGBの金利が0.5%でも合計で1%になる。事実、このドル建てJGBの10年金利は米国債の10年金利を上回っており、その差は今年になってさらに拡大している。

海外投資家がJGBを買いに来ると、ドルから円に変換するのニーズが生まれ、ドル円ベーシスがタイト化する。これもドル需要が逼迫しにくい理由の一つともなっている。こうした投資家から市場にドルが供給されるからだ。

これでドル金利が上がってくると、今度は本邦投資家からのドル債投資が増えるため、円を売ってドルを買う人が増える。そうなると、ドル円ベーシスの拡大要因になる。常にこのバランスでドル円ベーシスが動くのだが、最近の傾向からするとベーシスのタイトニング圧力の方が強いようだ。

前にも書いたが、感染拡大時にFRBが行った各種市場対策の中では、このドル供給が最も大きなインパクトを与えたと思っている。特にドル円に対する影響は相当なものだった。何と言っても、これまでこのファシリティを使うことを躊躇していた大手銀行が、使っても大丈夫なんだと思ったのは大きい。当面ドル逼迫懸念は和らぐものと思われる。

コメントを残す