ドルの覇権がさらに強固になってきた

基軸通貨としてのドルの役割は、EURや中国の台頭にも拘わらず盤石であり、それがこのコロナショックで更に強固なものになっているという社説がFTに出ていた。まさに同じことを常々考えていたため、この内容には激しく同意したい。

もともと各国とのスワップラインは、ECB、スイス中銀、日銀、英国中銀、カナダ中銀と締結されていたのだが、今回メキシコやブラジルなどの9か国が追加になっている。リーマンショック後には特に欧州でドルファンディングに苦しむ金融機関が増えたため、このプログラムのメインユーザーは欧州だったのだが、今回それが日本へと変わっている。FTで紹介されている数字を拾ってみると、スワップラインのある14か国のうち10か国が$446bnのドル調達を行っている。これによって各種通貨ベーシスが急速に縮小したのは記憶に新しい。

まさに今回のFEDの危機対応で最も効果があったのはこのドル供給なのではないかというFTの記者の意見も、日本の市場関係者の意見を聞いていると、あながち言い過ぎとも言えないだろう。2月に日銀が$224bnのドル調達を行ったと報じられているが、これはECBの$143bnを大きく上回っている。日本の生保の短期為替スワップによるドル資金ニーズは$1tnに上るだろうというコメントも紹介されており、生保以外では、日本の系統金融機関、地銀の具体名まで報道されている。

これは日銀のレポートやIMFのレポート等でも何度も紹介されている点なので特に驚きではないが、ここまで日本の投資家の動向が注目を集めているというのが興味深い。日本ではそれほどまでに投資するものがないため、海外資産に流れているという姿が国際的な金融業界の常識となっている。

こうしたドル供給プログラムは、基軸通貨としてのドルの地位を更に盤石なものとしている。各国中銀がFEDの支店のような動きをさせており、米国支配が各国に及んでいるのではないかという記者の意見は最もである。

外国に頼らないよう食料自給率を高めるべきだという意見は必ず聞かれるが、米国FEDに頼らないよう自らドル資金調達能力を高めるべきという議論はあまり聞かれない。しかし、根底にあるのは同じような考え方であり、ドル資金を完全に海外に頼ってしまうのが得策なのかはよくわからない。今回のコロナショックでも、FEDがこのドル供給を行わなかったら、日本の市場は大変なことになっていただろう。やはり海外資産への投資を行う投資家あるいはそれをサポートする金融機関は、何とかドルを安定調達できるような準備を整えていくことが重要なのだろう。

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