コロナショックを受けた金融改革提言③

BCP Planへの本気度
海外のメディア情報を見ていると、海外大手金融機関のほとんどの従業員が自宅勤務となっている。進んでいるところは9割近くといっても良いだろう。同時にバックアップセンターや、複数拠点を使いながら、このマーケットの混乱の中でも何とか業務を継続している。当局も取引報告や電話の録音義務を一時的に緩和し、一般企業の従業員には自宅勤務を命ずる一方、金融機関の従業員には出社を認める通達を機動的に出してマーケットを支える努力をしている。自宅外取引の承認プロセスも確立しており、そのモニタリングについても一定のコントロールが効いている。

確かに大手外資系では、通常業務のほぼ100%が自宅でできるのは事実である。15年ほど前から、普通に会社のPCにリモートログインし、すべてのシステムが使え、おそらくアクセスできないものはほとんどないのではないだろうか。電話も支給され、家のルーターにつなぐとすぐに会社にいるのと全く同じ操作が可能である。さすがにトレーダーは少し苦労するだろうが、皆普段から休みの時にリモートログインをして仕事をすることが多い為、急に自宅勤務になったからといって、支障をきたす人は少ない。緊急連絡の手法も、会社メール→会社電話→インスタントメッセージ→携帯電話→自宅固定電話のように従業員が応答するまで追い続ける連絡システムが普通に使われており、数十年前の学校で使われていた緊急連絡網とは雲泥の差である。セキュリティ対策も常日頃から改善努力が続けられてきており、Zoom等を使って常時職場と接続し、自宅勤務をする際の注意事項から自宅勤務が長期化した社員のメンタルヘルスに関する気配りまでがなされていると海外では普通の様に報道されている。取引所やブローカー、ひいては当局までもが、バックアップサイトや自宅からの業務を普通に継続している。当然慣れないことであるので、様々なプロセスが遅れたりすることはあるが、おそらく100%が自宅勤務でも市場を開けることは可能だろう。余談にはなるが、海外ではリモートコンピューティングとか、リモートで仕事をすると言われ、テレワークは日本だけで聞かれる言葉のように思う。確かに電話も使うが、メインは会社のパソコンにリモートでログインして行う仕事が中心になるので、リモートで仕事をすると言う方がしっくりくる。おそらく日本の場合は会社のPCにログインすると言うよりは、電話で仕事をするのが中心だからなのかもしれない。

この点においては、さすがに日本の遅れをひしひしと感じる。専用端末という前近代的な仕組みが残っていたり、バックアップサイトを普段からテストをすることも少ないところがある。当然日本の大手はかなり進んでいるが、日本企業全体の危機対応となると、どこまでできているのか心もとない。そもそも、何があっても会社に出社するという前提で仕組みが作られているようにすら思える。確かに地震があっても台風が来ても皆満員電車に乗って必死に通勤しており、電車の本数を減らしたりといった対応は昨年の台風で初めて行われた対応である。だからこそ、社員の転勤問題、子育ての苦労等様々な障壁が日本のサラリーマンにはあった訳だが、リモートワークが進めば、実は日本が最も恩恵を受けるのではないだろうか。なぜなら、単身赴任で家族と離れ離れで過ごす人が多く、海外のように簡単に住み込みの家政婦を雇えず、職場への距離が遠く、満員電車の中で過ごす時間が長い日本にとっては、今後の伸びしろが、日本には最もあるということになるからである。

実はこうしたリモートワークのインフラはそれほど大がかりなものではなく、恐らく日本ではすぐに導入可能なものばかりである。今回のこのコロナショックを活かして、是非とも日本の金融業界の生産性を上げていきたいものである。そうすれば日本の金融の未来は極めて明るいと断言できる。

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