コロナショックを受けた金融改革提言②

CCPの相互接続
このマーケットの混乱の中で相変わらずCCPベーシスの乱高下が続いている。海外投資家がリスクオフになって固定金利を受け始めると、それにつれてLCHの金利が下がり、JSCCの金利が置いて行かれ、海外の金融緩和ニュースで金利が上昇すると海外からの払いでCCPベーシスが戻すといったことの繰り返しが起きている。以前であれば、海外の受けに対して国内の払いを当ててヘッジをするということが容易だったが、今では金利が二つ(厳密にはCMEやEurexもあるが)存在するために、円金利スワップ市場の流動性は極端に落ちている。本来であればCCPを一つにするのが簡単なのだろうが今となっては不可能だろう。となると残されるのはCCP間の相互接続である。今や多国間のスワップ協定なども行われているため、CCP間で定期的にポジションをフラットにする取引をしたり、すべての大手参加者が複数のCCPに接続できるよう規制を緩めたりして、このベーシスを無くす努力をしていかないとスワップ市場の機能不全が危機時に加速してしまう。

同時に日本にはLibor/Tiborベーシス、DTiborとZTiborのベーシス、Libor OISベーシス、6s3sベーシスなどがあるが、極力こうしたベーシスリスクを無くす努力をし、取引標準化を図ることが流動性向上につながるはずである。

想定元本主義からの脱却
規制資本計算に使われるカレントエクスポージャー方式に代表されるように、デリバティブ取引のリスクを計算する際に、想定元本に一定の掛け目をかけて計算することがあるが、完全にオフセットしている取引があった場合もリスクがあると見なされてしまう。100億円の受けと100億円の払いがあればリスクはゼロだが、元本は200億円となってしまうからである。銀行にもローン畑の人が多いからか、100億円の金利スワップを100億円のローンと同じように考えてしまう人が銀行の審査部には存在しているという話も聞かれる。100億円すべてを棄損する可能性のあるローンに比べ、クーポン1%の100億円の10年金利スワップの受けの場合は、将来の金利収入は最大10億円であるため(金利がマイナスになると話は別だが)、リスクは全く異なる。SA-CCRへの移行によりこれはリスクを考慮することが可能になるが、日本の証券自己資本や銀行のリスク管理において、元本をベースにした管理からの脱却を図ることにより、ネッティングを意識したり、本来のリスクを意識した取引ができるようになる。

印鑑の廃止
今般の自宅勤務の進展において一つ話題になっているのが印鑑文化である。海外であれば、契約書をプリントアウトしてサインした後PDFにして送り返せば契約締結ができることが多いのだが、日本では誰かがオフィスに残って印鑑を押さなければならない。収入印紙を購入して貼り付けなければならないというのも日本独自の文化だ。電子納税は進み始めているが、印紙税の別納、電子署名等を進めていかないとスピードにおいて他国から取り残されてしまう。登記簿謄本は直近数ヶ月のもののみを受け付けるという慣習も、他国にはない日本独自のやり方である。これだけ電子化の世の中において、役所に登記簿謄本を取りに行ったり、確定日付を取りに行ったり、その紙を郵送したりといった方法では、今後対面のサービスが縮小し、電子的処理が進む金融実務にそぐわない。

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