コロナショックを受けた金融改革提言①

今回のコロナショックは、今後の金融のあり方を根底から変えてしまうだろう。特にニューヨークやロンドンといった金融の中心都市が、極端なストレス下で取引をしているため、海外の変化の方が早く進む可能性がある。日本も欧米に遅れないよう、早急に対応を進めていく必要がある。具体的には何をすればよいかはまだ完全には見えてこないが、単なる一個人の意見として、いくつか提言をしてみたい。

決済システムの高度化、オートメーション化
マージンコールから決済までにかかる時間が日本は最も長い。海外ではマージンコールがかかったら即日か翌日には着金が確認できるが、日本の場合は2日とか3日を要求する市場参加者が未だに多い。一日でこれだけ市場が動く時代にあって、リスクが出てから3日後に着金というのはあり得ない。銀行サイドもこれを長くすることによって顧客獲得競争をするところがあるが、人手を介して送金指示をしたり、担保を出すのに承認がいるというプロセスを止めるべきである。その辺の買い物でも一瞬で電子決済ができる時代に担保の送金に2日とか3日かかるというのはあり得ない。特に、海外が人手を介さない方向に進む中このままでは日本だけ取り残されてしまう。CLSを通じた決済やDVP決済が何故か進まないのも日本の特徴だ。

マーケットインフラへに対する国のサポート
これまでは、取引所やCCPはいざという時に中銀のサポートが得られるという前提でルール作りがされてこなかった。海外のCCPの中には銀行と同様の支援が得られるところがあったり、流動性サポートが得られるところもある。日本の場合は、いざとなったらこうしたサポートが得られると多くの人が思っているが、それを前提としたルール作りをしてほしくない、モラルハザードを防ぎたいということで中銀サポートは明文化されていない。したがって、いざとなったら市場参加者が流動性を拠出したり、一部損失負担をする仕組になっている。しかし、現状の資本規制、流動性規制のもとでは、こうした有事の流動性供給を約束している場合は、その分の流動性を常に確保し、資本も積んでおく必要がある。取引所やCCPは完全なマーケットインフラになっているため、参加者破綻時にCCPの流動性が枯渇した場合は中銀のサポートが得られることを明確化したらどうだろうか。そうすれば、銀行が無駄な資金を常に抱えておく必要がなくなり、もっと市場にお金が回るようになる。

同じようなことは、その他のストレス時対応にも言える。銀行は、例えば現在のようにドルが逼迫した時のために、ドル調達ができるよう、何らかの手当をしておかなければならない。ただし、実際に米ドルが調達困難になった場合は、日銀の米ドル供給オペレーションを使うのではないだろうか。それを見越してストレステスト計画を策定するのはおかしいという意見ももっともだが、米国では緊急時に米国債を現金に換えるということを前提として良いという方向に舵を切りつつある。こうしたルールの見直しができれば緊急時の流動性安定につながる。現在米国債で起きているような極度の流動性低下も避けられるかもしれない。なお、ドル供給オペレーションに関しては、年度末まで来週火曜の一回が残されるのみだが、ここに資金ニーズが集中しないよう、日次化を進めると良いと思う(と思ったら既に土曜に日程追加になってました…さすがです) そして、このオペレーションを使うこと自体が、自らドルが調達できないことを示すようなものであるため、使いたくても使えないということのないよう、利用を促進できれば望ましい。米国では大手が共同で連銀貸出を使う旨アナウンスしているが、同じようなアナウンスも効果あるかもしれない。

取引の自動化と20年国債先物の取引拡大
米国のように国債の電子取引等を日本でも進めていく必要があるが、そのためには自動的にプライスをQuoteし、自動ヘッジまで行うところまで、マーケットが進んでいくことになるものと思われる。自宅勤務でノートパソコンから一つ一つ顧客取引を捌いて取引をブックし、コンファメーションをメールで送るなどと言うのでは限界がある。おそらく欧米は今回の混乱を受けて、プロセスの自動化を図ることにより、自宅勤務であったとしてもスムーズに取引ができるような環境整備を進めていくだろう。

また、自動ヘッジに関しては現在7年近辺の国債先物しかないが、これだけで自動ヘッジは不可能である。やはり20年物など更なる年限拡大が今後の取引自動化には必要なのではないか。また銘柄間の価格差が無用な収益変動を生み出しているため、国債価格もっと細かい単位で評価できるようにしたり、回号を減らしたり、輪番でオフザラン銘柄を吸収したりと、流動性向上のための改善も求められる。

取引ライセンスの緩和
今回のウィルスのケースを含め、通常のオフィスでの取引執行が困難になる場合には、例えば香港やシンガポールといった別の地域からの取引執行を可能にすべきである。外務員資格の問題や海外から日本のブックで取引をするということに対する抵抗感があるのは理解できるが、東京のオフィスにいないと取引ができないということでは、今後発生するシナリオに対応できない。大地震、停電、交通機関のマヒなど、様々な理由で通常のオフィスに出勤できないことを想定して、場所に縛られない取引執行を可能にするプランを考えた方が良い。個人宅からの取引執行に抵抗があるのも当然だが、現実に今ニューヨークやロンドンでは、オフィスに出社できない人が多数おり、実際に自宅からの取引も行われつつある。電話の録音義務を免除したNo Action Letterなどはその最たる例だろう。セキュリティの問題もあるのだろうが、端末に依存しないネット経由の取引ができるよう、日銀ネット、ブローカー、銀行のシステム、フローを大幅に見直す必要がある。

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