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アセットスワップの基礎

アセットスワップとは

アセットスワップとは債券購入とスワップを組み合わせたものである。

  • アセットスワップの買い:債券購入+スワップ固定払い
  • アセットスワップの売り:債券売却+スワップ固定受け

要は変動利付債を買いたいのに固定利付債しかないときはスワップを組み合わせることによって変動金利を受け取ることができるというものだ。

アセットスワップの種類

Par Par Asset Swap

最もポピュラーなのはPar Parアセットスワップと呼ばれるものだと思うが、キャッシュフロー的には以下のような構造になっている。円金利スワップを前提としているが、ドルで円社債のアセットスワップを買う場合には通貨スワップになる。

ここでは社債価格が95だと仮定しているので社債購入資金が95、Par(100%)にするために5をスワップカウンターパーティーである銀行に払う。期中は社債のクーポンを受け取ってそれを銀行に払い、その対価として変動金利を受け取る。そして最後に100で社債が償還される。満期到来時に受け取る金額と購入金額が同じパーなので、パー/パーとなる。社債自体は95のアンダーパーで買っているのだが、5をスワップで払うという形だ。

Yield Yield Asset Swap

一方パーではなく、その時の社債価格である95を払うだけで後はスワップ金利で調整するものにYield Yield Asset Swapがある。当初95しか払っていないのでPar Parの時に比べてスワップの固定金利がその時の市場実勢に近くなる。

Market Value Accrued Asset Swap

もう一つ、あまり使われていないとは思うが以下のようなアセットスワップもある。Par ParとYield Yieldを組み合わせたような形だが、Yield Yieldのように当初は95の支払いだが、期中の金利スワップはPar Parと同じになり、その調整を最後の償還時に行うというものである。

銀行にとってのインプリケーション

デリバティブなので、これ以外にもいかようなスワップも可能であり、投資家のニーズに応じて様々な形に対応できる。しかし、銀行にとっては、スワップのキャッシュフローが大きく異なるため、プライシングが異なってくる。XVAなどがかかってくる場合には、プライシングへのインパクトがあるため、投資家にとっても影響が生じる。

まずPar Parの場合だが、上の例では、アップフロント(当初)で5を受け取り、その後少し高めの変動金利を払うような金利スワップになる。つまりスワップをブックした後にそれがすぐにPayableとなる。Payableの説明は面倒だが、将来にその価値を返していくもの、マイナスの時価ポジションとでも言えようか。負けている訳ではないのだが、時価的には負けポジションともいえるかもしれない。

最初に5を借りているという言い方もできるが、この場合投資家が銀行のカウンターパーティーリスクを取っている。したがって、無担保であればCVAが少なくなるので銀行にとってはBenefitがある取引になる。有担保契約の場合は5をもらった瞬間にそれを担保として返さなければならないのでインパクトはない。

逆にこの社債が105円のオーバーパーだった場合は、最初に5を払って徐々にその価値を返してもらう形になる。この場合は投資家のリスクを取っているのだから、CVAが高くなる。もちろん有担保の場合は払った5が担保として返ってくる。

現金担保の場合はプレミアムの受け払いはすぐに担保の受け払いで相殺されるが、国債担保の場合はプレミアムを現金で受け払いし、その同等額を国債で返すという形になるのでレポをやっているようなものである。その場合国債にヘアカットがある場合はそれも考慮する必要がある。

本来であれば、こうした担保の違い等によって精緻なプライシングをするべきで、一部の先進行はかなり綿密な計算をしているものと思われる。ただ、こうした概念はXVAの概念が早くから一般的だった海外金融機関に一日の長があるような気がする。