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Mutual Putとは

カウンターパーティーリスク削減のため、スワップの中途解約条項(Break Clause、Mutual Put、Mandatory Break等と呼ばれる)が古くから使われてきた。Breakには一定の期日がきたら必ず解約されるMandatory Breakと、期日に解約権が発生するOptionalの二種類が存在している。例えば10年債発行までの半年間の金利リスクをヘッジするといった場合等には、これをMandatory Breakにするケースもあるが、ほとんどは両者にオプションを与えるOptional Breakである。Breakの権利は双方が持つことが多いが、銀行だけに行使権がある場合もある。解約の価格はミッドが多いが、行使する側がビッドオファーを払うExecisers Payも良く見られる。

ヘッジファンド向けが多かったが、例えば30年スワップの場合、10年目及びそれ以降毎年、スワップを解約できるオプションを付与するという条件が多かった。信用力が高いカウンターパーティーの場合は10年以降5年ごとという形で行使のタイミングが少なくなったりもした。しかし、特に金利スワップについては、CCPにおける清算集中が一般的になった今では、このBreak Clauseは意味をなさくなった。相対で取引された一瞬だけはBreak Clauseが生きているが、その後クリアされるとその条件が消えてしまうからである。

他にもCS/アルケゴスのペーパーに記述がみられたような、スワップをいつでも解約できる権利、当初証拠金を引き上げることができる権利など、様々な権利が契約上追加されることがある。CSの場合、こうした権利があるからと通常の証拠金を低く抑えていたが、結局これが損失を拡大させた。

しかし、Mandatory Breakや一定の指標をトリガーとする解約以外の解約権はほとんど意味がないというのが、リスク管理の世界ではよく言われることである。確かに相手が破綻寸前になった場合に行使されたケースはあるが、そうでない限り行使が極めて困難だからである。当然使われることのない権利なのでCVA計算に入れたり、PEやRWA計算上考慮したりするのは正しくないと思われるが、銀行によってはこうした効果を織り込んでいるところがあったようだ。スイスの当局がBreak Clauseを資本計算上の考慮を認めるという話も聞かれた。とは言え、いつでも解約ができるならそのオプション性をきちんと時価評価に入れるべきではないかという議論もあり、一般的にはMandatory Break以外は行使できないものとして処理をするのが正しいと思われる。

一方Mandatory Breakの場合は、先スタートの通貨スワップ等ではよく使われている。これは、5年先5年の通貨スワップ等を行うと、10年間スワップが存続するという前提でPEやRWA等の計算が行われてしまう。また、5年後と10年後に元本交換が発生してしまうが、通貨ベーシスの動きだけに注目するヘッジファンドなどは、大きな元本を決済するのを嫌う傾向がある。証拠金規制上は元本交換部分は当初証拠金の対象外ではあるが、通常銀行では為替リスクも加味して当初証拠金を徴求する。したがって、当初元本交換のある5年より少し前にMandatory Breakを入れておけば、お互いに好都合ということになる。この場合、PE計算やRWA計算上も5年より短いスワップとして扱うという整理が可能になる。

一時期、デリバティブの勝ちポジションを抱えること自体が大きなコストになってきたときに、この権利を行使することによってRWAの削減を行っているところがあると話題になった。XVAデスクでもMutual Putを行使してポートフォリオ最適化を図るべきということが、海外のXVA関連の書籍で紹介されていたが、個人的にはここまで自由に行使ができるものではなく、理論上の話の域を出ないと思っている。確かに巨額のIn the moneyポジションを解約すると、CVAがリリースされる上、Funding Charge、BaselのCapital Chargeから解放される。ただし、それが全体に広がることはなく、そのうち清算集中が進んでいったので、最近ではあまり聞かれなくなった。そのうちMandatory以外のMutual Putは下火になっていくのではないだろうか。