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CCPベーシスとは

数年前からLCH/CME、LCH/JSCCのような清算集中機関であるCCPの間の金利差であるCCPベーシスについては、このブログでも何度も取り上げてきたが、ここでまとめておさらいしておく。

LCH/CMEベーシス

ドル金利スワップマーケットはディーラー中心のLCHとバイサイド中心のCMEに分かれていた。当初はCMEの方が当初証拠金(IM)が低く、先物と金利スワップのリスクオフセットを認めるクロスマージンが可能といった理由から投資家に選好されたが、このインバランスからLCHの金利とCMEの金利が異なるようになった。その裁定機会を捉えるため、バイサイドがLCHに参加したり、ディーラーがリスクの偏りを減らすためにSwaptionや清算集中規制対象外の取引を利用することによってその偏りを減らす努力がなされてきた。一部ベンダーもSwitch Tradeと称してCCPベーシス削減の提案を行っている。

バイサイドクライアントの参加率が高いCMEにおいては、クライアントは固定クーポンの社債のヘッジのため、固定払いの金利スワップを取引することが多い。つまりCMEで固定を払うため、ディーラーサイドはCMEからの固定受けが増える。ディーラー間でのヘッジはLCHで行われることが多いため、CMEから固定受け、LCHに固定払いのスワップが多くなる。この取引が溜まるとLCHとCME両方に当初証拠金の拠出が増え、担保拠出コストが高まる。これを解消するためにCMEでなら高いレートを払ってでも固定払いをしたいし、LCHなら低いレートでも受けたくなる。そして、CMEの金利がLCH金利より高くなり、CCPベーシスが生まれる。

これが拡大するにはいくつかの要因があるが、CMEでの受けニーズ、LCHでの払いニーズの拡大の他、ディーラーのファンディングコストの上昇、CCPのマージンの変化なども影響する。

2020年、LCHのクライアント向け当初証拠金の変更があったが、同時期にCCPベーシスが縮小したことがある。米国の場合は顧客もLCHでクリアできるので、もしかしたら、このIM増加を受けて、一部のクライアントがCMEにシフトさせたことがCCPベーシスに影響を及ぼしたのではと言われた。

LCH-JSCCベーシス

同様のベーシスは日本円についても起きている。日本においては邦銀のALMの受けが多い。したがって、必然的にJSCCに対する払いが多くなり、そのヘッジとしてLCHからの受けが多くなる。そして、日本特有の問題として、日本の市場参加者がLCHで円スワップを清算できず、米国の参加者がJSCCに参加できないという制約が加わる。

LCH-CMEベーシスと同様、このポジションが溜まってくると当初証拠金が増えるので、JSCCに対して払いたくない、LCHから受けたくないというインセンティブが働く。そしてJSCCへの払いにチャージをかけるトレーダーが増え、本来より低い金利でクォートされる。そしてJSCCの金利が低下し、LCHの金利が上がる。そして2018年1月頃にLCH-JSCCベーシスが急上昇した。その後は、CFTCから米国顧客がJSCCに参加するのを許容するような発言が出るたびにベーシスが縮小した。また、米国以外のヘッジファンド等がJSCCにクライアントクリアリングを通じて参加し始めたのも大きい。

ただしLCH-JSCCベーシスの場合は、必ずしも国内の受け手が多いから動くのではなく、海外投資家が大きな取引をする際にLCHサイドの金利が動いてベーシスが変動することも多いように思う。近年は、一時のようなアンバランスが少なくなり、ベーシスはゼロ近辺で落ち着いている。

米国顧客のJSCC参加については、2020年に一旦見送られた形なったが、その後もCFTCは前向きな発言を続けている。以下の二つの方法のうち、JSCCの場合は米国への影響が限定的という条件のもと②を適用しようというものだ。

①代替的コンプライアンスを利用したDCO登録:米国DCO登録は行うが、自国規制に従いつつ、米国FCMを通して米国人にクリアリングサービスを提供

②Exempt DCO:DCO登録をせずに、米国FCMではなく、国内のディーラーを通じて、自国の規制のもとで米国人にクリアリングサービスを提供

CCPベーシスが完全に消滅するとは思えないが、昨今の流れを見ていると2018年1月のようにベーシスが10bpを超えて拡大するようなことは起きにくくなるだろう。ベンダーが提供し始めた当初証拠金最適化サービスもベーシスの縮小に寄与するかもしれない。市場の流動性向上のためには、こうしたベーシスによる市場分断は極力存在しない方が望ましいので、昨今の動きは大いに歓迎したい。