SA-CCRの計算

バーゼルIIIの最終化がコロナによって1年延長されたものの、2023年1月のFRTB、信用リスクにかかる標準的手法、内部格付手法、CVAなどの適用まで2年を切った(本邦では2023年3月)。内部モデルによるRWAを標準法のRWAの72.5%を下限とするアウトプットフロアについても2023年1月からの段階適用となる(50%->55%->60%->65%->70%->72.5%)。

カウンターパーティークレジットリスク計測手法も、従来のカレントエクスポージャー方式からSA-CCRに変更になる。既にSA-CCRの導入を始めた邦銀も多いが、ROE重視の経営が盛んになる中、SA-CCRを巡る分析が今後活発になっていくものと思われる。SA-CCRは基本的に以下の6つの分野に影響を及ぼす。

  1. RWA
  2. Large Exposure Framework
  3. レバレッジ比率
  4. CCP向けエクスポージャー
  5. CVA
  6. アウトプットフロア

という訳で、若干SA-CCRについて整理してみる。デリバティブ取引はまず以下のリスクカテゴリに分けられる。

  1. コモディティ
  2. クレジット
  3. 株式
  4. 為替
  5. 金利
  6. その他

まずはカウンターパーティーのデフォルト時の時価であるるEAD(Exposure at Default)の計算が必要になる。要は取引相手がデフォルトするとき、どの程度のエクスポージャーを持っているかというものだ。これはいつもの通り以下の式で表記される。

EAD=α(RC+PFE)

αは当局指定のマジックナンバーである1.4、RCはReplacement Costの略、PFEはPotential Future Exposureの略である。RCはそのポジションを再構築したらどれくらいのコストがかかるかということでこのように呼ばれるのだろうが、要はその取引の時価(MtM)である。PFEはおなじみのVaRと似た概念で、エクスポージャーが潜在的にどれくらい動くかというものである。無担保の場合は1年間にどれくらい動くか、有担保の場合はMPORとかMPRと呼ばれる一定期間でどのくらい動くかを測るものである。OTCであれば、通常は2週間程度が使われることが多い。

PFEはそれぞれの資産クラスで計算したものを足し上げ、それに決められた掛け目(Multiplier)をかけて計算される。RCはISDAマスター契約などのネッティング契約の下にある取引をすべて足し上げる。この契約単位をネッティングセットという。

無担保の場合は以下の式で表される。

RC=max(CMV – NICA, 0)

CMVはCurrent Market Valueなので取引の時価(MtM)、NICAはNet Independent Collateral AmountなのでCSA契約で言う独立担保額、つまり当初証拠金と同義である。無担保なので要は取引の時価ということになる。ここでmaxがついているのでこの値はマイナスにならない。つまりA社でプラスの時価、B社でマイナスの時価だったとしてもそれらを相殺できない。

有担保の場合は以下の式となる。

RC=max(CMV-VM-NICA, TH+MTA-NICA,0)

だんだんややこしくなってきたが、VMは受け入れた変動証拠金、THは担保のThreshold、MTAは最低受渡金額(Minimum Transfer Amount)である。昨今ではThresholdは証拠金規制でほぼゼロになり、MTAもほぼ無視できるので、結局は担保でカバーされていない時価ということになる。ここでもmaxで0以下にならないので、異なるネッティングセット間で勝ち負けを相殺することはできない。

ハイブリッド取引のようにどこの資産クラスに入れるか明らかでない場合は、センシティビティの最も大きなリスクファクターなどによって分類する。年限毎のオフセット等その他詳細についてはまたの機会に。