SA-CCRが為替取引のやり方を変える

SA-CCRが為替取引に与える影響についてIFRの記事が出ている。SA-CCRへのシフトによる資本賦課の増加を受けて、今後はCCPによるCleared Tradeや先物へシフトしていくという論調だ。

米国と英国は、SA-CCRに移行したのは昨年の1月くらいだが、そのころからマーケットに影響が出始めた。もともと為替取引は、短期のものが多かったため、従来の方式だと資本賦課が少なかったが、これがSA-CCRになると、短期取引も含めて資本コストがかかるようになった。金利取引などはすでにCCPに移行したり、先物マーケットも成長しているが、為替には元本決済が伴うため、CCPでの取引は極めて小さい。清算集中義務もない。一部NDFのみが細々とクリアリングされてのみであった。

すでにLCHのForexClearでは取引量が増えてきており、過去2年間で42%清算取引が増えたと報じられている。Clearedされた想定元本も25%増とのことだ。為替先物の取引量も2022年9月時点で前年比42%増となっているそうだ。

とは言ってもドル円の為替取引はNDFではないので(技術的にはNDFにすることもできるが)、資本コストをあまり気にしない日本の金融機関が多いことも相まって、日本では先進行以外では話題にすらならない。為替先物の取引量も目立って伸びているわけではない。ROEハードルが満たせないビジネスは厳しく精査される海外金融機関では、今後のFRTB導入を控えて、為替取引を先物やCCPにシフトさせようとしているところが多いと報道されているが、日本ではあまりこうした動きも見られない。無担保で取引をするところも多いので、わざわざ有担保でかつ当初証拠金が必要な取引へシフトしようというインセンティブも働かない。

グローバルでは、NDF、先物、Cleared FX、相対の為替取引をまとめて最適化し、ポストトレード処理で資本賦課を減らそうという動きが盛んである。資本のみならず、当初証拠金のファンディングコストやオペレーショナルリスク削減のために極力ブックをきれいにしておこうという意識が高まりつつある。資本規制は全世界で課せられ、日本では金利スワップのコンプレッションは市民権を得つつあるので、時期は遅れるだろうが、為替についても今後同じような変化が起こることになるのだろう。