TriOptimaやQuantileのコンプレッションやOptimizationは、完全にBAU(Business as usual)のプロセスとして定着したが、欧州議会は、このOptimizationによって生まれた取引の清算集中規制免除を認めない方向になりそうだと報じられている。英国はこれを免除する方向で、欧州当局のESMAも免除を主張し続けているので、未だに意見が分かれているようだ。
コンプレッションは、当初はCCPで清算された取引間、あるいは相対取引間で行われていたが、昨今ではこの両者を組み合わせて最適化を図る動きが加速してきた。こうした際に清算集中規制免除がないと、完全な最適化が達成できない。
例えば、金利が下がると損失が出るスワップションポートフォリオがあった場合、固定受け金利スワップを加えれば、ポートフォリオ全体の金利リスクが減るため、資本コストや担保コストを削減できる。しかし、金利スワップには清算集中規制がかかるため、金利スワップがCCP、スワップションが相対となり、こうした削減が行えない。スワップションの売りと買いを組み合わせて金利スワップと同等の効果を持つ取引を行って最適化することは可能だが、効率は落ちる。
他にもDaycountやPaymentにイレギュラーな条件が入っていてクリアリングができない金利スワップなども、スワップションを使ってOptimizationをしなければならない。しかし、地銀のように顧客の要望によって行われた特殊なローンヘッジのため、CCPで清算できない金利スワップを行った場合、Optimization効率を高めるためだけに、これまで取引したこともないスワップションを新規で入れるのには抵抗があるだろう。
欧州議会の懸念は、この免除を認めてしまうと、銀行がCCPの取引を相対に移すインセンティブが生まれてしまうということらしい。現場の感覚からすると、こんなことを考える市場関係者は皆無だろう。現状の規制の下では、CCPで清算した方が資本コストが大幅に削減できる。コンプライアンスも10年前とは比べ物にならないくらいに厳しくなっている。規制逃れの疑いがかけられるリスクを冒してまで、わざわざ資本コストが高くなる相対取引に取引を移そうというインセンティブがどこにあるのか全くわからない。もしかしたら、こうした免除が英国のCCPであるLCHの利便性を向上させてしまうから、欧州が嫌がっているのかもしれない。こうした覇権争いは金融にとっては百害あって一利なしである。
今後は、米国でOptimization取引の清算集中免除が認められるかが重要である。コンプレッションでこれを認められている以上、Optimizationにも免除される可能性が高いと思われる。英国が免除に舵を切り、これに米国が続けば全体の流れが変わるだろう。