LIBOR改革後のEuriborの行方

円にTONAとTIBORがあるように、EURにもEuriborとESTRがある。お欧州では当初金利スワップはEuriborが主流で、ESTRへのシフトは限定的であった。ただし、通貨スワップではESTRがメインで使われるようになったため、金利指標が分断されてしまった。

ただし、USDLIBORの公表停止を控えて、ESTRの取引も増えてきたようだ。TradeWebの統計では、ESTRのシェアは14%から23%と過去1年で10%近く増えている。しかも、比較的長期のスワップが増えている。当初は短期のスワップにしか使われないのではないかと思われていたが、意外と長期も健闘している。

マーケットでもいつかはすべてESTRに移行するだろうという声が多いものの、それが直ちに起きると考えている訳ではなさそうだ。あるコンサル会社のアンケートによると2025年末くらいという意見が多いとのことなので、後3年弱はこのままということになる。

当局からも移行を促す声は出ておらず、当然Euriborの管理をしているEMMIは長期的に使われることを想定している。一応信用リスクを含んだCredit Sensitive Rateなので、地銀等からは一定のニーズがあるのではないかという意見もある。

Euriborも一応不正が起きないような改革が行われており、以前のように、銀行から提示されたレートから決めるのではなく、極力実取引に基づく指標にしようという努力はなされ、BMR(欧州ベンチマーク規制)の要件を満たしている。ただし、いかんせん取引量が少なく、本当に不正の余地がないのか定かではない。パネル行もピーク時の半分程度に減ってしまっている。実取引の最低サイズの引き下げも行われ、計算に使える取引を増やそうという試みもあったが、1日平均にすると35取引、金額にして€350mm程度しかない。

以前はよくFixingリスクが話題になり、突然トレーディング損失が発生することがあったが、LIBOR改革後はこれがなくなった。TIBORやEuriborでは今でもこれが発生する。Euribor vs ESTRベーシスリスクなどもあるので、リスク管理者としては一つに統一してもらった棒がシンプルだ。まずは流動性の低い1か月物や1年物から始め、徐々に移行していくのが望ましいように思う。

リアルマネーなども徐々にESTRに移行しているようであり、年金や保険の割引率に使われる金利がESTRになる日もそう遠くない気がする。当然Euriborを使い続けたいという市場参加者も相当数いることから、移行が簡単に進むとは考えていないが、マーケットの透明性を高め、流動性を上げるためには金利指標を統一するのは極めて重要な課題だと思う。