金融庁が地方銀行に対し、国債仕組み貸し出しのリスク管理強化を要請したというニュースが報じられた。最初はよくわからなかったが、要するにJGBリパのことだった。SPC(特別目的会社)を設立して国債を入れ、その裏でデリバティブ取引を行うなどと書かれると、怪しい商品に見えるかもしれないが、実際は単純に金利スワップなどのデリバティブ取引を債券の形で行うだけの商品であり、これは日本では昔から活発に取引されているものだ。
一部の報道では、SPCから先で行われているスワップ取引の詳細が地方銀行側には明かされず、ブラックボックスになっているとされているが、さすがにそのようなことはないだろう。
金融機関内部でも、役員クラスがデリバティブに詳しくない場合、仕組みやストラクチャードなどという言葉に嫌悪感を示すことがあるが、こうした報道だけを見ると、再び地方銀行が複雑なリスクを取っているような印象を与えることになる。確かに、複雑なペイオフを持つ商品が売られることもあるが、実際には極めて単純な仕組みであることがほとんどだ。
それよりも、単純に国債を購入して金利スワップで変動金利にするアセットスワップを選んだ方がよいのだが、そうすると金利スワップの時価評価が毎日必要になるため、JGBリパが好まれる傾向にある。JGBリパにすれば、満期保有有価証券として時価評価を避けることが可能だからだ。また、ローン残高として計上できるという理由もあるかもしれない。また、英文のISDAマスター契約の締結や担保管理が煩雑であるという事情も影響している。しかし、SPCの組成や各種契約にかかるコストを考えると、デリバティブ取引をするよりは割高になることは確かだ。
いずれにしても、他国ではそれほどポピュラーな商品ではなく、日本における取引量が突出していることは間違いないだろう。
確かにデリバティブが含まれているため、どんな取引でも可能であり、複雑な商品が地方銀行や信用金庫に売られている場合もあるかもしれない。最近ではフィデューシャリー・デューティーを意識しなければならないため、金融機関側でも慎重になっているはずだ。しかし、もし地方銀行や信用金庫がリスクを理解せずに取引を行っているのであれば、それは改善しなければならない。
とはいえ、そろそろ面倒くさがらずにISDA契約を締結し、証拠金規制に従って担保授受を行い、時価評価を実施するという正攻法に切り替えた方が良いのではないだろうか。金利スワップを用いて金利リスクを適切に管理することは重要である。時価評価を行っていなかった国債ポートフォリオから巨額の損失を出して破綻したシリコンバレーバンクの例もある。
日本でも、デリバティブが投機の象徴ではなく、適切なリスク管理のためのツールとして広く理解されることが望まれる。