SIMM Version 2.7が公表された。これはISDA SIMMモデルの定期的アップデートだか、今回から2021-2023年のデータが対象となり、2020年のコロナショック時のデータが除かれることになるため、ほぼ初めてといって良いくらい必要担保が減る可能性がある。2008-2009年のデータはストレス期を代表するデータとして残るが、それでもかなりの削減となりそうだ。
これによってIMが減れば、€50mm(米国では$50mm、日本では50億円)の閾値を下回ってIMを出さなくてもよくなるバイサイドなどが出てくるかもしれない。
Risk.netでは20%減という分析結果が報道されているが、既にオフセットが大きい大手ディーラーの削減幅はそこまでないかもしれないとのことである。
リスクウェイトの詳細を見てみる。円金利商品については1mと3m、10-20yが若干増えているが、6m, 1y, 3yが減っている。いずれも1-2ポイントなので、あまり影響は大きくなさそうだ。ドルやユーロについては、1-5yが増えているが、15yが-5ポイント、20yが-4ポイントと大きく減っている。このインパクトは結構ありそうだ。
クレジット商品も概ねリスクウェイトが小さくなっているが、ハイイールドの金融債とテクノロジー、テレコムセクターのリスクが上がっている。全般的にはかなりの削減になりそうだ。
一方ハイイールドのRMBS/CMBSなどは1300から2900へと2倍以上に増えており、今回最も影響を受ける商品になりそうだ。株式は概ね小さくなっている。コモディティも貨物、北米電力などを中心に小さくなっている。為替はボラティリティの高い通貨についてリスクウェイトが上昇している。またブラジルレアル(BRL)がHigh Volatility通貨の分類から外れる一方、アルゼンチンペソ(ARS)がここに加わったので、BRLを取引する市場参加者のIMが減るが、ARSを取引する市場参加者には不利になる。
実際に新しいパラメーターでIMを計算してみると違いが良くわかるが、全般的にIMとしてカストディアンに眠ることになる担保が少なくなるのは市場関係者には朗報だろう。これで急な市場変動が起きて批判が起きるのが若干懸念されるが。