証拠金規制のIMについては、毎年決まった時期にパラメーターの更新が行われるが、今回は直近のボラティリティの上昇を受けAd hocで調整が行われた。マージンパラメーターの変更が遅きに失しているという批判を受けて通常のサイクル外で変更をかけたものと思われる。このVersion 2.5からVersion 2.5Aへの変更は来月から実施されるが、主に金利関連の変更が行われている。
ドルやユーロなどの標準的なVolatilityの通貨に関するもので15年までの年限に関するものだが、6か月までの短い年限では若干リスクウェイトが低くなっている一方、3-5年回りの年限で引き上げが行われている。逆にHigh Volatility通貨については短期の上昇が著しい。唯一のLow Volatility通貨である円については、10年回りのリスクウェイトが上がっている。日銀の政策修正を巡って10年近辺の変動が大きくなったのでこれは当然だろう。クレジット物、株式、為替、コモディティなどには全く変化はない。
これによって相対取引のIMが7月15日から引き上げられることになる。10年円金利スワップのRisk Weightが2割程度引き上げになるのが、日本にとっては最大の影響となるだろう。あとはHigh Volatility通貨であるブラジル、メキシコなどの短期スワップのIMが急上昇し、ドルについては5年回りが15%増となる。
Clarusの分析では一般的なポートフォリオでIMが4-17%、平均にして14%増加すると見込まれている。最近IMが急上昇したコモディティのIM増加幅に比べるとマイルドな変化と言えるが、円金利についての変更はそこそこのマーケットインパクトがあるかもしれない。原則論からするとIMのファンディングコストをチャージするMVAの上昇につながる。
今回は年次更新のサイクルの外で行われた最初の変更となるが、今後は四半期ごとの更新などへと議論が移っていくかもしれない。市場変動に合わせて柔軟に変更をかけるというコンセプトは問題ないのだろうが、あまりに頻繁にこれが変わると、ファンディングコストがぶれるため、ビジネスプランが立てにくくなるうえ、プロシクリカリティを誘発しかねない。とはいえ、市場が動いてからのカリブレーションがかなりのラグを持って行われるのも問題なので、今回のような、大きな変動があったときに機動的に変更をかけるという方法にするしかないのだろう。
ただし、頻繁な変更に備えて社内のシステムテストなどのプロセスをもう少し自動化していく必要はありそうだ。