EONIA⇒ESTR変換が無事終了

先週末にEONIAからESTRへの変換作業が無事終了した。LCH、CME、Eurexの3CCPが同時変換作業を行ったため、正直うまくいくのか不安があったが、ふたを開けてみると非常にスムーズに作業が完了し、その後のマーケットも完全に落ち着いている。月曜日は何もなかったかのように淡々とESTRの取引が行われ、ESTRスワップの取引量は過去最大となった。

変換した取引の想定元本はLCHがほとんどだったが、それぞれのCCPで別途の作業が必要だったため、各社とも予行演習を含めて綿密な計画が練られたものと思う。LCHの変換手数料の€15を避けるため、事前にEONIAを減らす努力をしたところもあったかもしれない。

作業的にはほとんどシステム的な対応で終了し、人手を介する部分は本当に少なくなっている。今回の経験は、12/3の日本円LIBOR Swapや12/17のGBP LIBOR Swapを含めた大規模変換の良い予行演習になったと言えよう。12月の作業はサイズ的には約5倍程度という報道もされている。今回の変換作業を経験していないJSCCと日本の市場参加者の対応が気になるが、おそらく問題なく移行が行われるものと期待している。

それにしても金融は本当にシステム産業になったという印象だ。特にデリバティブ取引の世界では極力プロセスを標準化して、システム対応をするという方向になっている。今回の移行作業でもプロジェクトの主役はIT部門だった。

一方、日本の場合はお客様のきめ細かなニーズに応えて最高のサービスを提供するのが良しとされる。ホテルなどのサービスでこれは強みになるのかもしれないが、金融で例外処理ばかりを作るとシステム対応ができず、コストばかり上がって事故につながる。金融の日本が弱いのはここに原因があるのかもしれない。

海外から来た友人が、ラーメン屋で油の量、麵の硬さ、トッピングなどを矢継ぎ早に聞かれて戸惑っていたが、海外なら標準的なラーメンをさっと出してくるのだろう。お客様は神様文化もあり、日本の消費者はこうしたきめ細やかな対応を好む傾向があり、売る側がその努力をするのが当然という雰囲気もある。アメリカにもクレーマーは多いが、店側も結構強く出ている。

金融の場合、こうした例外処理が多いからか、システム構築コストをかけるよりは、人手をかけてマニュアル対応をすることが日本では多い気がする。人件費が安いからか、解雇が困難なため余剰人員が多いからなのかよく分からないが、システム投資にあまり積極的でない。そんな金のかかるシステムを作るなら、せっかくいる人を使って対応しようという話が良く聞かれる。

システム会社も少数の大手の独占か、関連のシステム会社を使うことが多く、新興IT企業が入り混じって競争している海外の会社の方が、効率が良くコストも安くなっている。システムコストが高く人件費が安いなら、当然手作業で対応しようということになり、システム化が遅れる。

こう考えると標準化の必要な金融は、日本の文化には向かないのだろうか。それでもテクノロジーやシステムの重要性、効率性・生産性向上が声高に叫ばれるようになってきたので、今後の展開に期待したい。