CVAの会計

デリバティブ取引は、公正価値会計が原則とされ、米国ではASC820等において、会計上の報告の要件が定められている。この価値評価に際しては、カウンターパーティー及び自社の信用リスクを反映させることが求められる。自社のリスクであるDVAの計上も求められるため、金融危機時には自社の信用力悪化によって大手米銀が利益を上げたことが話題となった。

欧州では2013年にIFRS13によって米国同様の公正価値評価が原則となり、米国同様CVAとDVAの双方の計上が求められるようになった。

日本においては、本年2021年4月以降の連結会計年度期首から「時価の算定に関する会計基準」が適用になった。IFRS13同様、カウンターパーティーリスクをデリバティブ時価に含める旨の記述がある。本文書の中ではどこにもCVA、DVAといった言葉が使われていないのでわかりにくいのだが、決められた要件のすべてを満たす場合には、「特定の取引相手先の信用リスクに関して金融資産および金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる」と書かれている。

なぜか日本語にすると逆に難しくなってしまうのだが、要はISDAマスターの下で行われる取引について、ポートフォリオベースでCVA計算をうことができるという意味である。IFRS13号の定めを基本的にすべて取り入れることとしたと書かれているので、IFRS13を理解した方が早いかもしれない。その意味ではCVAのみならずDVAも考慮できるということになる。

もともとデリバティブ取引の時価評価に関しては、金融商品会計に関する実務指針が存在しており、割引現在価値によるスワップの時価評価に関して、割引に用いる利子率をリスク要因で補正するとされていた。293項の時価評価の留意事項には、自らの信用リスクを加味した時価算定を行うことが原則として必要であると書かれている。そして、相手先の信用リスクは、評価益の回収可能性に係るリスクであるため、時価の算定に加味することが望ましいとされていた。

その意味では、CVA、DVAはかなり前から会計上加味するべきということだったのだが、今回それがグループ単位の時価計算という表現によって、CVAの実務慣行と一致したということになる。税金上の損金算入も認められるため、今年の会計年度から何らかの変更がみられるようになるのか注目が集まる。