FSBからCCPの再生・破綻時の財源についてのペーパーが出ており、これを受けたISDAやFIAの共同ペーパーも公開されている。ISDAの主張としては、より多くのCCPを対象に加えるよう要望しており、昨今の市場変動を受けた過去のデータにとらわれないストレスシナリオの追加も求めている。また、FSBのストレス分析の中で、清算基金のかなりの部分が使われており、VMGHまでにも食い込んでしまっているCCPがあることに懸念を表明しており、CCPのSTIGを増やすよう主張している。
ちなみにVMGHはVM Gain Haircutで、参加者破綻時に破綻していない参加者の勝ちポジションをあきらめるという制度で、STIGはSkin in the game、つまりCCPが自ら負担するリスクのことである。
その他流動性リスク、サイバーリスクに対する備えを充実させることも主張している。分析の中でも書かれているように、これは銀行サイドの分析であり、CCPはおそらく同意しないだろうと書かれている通り、CCPサイドからすると別の言い分もあるのだろう。
ただ、いざとなったら財務的に体力のある銀行に頼る仕組みになっており、モラルハザードが発生するという主張には一理あるように思える。その他VMGHの適用は極力抑える仕組みにすべき、IMH(当初証拠金を破綻処理に使う)が市場変動を加速させる、Forced Allocation(破綻参加者のポジションを非破綻参加者に強制割り当て)ためせいぜいPartial Tear Upに止めるべきといった意見ももっともである。
CCPを通した取引が一般的になり、今度はCCPがToo Big To failになってきた。ただし、CCP同士の競争もあるので、適切なリスク管理が行われているかどうかは、当局のみならず銀行にとっても非常に関心が高い。一方大手行以外の市場参加者にとっては、IMは低い方が良いだろうし、手数料も低い方が良い。日本では、海外に比べるとリスク管理よりこうした利便性を重視する声も若干多い。
ここまでCCPが金融インフラの中心になってくると、今後も引き続きこのような議論を行っていく必要がある。海外の議論に後れないよう、日本でもこうした各種分析を踏まえた同行に注意を払っていく必要がある。