JSCCの統計情報を見ていて気付いたのだが、最近金利スワップにおいて、クライアントクリアリング経由の取引シェアが上がってきている。2019年からクリアリングされたスワップの想定元本の全体に対する割合を見ると以下のようになっている。
以前は一桁台後半でたまに10%に届くくらいだったのだが、今年に入って軒並み10%を超えている。直近はついに16%を超えるまでになっている。
これまで日本の金利スワップ市場は、ディーラー間取引はJSCCが9割、クライアント取引はLCHが9割という、世界にもまれにみるいびつな構造になっていた。これは米国当局が米国参加者のJSCC参加を認めてないのと、日本の当局が日本の参加者のLCH参加を認めていないという特殊事情から来ていた。
このため、日本ではCCP間の金利差であるCCPベーシスが乱高下しやすいという特殊なマーケットとなっている。もともと流動性がドルなどに劣るところに、こうした市場分断が存在しているので、さらなる流動性低下を招いている。欧州などでは、Brexit後もLCHが欧州クライアント向け業務を継続しており、様々な議論はあるものの、これを禁じてしまおうというところまでは行っていない。
その意味では、JSCCに参加するクライアントが増えてきているということは、このアンバランスを一時的に解消する方向に働くのかもしれない。
日銀の政策変更以降スワップの取引量が急増しているが、JSCCの統計からも明らかなように、2年のバケットに分類される短期のスワップの増加から来ている。したがって、PV01で見るとその増加幅は想定元本で見るほど大きくない。一方、JSCC同様、LCHの取引量も3月から急増している。LCHで特に短期のスワップが増えたという証拠は見られないので、日銀政策変更後は、JSCCにおける短期スワップの取引増が最も大きいのと、JSCCでクリアリングをする顧客が、緩やかながらついに増え始めたというのが大きな変化である。
いずれにしても今年の3月からは金利スワップ市場において何らかの変化の兆し見え始めている。せっかくグローバルな取引フローを取り込めるようになってきたのだから、極力公平性と透明性を高めて、円金利マーケットがグローバルに通用する市場であり続けることを期待したい。