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米国ストレステストの結果に対する不服申し立てが初めて認められた

GSがFRBのストレステストで資本増強の必要性が示唆されていたが、その後の不服申し立てを受け、FRBが修正を受け入れることとなった。早速GSからはその旨のアナウンスメントが出されていた。ストレステストの結果が公表された際には、GSはStress Capital Buffer(SCB)の予想外の増加を受けて自社株買いを抑えるとしていたが、これで資本余力が生まれることとなる。SCB自体は6.4%から6.2%に引き下げられたとのことなので、その影響は小さくない。

FRBは、ストレステストの透明性を高める狙いもあり、2020年からこうした申し立てを受け付けるようにしてきた。しかし、これまで9件の申し立てはすべて否認されてきたが、今回は決定が覆る初めてのケースとなる。


当初結果では、重大なストレスのかかった状況で$40bnの損失が出るという計算だったが、GSとしては、すでにリスクを処理していた消費者向け融資部門のグリーンスカイについての追加損失について反論をしたようだ。FRBとしても、処理をほぼ終えていたものに対する損失だったので、反論しにくかったのかもしれない。

通常大手米銀に対して要求されるTier1資本には、4.5%の最低基準額、ストレステストの結果も踏まえた最低2.5%のストレス資本バッファー、そしてグローバルにシステム上重要な銀行に対する追加チャージがかかる。近年はこのSCBとG-SIBにかかる追加チャージが米銀の軽系を大きく左右するようになってきている。

今回の修正によって、GSの最低ティア1資本は13.9%から13.7%へと緩和される。JPMが12.3%、BoAが10.7%、Citiが12.1%であることを考えるとやはり証券系のGSとMS(13.5%)に対する要件が高くなっている。この要件を満たせないとボーナス支払いに対する制限や配当制限がかかるため、その影響は大きい。

配当制限はまだしも、ボーナス制限が大きな問題になるというのが、日本との大きな違いなのだろう。しかしFRBの文書を読むと反論を受けてきちんと検証した形跡が伺われ、当局と銀行が健全な議論を闘わせている様子が伺われる。資本規制の重要性からすると、今後もこうした緊張感のある議論が続いていくのだろう。

米国バーゼルIII Endgameの修正が意味するもの

米国のBasel III最終案について、早ければ今月9月19日にも詳細が明らかになるという報道が相次いでいる。今回は金融業界サイドのロビー活動も、訴訟を含む前例のないレベルで展開されており、資本規制強化はアメリカ一般市民の生活を脅かすとした主張も功を奏したのか、一定の譲歩を引き出せそうな雰囲気になっている。

今回の修正案では、オペレーショナルリスクに関する規定を中心に変更が加えられるとするコメントも紹介されている。ウェルス・マネジメントやクレジットカード業務など、手数料ベースの非金利業務に対して銀行が割り当てなければならない資本の削減が見込まれている。

また、今回の修正は、以前の計画を全面的に書き直すものではないが、G-SIBの市場リスクに関して内部モデルを使える余地を広げるものになると報道されている。依然詳細な内容はわからないが、内部モデルが利用できる範囲が拡がることはリスク管理の進歩のためにも望ましいことである。

というのも、金融危機後の各種規制導入が進むにつれ、金融機関のリスク管理能力が低下しているような気がするからである。特にデリバティブリスクに精通したトップマネジメントが少数派となり、ローン残高や想定元本などのサイズのみを抑えようという動きが強くなってきた。内部モデルで自らがリスクを定義し制御していた頃とは異なり、標準法でリスクが大きいとみなされる取引に注目する傾向がますます強まっている。

こうした昨今のルールの下では、レバレッジ比率やバランスシートの制約が大きいため、単純に想定元本の大きい取引がリスキーとみなされる。単純な例を挙げれば、元本100億円で1%の固定金利と変動金利を交換するスワップと、元本10億円で10%の固定金利と変動金利を交換するスワップは同じキャッシュフローになる。しかし、元本は100億円のスワップの方が10倍大きい。これはあくまでも極端な例だが、いくらでも複雑なフォーミュラのキャッシュフローに変更することは可能である。

またVaRやPFEが実際のリスクを正しく把握してこなかったという声も大きくなっており、特に米国ではVaRからストレステストへと、リスク管理の手法のメインストリームが大きく変化しつつある。VaRやPFEは一定の確率で起きる事象なのだから、それが頻繁に起きたからといってリスク管理の失敗とは言えないと思うのだが、内容もよくわからずにPFEは適切なリスク指標ではないと報じられるケースも増えているようだ。本来であれば、VaRの限界を理解した上で、リスク制御を行えば良いものを、すべてストレステストに変えてしまうと、ストレスシナリオがどんどん極端なものになっていくだけである。

その意味でも、今回の米国のBasel III Endgameがどのように決着するかは極めて重要である。今後数週間の間に出てくる最終案に注目が集まる。

8月に起きた市場変動に対するBISの分析

先月8月5日の市場変動についてのBISの分析ペーパーが出ている。基本的には各種報道されている通り、キャリートレードの巻き返しが主要因としている。株式や各種オプション取引も、急激な市場変動がないということを前提としたストラテジーなので、一旦市場変動が起きると急速にポジション解約が進み、市場変動が増幅される。

しかも、近年は高速取引が増えているほか、市場変動がVMのみならずIM所要額をも引き上げるため、さらに変動が加速する。このペーパーの著者も言っているように、市場が落ち着いているときに巨額のポジションが蓄積され、それが一気に解約されるというリスクが高まっている。

レバレッジのかかったキャリートレードは、8月5日に至るまで相当に大きくなっており、それが一気に解約されているが、最も大きかったが、円ショートのポジションだった。これだけが原因ではないだろうが、結局最も大きく変動したのが日本株だった。きっかけは前の週の日銀の政策変更と米雇用統計だったが、この二つともそれほど大きなトリガーとは言えない。ポジションが大きくなりすぎると、ちょっとしたニュースでも急激な市場変動が起きる。

著者は8月5日までに蓄積された投機的な円キャリートレードのポジションは$14bn程度としているが、実際はデリバティブポジションなども併せて$160bn程度はあったと予想している。このポジション解消の動きの要因として、FX業者による個人投資家のポジション解消を挙げている。つまり、メディアで報道されている分析をデータで実証した形になっている。そして、円やスイスフランといったキャリートレードの常連とされる通貨以外にも、中国元、マレーシアリンギットがFunding通貨として使われていると推測している。

マージンコールによって引き起こされるプロシクリカリティについても言及されており、市場変動によってIMが増えたものとしてJSCCの株式インデックスのIMが60‐80%の増加、国債先物のIMが43%増加した点を挙げている。

全般的にこうした金融市場におけるリスクテイクが高まっている点を著者は懸念している。マーケットが落ち着いた後も、レバレッジを効かせたポジションの一部が急速に再構築されている点も指摘されている。こうした市場変動は金融システムの構造的変化を反映しているとの主張はもっともであるが、さすがに規制強化がこれを引き起こしているまでは書いていないようだ。

キャリートレードは昔から存在しており、日本でも急速な円高が起きないことを前提とした輸入企業の為替ヘッジ(にレバレッジを加えたもの)が原因で、リーマンショック後に多くの中小企業が破綻した。為替取引にレバレッジをかけていなければ今も存続していたと思われる企業も多い。

構造変化により、あの時と同じことがより簡単い起こりやすい状況になっているというのだから、一層注意が必要ということなのだろう。今回の相場でもそうだったが、マーケットはオーバーシュートしやすくなっているため、一時的には思いもよらぬ変動が起きる可能性があり、それが突如巨額のマージンコールを引き起こしてしまう。

為替介入は批判されることも多いが、ここまで市場変動が激しくなってくると、要は株式市場のサーキットブレーカーと同じようなものなのだから、頻繁に行われない限り、もう少し正当化されても良いのかもしれない。

Basel III Endgameが大幅緩和される?

英国局は、米国での規制の状況を見極めるため、銀行資本改革を少なくとも2016年1月まで延期する予定だと報じられた。先にEUが同様の延期を発表しているため特に驚きではないが、金融業界で注目を集めてきたバーゼル3エンドゲームの延期が確実になってきた。Until at least Jan 2026と報じられていることから、さらなる延期の可能性もあるかもしれない。

直接には、英国総選挙の公示によって規制当局が動けない期間ができるため、金融機関に1年の準備期間を与えるためには延期がやむなしという結論に至ったとされている。

これとは別に、英国では再来週の9月12日に、バーゼル3.1の2度目の改訂版を公表する予定とのことである。これがほぼ最終版に近いものになると予想されている。ちなみにバーゼル3.1は英国におけるバーゼル3最終案のことを指す。おそらく3.1という呼び方を使っているのは英国だけではないだろうか。

英国、EU、米国によって、実施スケジュールは何度も延期されてきた。イングランド銀行は昨年、米国が発表した2025年6月のスケジュールに合わせてスケジュールを変更した。米国では、当初バーゼル案よりも厳しい規制を課すとして激しい論争が巻き起こり、今年初めにパウエル議長が見直しに言及したところだ。あまりに厳しい規制のため当局を相手取った訴訟を起こすとした銀行まである。

政治家も、これまでは銀行を厳しく締め付ければ人気が出たということもあり、規制強化を訴える議員が多かったが、ここへ来て逆の動きも見え始めている。米国の驚くべきところは、メディアをロビー活動に活発に使うという点である。日本のテレビでバーゼル3を廃止せよなどというCMを見ることはないが、米国では政治的なCMや業界のロビー活動に関連したCMをよく見かける。

以下の動画などは、バーゼル3によって一般市民が買うものの価格が上がる、家が買えなくなる、子供を進学させる、退職後の生活が厳しくなるなどと訴えている。日本では考えられないCMだ。

このようなCMはこれだけでなく、検索すればほかにも似たようなCMが見つかる。一般大衆に訴えかけるCMまで出てきたということは、Basel IIIがかなり骨抜きになる可能性が出てきたということなのだろうか。

こうした米国の動きを察知したEUも既にバーゼル3最終化を延期し、今回英国がこれに加わる。

それだけ資本コストが世界の金融機関の収益性にインパクトを与える重要な要素ということになる(日本はすでに3月に導入してしまったが)。東証のPBR改善要請もあったことから、今後は資本効率を重視した経営が重要になってくるが、そうなると日本でも資本コストに対する見方も変わってくるかもしれない。

AI時代の取引執行コスト

引越し、車や不動産の売買その他あらゆるサービスで相見積もりを取るのが一般的だが、金融取引でもこれはある程度同じである。しかし、だからといって自分の行いたい取引を数多くのディーラーに聞きに行くと、マーケットを動かしてしまうというのが大きな違いである。

引越し業者10社に聞いたとしても、引越し業界全体の引越代が上がるということはないが、金融取引の場合は、逆効果になることがある。したがって、流動性が低くサイズの大きい取引は、1社でExclusiveに行ったり、せいぜい2~3社に絞って取引をすることが多い。取引を受けるディーラーサイドも、他に情報が漏れない方がマーケットインパクトが少ないので、Agressiveにプライスを出せる。

引越しで多くの業者の見積もりを一括で取ることがあるように、電子取引だと多くのディーラーに情報が流れていくことがある。為替や株式などでは、これを避けるためにサイズをスライシングして小分け注文にすることも多い。金利スワップやJGBの場合は、ボイスで取引をすることになる。だが、これもテクノロジーの進歩によって将来的には解決される問題だろう。

特に為替取引においては、取引をスライスせずに一括でフルサイズの取引を行うケースが増えてきており、CBOEでは全体の1/3、360tでは7割がフルサイズオーダーになっているとも報じられている。確かに株式取引などを海外で行う時も、オーダーは一回で出したものが、時間差で色々な価格で執行されていき、最終的には一つの平均価格でまとめて報告されてくることがあるが、これも似たようなものなのだろう。

当然どのような取引が収益性が高いかといった分析は簡単に行えるので、それに応じて営業職員、そして顧客すら評価することは可能だろうし、AIの利用が本格化する中、こうしたことを実際にやっているところも多くなっているものと予想される。また先日8月5日のようにマーケットが一方向に動いているときは、逆張りのフローなどは、非常に助かる取引なので、Agressiveに取りたい取引となる。つまり、ヘッジファンドやFX証拠金業者のように、市場の流れに従ってパニック売りをするようなフローは、ディーラーとしても難しい取引となり、実需に基づいた取引は、ありがたい取引ということになる。

難しいのは、最初の取引を執行した後、同じ取引をほかのディーラーで執行されるというものだろう。例えば、あるディーラーが顧客から円を買った後に、さらにその顧客が断続的に円を売り続けたら、円がさらに弱くなって最初に買った円から損失が発生するということになる。もちろん、為替の流動性から考えるとこのようなことは稀かもしれないが、流動性の低い商品、あるいはサイズの大きな取引だとこうしたことが起きても不思議ではない。

これを防ぐために取引プラットフォームでは、最初のオーダーから次のオーダーまで、ディーラーに若干の時間を与えるような仕組みを導入しているところもあるようだ。これをグレーアウトピリオドというらしい。

こうしたマーケットインパクトを予測することによって、顧客サイドはベストプライスを得ることができるようになるし、ディーラーサイドも顧客に良いプライスを提供できるようになる。あるいはプラットフォーム側でマーケットインパクトを減らすような仕組みを導入することも可能だろう。いずれにしても、金融取引の執行方法というのは、今後こうした側面を考慮しながら進化していくのだろう。順番としては、流動性の高い株式や為替で起きたことが、国債や社債、デリバティブ取引に波及していくことになるのだろう。

日本国債市場の電子化は進むか

米国債のT+1化、清算集中規制への動きなど、米国債をめぐる環境は大きく変わりつつある。もし日本で同じような国債のクリアリングが義務付けられれば、オペレーション面での懸念がクローズアップされそうなものだが、取引の2/3が電子で取引されている米国債市場では、比較的スムーズに移行できるのかもしれない。

日本で清算集中義務を課すことになれば、電話で注文を出しているボイスの取引を即座にクリアリングにつなぐなどの処理が必要になるが、その前段階の準備として、やはり電子取引への移行が必要になってくると思われる。

JSDAのデータを見ると、日銀の政策変更もあり、ここ数年の取引量は大きく伸びている。特に海外からの取引の伸びが著しい。海外ファンドなどは電子取引に慣れているので、海外のフローが増えると、電子取引の割合も増えてくる。

Risk.netの3月の記事では、Dealer to Clientの電子取引の取引数シェアは2020年の30%から60%にまで伸びているのではないかという市場参加者のコメントが紹介されていた。JSDAのデータと電子取引プラットフォーム3社(Tradeweb、Bloomberg、Yensai.com)のデータから推計したとのことである。ここで注意が必要なのは、これが取引のシェアということである。つまり小規模な取引が電子で、サイズの大きい取引がボイスで行われる現状では、当然このような結果になる。では取引のシェアでみると20%に満たない。それでも2020年の12%から18%に伸びているとのことである。

これは今に始まったことではないが、日本ではサイズの大きな取引は電子ではなくボイスで行う慣行が強く残っている。ディーラーサイドでも、1チケット1億円を下回るような小口取引をボイスでマニュアル対応するのは困難だが、数百億円を超えるような大口取引であれば、ボイスで対応しても問題ない、あるいはボイスで取引したいというニーズがあるものと思われる。大口の取引がコンペにかけられるとマーケットを動かしてしまう可能性もあるからだ。

特に日本の大手銀行や生保のフローはサイズが大きいものが多いので、これらが電子にすぐに移行することはなさそうである。しかし、海外のフローの中にはそれなりのサイズのものも含まれており、こうした取引が電子で取引されるようになれば、JGBの流動性も上がってくることになる。特に最近の海外フローの増加を見ていると、これが日本で電子のシェアが上がるきっかけになるかしれない。

ただし、米国並みの電子化を進めるには、規制面からのPushが必要な気する。なぜなら、国内の大手金融機関や生保が積極的に電子に移行するインセンティブがあまり見いだせないからである。電話で交渉してマーケットの情報を受け取ったり、各種サービスを受けながら取引する方が、取引担当者も安心だろう。ディーラーサイドも、いくらブッキングをマニュアルで行わなくてはならなくても、大口の注文はボイスで受ける方を好む気がする。

米国では、デリバティブ取引もそうだが、清算集中規制のほかにSEFの利用を義務付け、ほぼリアルタイムの取引報告を義務化している。取引を手作業でさばいていてはこうした報告に間に合わないため、否が応でもシステム投資を進めなければならなかった。日本にはETPの規制はあるものの、リアルタイムレポーティングの規制はなく、SEFのようなプラットフォームを使わなければならないという厳しい規制がない。

米国では、もちろん取引の公平性と透明性を高めるという目的のもとでこうした規制が作られたのだろうが、裏には複雑化する金融の変化に対応するため、人手を介した作業を極力排除し、金融機関にシステム投資を促すためという目的があったとするのは勘繰りすぎだろうか。

いずれにしても結果的に米銀のシステム投資は大きくなり、取引処理の自動化やシステム化が世界一進むことになった。これにAIを使った処理が加わったことで、ますます米国の優位性が高まっているようにも思える。日本でも、DX投資促進税制などが導入されているが、金融システム投資に対する税制優遇など、日本の金融機関が競争力を高められるような仕組みを作れないものだろうか。

キャリートレードとは

今回の8/5に起きた株式市場の暴落後、キャリートレードが打撃を受け、そのアンワインドが市場の動きを加速させたという記事が目立った。その後市場が回復すると、今度はヘッジファンドが円キャリートレードを復活させたという記事も出ている。

報道の中では、今回キャリートレードの60%とか75%が解消されたといったニュースも出ている。といってもどのくらいのキャリートレードが行われているかを示すデータはなく、唯一頼りにされているのがCFTCの為替先物のポジションとなっている。60%とか75%というのは、たいていこのCFTCのデータをもとに判断しているものと思われる。

ではキャリートレードとは何かというと、「低金利の通貨で調達した資金を高金利の通貨に換えて資産運用し、運用益に加えて金利の利ザヤを稼ぐ取引のこと。」といった説明が一般的である。例えば円で調達してドルの資産を買うといった行動になる。この説明だと、キャリートレードを解消するには、ドル資産を売って得たドルを円に交換し返却するというイメージとなる。

キャリーを稼ぐというのは現場でも良く使われる用語だが、何かの資産を保有することによって日々お金が入ってくる取引を指す言葉として使われる。社債を保有してクーポンが入ってくる取引が代表例だ。先ほどの定義に照らせば、為替スポット取引で円を売ってドルを買い、そのドルで米国債を買うような取引がキャリートレードの例となる。

実際にこうした取引もあるのだが、一般的に言われるキャリートレードとは、おそらく単に円を売ってドルを買うという為替取引を指していることが多い。ミセスワタナベと言われる日本の個人投資家が円を売ってドルを買う取引もキャリートレードで、単純にこの為替のポジションが解消されたと考える方がしっくりくる。個人投資家がFXでドルを買えば、スワップポイントが稼げるので、これがキャリー稼ぎになる。逆にこれを解消して円を買いにくれば、それがキャリートレードの解消となる。ヘッジファンドであれば、為替の先物やフォワード取引で円を売る取引を解消する取引だ。

したがって、円キャリートレードの解消といっても、単に円安に賭けていた取引が解消されただけということになる。特に円を売って高金利通貨であるメキシコペソやトルコリラを買うという取引が大きく影響を受ける。経済理論に従えば、ペソやリラは減価するので、ただで稼げるものはないはずなのだが、実際にはこのキャリートレードで収益を上げる投資家は多い。

そしてこのキャリートレードが為替レートの変動につながっている。しかも、市場変動によってパニックになった投資家がキャリートレードを一気に解消したり、追証によってポジション解消を余儀なくされたりするので、一般的には円高の方がスピードが速くなることが多い。為替介入時には、投機的な動きに対しては断固として対処するという声明が出される。たいていは海外ヘッジファンドを想定しているように思えるが、日本の個人投資家のFXのポジションも、一定程度の影響力を持っているのだろう。

Eurexが清算基金を15%引き上げ

EurexがDefault Fund Operational Bufferというものを9月から導入することとなったが、あまり好意的に受け入れられていないようだ。

先月7月9日に公表されたESMAのCCPに対するストレステストにおいて、Eurexの集中リスクやマーケットストレスに対する備えが十分でないという結果を受けての変更かと思われる。Eurexとしては、当局の指摘に迅速に応えたということなのだろうが、やはり拙速に対応した感は否めず、負担増の不公平感を問題視するディーラーからの反応が良くない。

集中度合いの高いポートフォリオの清算コストに対しては、以下のような不足額がESMAによって指摘されている。

ICE Clear Europe €3bn
Eurex €2bn
European Commodity Clearing €1.2bn
Euronext Clearing €0.4bn

ほかにもプロダクト別の不足額も詳細に示されており、CCPのリスク管理を見るには非常に有用なレポートとなっている。おそらくEurexはこのレポートで指摘された不足に対応するために、比較的容易に導入可能な清算基金の引き上げ(15%Up)に踏み切ったのだろう。

CCPのデフォルトマネジメントにおいては、当初証拠金(IM)と清算基金(DFまたはGF)のバランスが重要となる。特にクライアントクリアリングの顧客としては、清算基金が増えても何ら変化は生じない。CCPの仕組み上、清算基金はディーラーが拠出することになっているからだ。一方IMを増やすと顧客の拠出担保が増えるため、ディーラーにとっては影響が生じない。

したがって、DFの上昇はディーラーに不利、IMの上昇は顧客に不利(?)ということになる。ここで?を付けたのは、顧客がリスクを増やした分担保が増えるので、本当に不利と言えるかどうかは疑わしいためだ。本来自己責任原則を貫けば、リスクを増やした参加者が負担を増やすべきというのが正しい。

ではDFが増加したらその分を顧客に請求すれば良いのではないかと思われるかもしれないが、通常ディーラーは、このDFを負担する代わりにそれを手数料として請求する。手数料を上げるのは、競争上の理由から困難が伴うため、今回のような変更は単純にディーラーのリスク増、と収益源につながる。

どちらが正しいとも言えない問題なのかもしれないが、リスクの自己責任原則からすると、やはり集中リスクを加味するようIMモデルを変更する、あるいはIMのConcentration Chargeの計算を見直すというのが王道ではなかったのだろうか。

米国におけるクロスマージンの拡大

Getting to Grips with Treasury Clearingという題名で、ISDAから米国債のCCPでの清算集中規制に関して見解が示されている。一例として、FICCとCMEが米国債と金利先物で提供しているようなクロスマージンが米国の資本規制上認められていないことを問題視している。確かに実際にリスクがある程度相殺されているのだから、その効果を認めないとクロスマージンのインセンティブが削がれる。

来年末から米国債の現物が、再来年6月からレポに対してCCPでの清算義務されるようになっていく中、クロスマージンが資本削減につながらないと、銀行のバランスシート制約によって、十分な流動性が提供できるかどうかが怪しくなってくる。

また、FICCとCMEはクロスマージン制度を顧客向け取引にも拡大する予定と一部のメディアで報じられた。CMEがFCM登録されたディーラーを介して顧客取引をクリアするFCMモデルを使っているのに対し、FICCはFCMモデルとは異なるディーラーの関与度が少ないモデルを使っているため、このクロスマージンがどのようにワークするのかは明らかになっていない。そもそもCMEは自分で米国債クリアリングに参入するという話もあったので、このクロスマージンを行うことによって、そのプランをあきらめることになるのかにも注目が集まる。いずれにしてもクロスマージンの対象を拡げ、当初証拠金のみならず資本のベネフィットを与えることは、清算集中規制導入を控えて不可欠になってくると思われる。

また、バーゼルⅢ EndgameやG-SIBサーチャージについても、CVAに関する一部ルール変更やG-SIBの複雑性と相互関連性スコアの調整も主張している。ほかにもSLRのようなリスクセンシティブではない指標がディーラーのマーケットメークを阻害している点も挙げられており、いずれも市場機能の回復には極めて重要な指摘だと思われる。

米国には、金融デリバティブ、クリアリングなどのあらゆる問題を取り扱うGMACという会議体があり、当局も積極的に関与している。GMACでの議論の内容は、Yutubeでも公開されている。また、ISDA、SIFMA、FIAがそれぞれ専任の職員を雇用して、こうしたロビー活動にあたっている。日本にも国債取引に関しては、様々な会議体があるが、デリバティブとなるとLIBOR改革時の委員会以外にはあまり目立ったものはない。日本でもGMACのような開かれた場での議論があっても良いのではないだろうか。

エンドユーザー同士のレポ

担保ニーズの高まりにより、エンドユーザー同士でレポ取引や株券貸借取引を行うPeer-to-Peer(P2P)サービスが脚光を浴び始めているという記事があった。IMには現金以外も使えるが、VMは通常現金に限定されているため、大きな市場変動時に資産を現金化して担保コールに応えるという行動が、市場の変動をさらに加速させてしまうことが問題になっている。

担保用の現金確保には、手持ちの資産を担保にした短期借入が有効である。また、銀行借入に加えて、レポ取引や株券貸借取引が一般的に行われてきたが、規制強化によって銀行がこうした取引を行うことが困難になった。これが市場の変動をさらに大きくしているが、これぞまさに規制のunintended consequenceといえよう。

それでは銀行を通さずにバイサイド同士でレボやストックローンを行おうではないかということで、冒頭のP2Pの話につながってきた。今後は、バイサイドの多くも対象となる米国債レボの清算集中規制導入を控えて重要課題になっている。

バイサイド同士の証券貸借取引に関しては、2014年から、米国およびカナダの有力根金ファンドが定期的に集まってSecurities Financingについて議論を重ねてきた。2020年には有力バイサイド35社が非営利団体であるGPFA(Global Peer Financing Association)を設立した。設立メンバーはCalPERSなどの大手米国年金ファンドが中心になっているが、Webにある地図を見ると日本のメンバーも入っているように見える。

P2Pになると、バイサイド同士がGMRAなどのマスター契約を締結し、お互いに取引をすることとなるが、ダイレクトに無格付けの相手方の信用リスクをとることになるので、カウンターパーティーリスクの管理が必要となる。

2022年にステートストリートが立ち上げたVenturiでは、ステートストリートがCCPのようにカウンターパーティーリスクの保証を行うので、バイサイド同士が取引相手のリスクを気にすることなく取引ができる。つまり、参加者はステートストリートにてフェースすることになり、相手方のバイサイドのカウンターパーティーリスクを負わない。また、担保の時価評価、取引報告や担保管理サービスも一体になっている。

先日紹介したFSBのレポートでも、バイサイドに対して担保拠出のための流動性確保を課題として挙げているが、P2Pを含め、あらゆる流動性確保の手段を準備しておくことが重要になる。

大手バイサイドの中には銀行並みのシステム、オペレーション機能を持つところがあるため、P2Pのハードルはそれほど大きくないだろうが、すべてを銀行に頼ってきた中小ファンドにとっては、Venturiのようなサービスは極めて有効だろう。タクシー会社を介することなく、ユーザー同士がつながるライドシェアや、ホテルや不動産会社を介さずユーザー同士をつなぐAirbnbなどと同じようなことが、金融業界にも起きているということなのかもしれない。

残念ながら、GPFAやVenturiがどの程度の取引を行っているかは定かではないが、まさに現代のニーズに合ったサービスかと思う。日本でも地銀が持っているJGBを海外ファンドに貸し出すといった需要は極めて大きいものと思われる。地銀がヘッジファンドのカウンターパーティーリスクをとるのは難しいが、CCPやVenturiのようなプラットフォームを挟めば、ビジネスとして成り立つかもしれない。

ここまで規制が強化された金融においては、無駄をなくす努力、リソースの最適化が非常に重要になってくる。日本でこうしたサービスを生み出そうという動きがないのが残念だが、今後の重要課題の一つだろう。

リスク管理業務に起きている変化

4月にLloyds Bankがリスク管理部門の人員削減を行ったことが大きく報道され話題になった。FTの記事(Lloyds Bank axes risk staff after executives complain they are a ‘blocker’)のタイトルからわかるように、リスク管理部門がビジネスのBlocker、つまりビジネスを妨げているという苦情があったからという、金融ではよくある話だ。

こんなニュースが出ると米国などでは当局から睨まれそうなものだが、実際の中身を見てみると、Non Financial Riskが重要とコメントしていたり、あらなたにリスク管理の仕事を130新設していたりと、完全に減らすというよりは人員配置の見直しに近い。

このニュースを受けてRisk.netではほかの会社にもヒアリングをしていたようだ。20社にヒアリングをして少なくとも4社が似たようなことを検討していると報じている。人が増えれば重要度も増すというコンセプトのもと、2線のリスク管理部門がEmpire Buidlingのため、人員増強を図ってきたと証言するコメントも見られる。

だが、Lloydsの記事にもあるように、重要なリスクの性質が変わってきたというのが他の銀行でも確認されている。やはり、サイバーリスク、データ管理、外注先のリスク管理など、Non Financial Riskの対象範囲が広がってきている。

Financial Riskだと3線管理はほぼ定着していると思うが、Non Financial Riskの3線管理となると、銀行によってやり方がずいぶん異なるようだ。そもそもNon Financial Riskのスキルはマーケットリスクやカウンターパーティーリスク管理とは異なり、あまり専門家というのが存在していない。法務コンプライアンス部門や、オペレーションなどから人をフロントに移して対応していることが多いようだ。

日本の銀行では1.5線という言葉が使われることが多かったが、海外でも1.5 lineというコンセプトが生まれつつある。特に新しい分野のリスクについては、既存の2線の部門に完全にフィットするところがなく、フロントで様々なリスクを日々管理する方向になっていることが多いようだ。2線は、リーガルコンプライアンス、IT、オペレーションなどと担当が厳密に分かれているが、データ漏洩のリスクはITなのかコンプライアンスなのかといった議論にもなるので、フロントですべてのNon Financial Riskをカバーした方が話が早いのかもしれない。

こうしたリスクに関しては、日本の銀行の方が対応に長けているのかもしれない。海外ではリスク管理者についても専門性が重視され、市場リスク管理の専門家はずっと市場リスク管理を担当することが多い。日本では、様々な部署を経験することが多く、例えばサイバーリスクがフォーカスになれば、新しいチームを作って担当を付けることも容易である。

特に新しい分野で専門家が存在しないようなリスク管理業務に関しては、適切な人員を選びチームを作って稼働させることが簡単にできる。また、海外でよくあるEmpire Buildingというのが日本では起きにくい。人事部が適切な人員配置を検討するので、誰かひとりが人を増やしてパワーバランスを変えるのは困難である。

以前はNemawashi文化、判断が遅いと批判されたが、今や規制強化によってグローバルバンクでも根回しは必須になっている。誰もApproveと言いたくないので判断も遅くなった。こうなってくると実は日本の金融にもチャンスがあるのかもしれない。

通貨スワップのIM

証拠金規制導入時に、為替取引までIMを拠出するのは困難という抵抗を受け、スポットFXとフォワード為替取引がIMの対象外となった。そこまでは良かったのだが、それなら通貨スワップも同じようなものではないかということで、元本交換部分のみを計算から除くことで落ち着いた。証拠金規制は、導入から年数が経ち、すっかり事務フローとしても確立したのだが、今となってみると、同じ取引のうち一部だけを除くというのは、極めて無理なプロセスに思える。

これによって、証拠金計算のみならず、ポートフォリオの最適化や資本計算等の障害にもなっている。特に通貨スワップには、CSAの通貨による割引率の違いやMTM条項の有無、ブッキングの方法、ベースカレンシーの違いなど様々な問題がある。

MTM条項とは、四半期ごとに為替の動きに対応して元本をリセットするものである。ブッキングの問題とは、例えばEURJPYの通貨スワップをそのまま一つの取引としてブックするか、USDJPYとEURUSDに分けてブックするかという問題である。ベースカレンシー問題は、現状のようにドル金利が高い状況では、ドルで計算する米銀にとって、ドルクーポンの為替リスクはないが、円をベースとする邦銀の場合はこれが大きくなるという問題である。また米銀にとっては、USDJPYのMTM通貨スワップより、EURJPYのMTM通貨スワップの方がIMが大きくなる。

こうした手間を省くため、いくつかの為替フォワードに分解すれば、証拠金規制のIM計算の対象外にすることもできてしまう。

MTM条項付のスワップに関しては、ISDAからガイドラインが出ている。MTM条項がついているということは、四半期ごとに元本がリセットされるため、元本が変更になった分について四半期ごとに支払いが起きる。これはある意味元本交換のようなものなのだから、IMの計算の対象外ではないかと思う人もいるが、これは間違いである。

つまり、取引時点で確定している元本交換についてはSIMMの計算から除くことができるが、その時点では確定していない、フォワードからImplyされるようなキャッシュフローは、IMの計算に含むということである。もっと厳密にいうと、リセットしたばかりの次の支払額はFixされているのでSIMMの計算から除き、それ以降のまだFixされていないものはSIMMの計算に入れるということになる。

規制上の定義では、any risks or risk factors associated with the foreign exchange transactions associated with the fixed exchange of principal embedded in a cross-currency swapにはIMが必要とされている。ここでいうfixedは取引時点で固まっているキャッシュフローを指すという理解であり、その時点でfixされていない将来の支払いは除くことができないというロジックである。

通常債券発行時に事業会社などと行う通貨スワップは、固定vs固定のNon MTMのスワップになることが多い。ディーラーとしては、四半期ごとのリセットがないため、スワップのエクスポージャーが大きくなり、その分バランスシートや資本を使うことになる。このため、ディーラーは標準的な変動vs変動のMTM条項付のスワップを好む。コンプレッションなどの効率も高くなる。だが、このSIMMのガイドラインに従えば、マーケット標準のMTM条項付の変動vs変動の通貨スワップの方がIM負担が大きくなってしまうのである。

例えば、事業会社との通貨スワップのコストを抑えるために、最適化を行いマーケットスタンダードの変動vs変動のMTM条項付スワップを反対方向で入れると、IMが逆に増えるということになってしまい、為替のリスクは大きく軽減されるにもかかわらず、Optimizationなどしない方が良いということになる。実質的なリスクは減るのに、元本交換がSIMMから除かれているがために、IMが増えてしまうのである。

昨今では証拠金削減、資本コスト削減のためにあらゆる最適化取引が検討され、金融機関のバランスシートコストやポートフォリオとしてのリスクを小さくするような努力が行われているが、元本交換を除いてしまったがために、IM計算がリスク削減を反映しなくなってしまっているのである。そしてこの差を利用すれば、リスクが増えるがIMが減ることが起きてしまうのである。

通常の為替でも、NDFだとIMがかかるが、現物決済の為替フォワードにしてしまえば、IMはゼロになってしまう。現物決済の方が決済リスクがあるのでリスクは大きいはずなのだが、NDFだけ不当にコスト高になっているといっても過言ではない。

以前は、CCPで決済リスクを取るのは困難ということだったのだが、実際は現物やレポ、そして一部のCCPでは為替取引や通貨スワップもクリアリングするようになってきている。このような状況の中、清算集中規制もIM規制もかからないから楽だという理由で、為替取引が極端に増えるのはあまり健全とは言えない。大きな事故が起きる前に、為替取引についても清算集中やIMの規制をかけるべきなのではないだろうか。これは、VMすら取らない無担保為替取引の多い日本では特に重要な課題である。

極端な事情変動に備えて現金担保を無尽蔵に積んでおくのは正しいか?

FSBからマージンコールにまつわる流動性問題についてのペーパーが出ているが、ストレステストを行い十分な流動性を確保すべきという、当たり前の提案にとどまっている。結局は極端な市場変動に備えて十分な現金を保有しておくべきというものだが、ある意味当たり前のことであり、問題解決にはつながらない。

規制強化によって、ディーラーが市場変動時にリスクを取ることができず、バランスシート制約によって在庫を抱えられなくなっているので、市場の変動が以前にもまして大きくなっている。それはどんな状況にも対応できるほど膨大な現金を準備しておければ良いが、それでは非効率極まりなく、年金ファンドなどは、十分なリターンが出せなくなる。

一方で現金以外の担保をVMにも使えるようにすべきという市場参加者のの意見がRisk.netで紹介されていた。記事の中ではMarket Participantsの意見とされていたが、おそらくこれはバイサイドからの意見だろう。セルサイドは、現金以外の担保を受け取ってしまうとそれを他の担保に使うことができないので、デリバティブのプライシングが変わってしまう。当然不可能なことではなく、実際に相対取引で現金以外をVMとして受け入れるケースもあるが、XVAデスクが価格調整をしてリザーブを積むのが一般的だ。割引率も変わってしまうのでデリバティブ取引の時価評価まで変わってしまう。

本来であれば、バイサイドが保有する資産をレポによって現金化すれば、この問題は解決する。しかし、レポを行う資本コストやバランスシートコストが膨大になってしまったので、これをすべての顧客に提供するほどの余裕は銀行にはない。だが、バイサイドからすると、銀行規制の強化によってバイサイドが不利益を被るのはおかしいという主張なのだが、現実的には昨今の規制コストを考えるとレポ業務を縮小せざるを得ない。

バランスシート規制を緩めてレポ取引のコストを下げれば、現在起きているかなりの問題が解決するだろうが、規制緩和は政治的に難しいだろう。

何か解決策がないか色々と考えていたのだが、急激な市場変動時にのみ現金以外の担保をVMとして認めるというのはどうだろう。これだとプロシクリカリティも防げる。あまりにも想定外の市場変動があった時のみ、例えば1週間だけといった形で、こうした担保をVMに拠出できれば、ある程度の混乱は防げるのではないか。

VMとして受け取ると、割引率が変わり時価評価も変わってしまうというのなら、一時的にIMとして受け入れて、落ち着いてからVMに振り替えるというのはどうだろう。特に、毎日のマージンコールに加えて、日中のマージンコールをする場合などは、一旦IMとして受け入れて後にVMに変えればプライシングへの影響は軽微になるはずだ。

よく考えると週次のマージンコールの契約もあるが、VMが現金であれば、日次マージンコールと同じように時価評価が行われている。MPORが長くなるので、その分XVAや資本コストが少し上がっているかもしれないが、週次でOISディスカウントができるのなら、一時的に非現金担保をIMとして受け入れて1週間後に現金をVMとして拠出するくらいなら許容されるのではないか。

ただし、そうは言っても1か月も非現金をVMに受け入れることはできないだろうからせいぜい1週間だろう。ただ、急に現金がなくて破綻するよりは、とりあえず持っている資産を担保に出して時間を稼いでおき、数日から1週間の間に現金を工面する、そしてその間にマーケットが落ち着いていれば、その現金も必要なくなるという仕組は作れないだろうか。

CCPであれば、日中マージンコールが顧客にかかった場合は、クリアリングブローカーが証拠金を短期的に建て替えることがある。この場合、ディーラーサイドでは、まずとれるものを取っておいて、現金を建て替えるというケースはあると思われる。

または、CCPの方でレポを行い国債を受け入れて現金に換えてVMに充てるというプログラムを作っても良い。単なるレポだと難しいが、ヘアカットを多めにとって、例えば50の現金のために100の社債を拠出するといったプログラムだけでも、現金のひっ迫を抑えることができる。

いずれにしても、ここまで市場変動が大きくなってくると、すべてのシナリオに備えて膨大な現金を積んでおくのには限界があると思う。規制緩和が無理ならば、むやみに極端なシナリオに対して膨大な現金を常日頃から持っておくことを要求するだけでなく、何らかの対応策を考えておくことが必要だと強く思う。

ISDA Document Negotiation Survey

ISDAから契約交渉に関するサーベイが公表された。デリバティブ取引の基本契約としては完全に市民権を得たISDAマスター契約であるが、その交渉にかかる時間は思ったより短縮化されていないようだ。証拠金規制でIM拠出が義務付けられ、カストディアン契約等新たな契約が増えたという事情もあるが、それでもここまで標準化されてきたのだから、もう少し迅速に契約締結が可能かと思っていた。

おそらく規制強化と人員不足という理由もあるのだろう。また、自動化やシステム化のための予算がつけにくいという事情も関係しているかと思う。契約交渉のために積極的に人員とコストをかけるところは多くないのは事実である。

契約の中身についてみていくと、ISDAのVersionには1992年版と2002年版があるが、未だに1992年版が半数近く残っているのは驚きだ。各種猶予期間やクローズアウトのやり方などを改善した2002年版を使うべきなのだが、やはり既存のISDAの書き換えはあまり進んでいないようだ。以下が契約のバージョンごとのシェアである。一部1992年版にアドホックに改善を加えるケースもあるが、それでもたったの7%である。

56% 2002年版ISDA
39% 1992年版ISDA
7% 修正1992年版ISDA

実際にデフォルトが起きた時や、ロシアの経済制裁時などは、2002年版の方が実際には有利だった。とはいえ、やはり普段から問題なく取引ができているのだから、わざわざ面倒な契約交渉をしたくないという事情もあるので、本来であれば、新しいバージョンができたときは、一斉に変更するような仕組みが必要なのかもしれない。ISDAのプロトコルに批准することによって一斉に契約の更新を実現することは一般的なので、ISDAのバージョンについても同じことはできないのだろうか。

その他、ISDA Createなど、システム的に契約交渉を行うツールが用意されているにもかかわらず、実際に使っている人は少ないようだ。驚きなのは、80%以上のケースで、メールやWordファイルのやり取りで契約交渉を行っており、20年前からほとんど進歩していない。

契約にかかる時間であるが、半数近くが3か月以上という結果になっている。これは以前からほとんど変化しておらず、2006年との比較では若干悪化してさえいる。1年以上かかるものもあるが、ここまできたら、優先順位が低く何もしないで放っておいている状況に近いものと思われる。

本来であれば、契約に必要な重点交渉項目だけを選択することによって自動的に契約書を作成し、それを当事者間で合意できれば望ましい。そうすれば各種契約項目のデータベース化も容易にできる。そもそもISDAマスターの場合は、ローンのように銀行が一方的に与信供与をする訳ではなく、両当事者ともに与信を供与する側になりうる。このため、できるだけ両当事者に同じ条件が適用できるようにするのが望ましい。片方が信用力に極端に劣る時のみ解約条項、保証、各種トリガーを交渉する必要があるが、それ以外は標準的な条項を双方が適用すれば、本来はそれほど時間がかからないはずだ。

そしてこうした条件だけが合意できたら、あとはAIで自動的に契約を作成すればよい。細かい表現を読み込む必要性がなくなれば、英語の問題も少なくなるはずだ。こうした契約のAI化は、日本にとっても非常にメリットが大きいものと思われるので、何とか進化させたいところだ。

大手米銀が資本削減に力を入れている

2024年第二四半期の大手米銀決算が出揃った。今回も決算発表後の質疑応答のスクリプトをざっと読んでみたのだが、今回は、SCB(ストレスキャピタルバッファ)についての不満をもらすところが多かった。多くの米銀が、資本削減、最適化にかなりの努力を継続してきたにもかかわらず、それがストレステストで評価されていない点が納得いかないようだ。

そして、SCBの計算が不透明であり、しかも非常にVolatileある点を問題視する意見が多い。シナリオがそれほど変わっていなくても、ここまでSCBが大きく上昇するというのは、各銀行の感覚と合わないようで、銀行自らが試算した結果と、FEDの計算結果が大きく乖離している点を問題視するコメントもみられる。一時期はレバレッジ比率規制やバランスシート規制に対するコメントが多く見られ、最近ではBasel III Endgameに関するものが多かったが、今回はSCBに注目するところが多い。

特にGSは、最近の資本削減、最適化の努力のおかげで、信用リスク資本、市場リスク資本とも大幅削減に成功している。株式投資関連エクスポージャー、デリバティブ取引エクスポージャーをかなり削減したようだ。一方ここまで削減努力をしてきたにもかかわらず、SCBが上昇しているのが不可解のようだ。FEDの審査に異議を表明しているという記事まで出ている。Citiも、SCBが減ったにもかかわらず、削減努力に比して減り方が少ないと思っているようだ。

それにしても、ここまで米銀行大手すべてが、資本削減や資本最適化に力を入れてきているというのは興味深い。しばらくは、資本賦課が銀行経営にとって最重要課題であり続けるのだろう。

全社横断的なデータ集約の重要性

FTなどで報じられている通り、Citiの清算計画(Resolution Plan)が米国当局に却下された。これは、金融機関が、自らの破綻時に迅速に破綻処理を行い、税金投入なく秩序だった清算ができるようにする計画である。遺言状を意味するLiving Willとも呼ばれる。

米国当局の一つであるFDICが5人のメンバー全員一致で却下となった。内容的にはCitiのデータコントロールの評価を2年前の「Shortcoming」から「Devidient」に変更している。これでFEDもFDICと同じ判断をすれば罰金が科されることになる。これは何もCitiに限ったわけではなく、他の大手銀行についても、より問題は少ないとしながらも同様の懸念を表明している。

今回重要なのは、何か不正があったというよりは、リスク管理やデータガバナンスが不十分とされたという点だ。データの信頼性が低いということは、ストレスがかかった環境でのポジション解消時に大きなリスクが発生することを問題視している。詳細はFRBのレターでも確認できる。

ここで重視されているのは、社内の各部門から、正確なデータをタイムリーに取得し、分析をすることができるかどうかである。データが得られないと、ストレス時のポジション解消にどのくらいのコストがかかるかが計算できない。そしてカウンターパーティー毎の信用リスク、資本なども同時に把握する必要がある。資本計算のためにはグループ間でのデータを総合的に見なければならない。当局は、各社の状況を比べ、良いところがあれば別の銀行にも同じことを求め、業界標準が出来上がっていくことが多い。

こうしたデータ分析はユニバーサルバンク形式を取る米系では比較的容易なはずなのだが、それでもこれだけの問題が指摘されている。銀行、信託、証券などが分かれている場合、各社のポジション、リスク、資本などをタイムリーに把握できるのだろうか。少なくとも米系は商品ごとにシステムは違えども、グループ間での相違が少ない。部門、地域、子会社などのポジションを横断的に集計し、それに対してストレステストやシナリオ分析をタイムリーに行うことが求められる中、世界中の金融機関が業務フローの見直しを迫られることになるだろう。

資本計算はグループ毎に行うので、日本でも大きな変革が求められるようになるかもしれない。LIBOR改革の時に明らかになったように、グループ内のすべてのエンティティのデータを集計するのに手間取るところが多かったからだ。ネット銀行、証券、為替証拠金子会社、さらに海外拠点まで含めてストレステストを行うとなるとかなりの手間になるだろう。

世界中で資本、ファンディングなどの最適化をグループ横断的に行うのが一般的になった。最近では、取引前に資本ハードルを満たしているかを確認するだけでなく、取引を行った後の最適化処理も含めて資本ハードルを考えるようになってきている。この分野において日本は特に遅れているように感じる。

米国資本規制緩和のニュース

最近たまに各方面からコメントが出てくるが、今週はFEDがG-SIBサーチャージの緩和策を検討というロイターのニュースが注目を集めた。決算に前向きな意見が出たこともあるが、米銀の株価が軒並み上昇した。

公式見解は何も出ていないのだが、事情を知る複数の市場参加者のコメントとして報道されている。米国ではこうした記事が出ることが多いが、今回もおそらく信ぴょう性が高いのだろう。内容としては、G-SIBスコアのうち、経済成長を反映させた形で係数を調整するということのようだ。

通常銀行がバランスシートのサイズを増やせばサイズを表すスコアが上昇し、G-SIBサーチャージが上昇する。グローバルなシステム上重要な銀行にかかるチャージであるため、サイズが大きくなればシステム上重要度が増すので、それが大きくなるのはある意味当然である。

以前G-SIBの定義を紹介した時の記事にも書いたが、バーゼルのルールが相対指標なのに対し、米国の一部ルール(Method 2)は絶対指標となっている。つまりバーゼルのルールでは、経済全体が10%成長していれば、個々の銀行が10%成長したとしてもスコアは変わらないのに対し、米国のMethod 2では、各行のスコアが上がってしまうのである。報道されている内容からするとこのMethod 2の見直しが検討されているということなのかもしれない。

例えばサーチャージが0.5%変更となっただけでも、JPMやバンカメなどの大銀行では各行1兆円を超える資本削減が可能になる。多くの大手米銀がこうした恩恵を受けるとなると、そのインパクトはかなり大きい。市場インパクトもあるかもしれない。

JPMなどは、この経済成長によって米国のG-SIBは$59bnもの資本を積んでいると試算していたこともある。言っていることはもっともで、なぜこれが米国だけ修正されないのかは不思議なところではあるが、大手銀行だけに有利な変更をするとなると、政治的にはなかなか受け入れられないだろう。とは言え、バーゼルIII Endgameでここを修正しないまま更に資本規制強化を行うのもかなり厳しい。

となると、Basel III Endgameで増える資本賦課と、経済成長を加味することで減る資本賦課がオフセットするようにデザインするというのが、誰からも受け入れやすい変更のようにも思える。しかし、この二つの変更には関連がないとする事情通のコメントも報道されているので、本当のところはよくわからない。いずれにしても米銀大手にとっては朗報であり、それが今週の株価の動きに表れているのかもしれない。

EUR IRSについてCCP間の競争が激しくなってきた

以前も紹介した通りユーロの金利スワップのクリアリングにNasdaqが参入し、現在5社入り乱れての競争になっている。とはいえ、メインはLCHであり、それをEurexが追う形になっている。Eurexは欧州域内のCCPとしては競争がないためか、コスト高という評判もあり、規制の後押しにも関わらず苦戦しているように見える。当然他の金利スワップとのネッティング効率という意味ではLCHが断然有利である。

通常あらゆる取引をネッティングするためには、極力一つのCCPの集中させた方が望ましい。だが、一社だけだと何かトラブルがあった時や、ポジションの集中リスクが大きくなった時のために、2社程度に分散しておく方が無難である。大手銀行はLCHとEurexの両方にアクセスがあるのが普通だろう。さすがにこの2社にBME、CME、Nasdaqを加えた5社は多いようにも思えるので、いずれは淘汰されていくことになるかNasdaqのように、北欧の銀行に強みを持つといった地域による棲み分けが起こるのかもしれない。

特に、委員会等への参加、デフォルトマネジメントプロセスやオークションへの参加など、ディーラーの参加者にとっての義務は軽くはないため、2社以上となるとかなりの負担になる。ただし、1社だとバックアッププランがないため海外当局からは不安視される傾向がある。

LCHに欧州当局から与えられている免除期間は来年2025年6月末で切れるが、さらなる延長があるのか、それとも欧州域内へのシフトが進むのかに注目が集まる。6月末で免除が終わることが明らかになれば、3か月前の3月までにLCHはポジション解消の通知を送らなければならない。欧州の規制としては、€6bn超の取引をする市場参加者は、半年ごとに5件の取引をEurexなど欧州域内のCCPでクリアリングする義務がある。これが€100bn超の参加者になると、毎月5件の義務となる。

これまでなかなかEurexへのシフトが大規模に進んでこなかったが、Nasdaqは北欧系の銀行を順調に取り込んでおり、LCHのポジションを移管するのならEurexではなくNasdaqという声も出始めているようだ。いわゆるEmir3.0が公開されるのが今年後半とのことなので、それまでには徐々に詳細が明らかになっていくのだろう。

JSCCのクライアントクリアリングに変化?

JSCCの統計情報を見ていて気付いたのだが、最近金利スワップにおいて、クライアントクリアリング経由の取引シェアが上がってきている。2019年からクリアリングされたスワップの想定元本の全体に対する割合を見ると以下のようになっている。

以前は一桁台後半でたまに10%に届くくらいだったのだが、今年に入って軒並み10%を超えている。直近はついに16%を超えるまでになっている。

これまで日本の金利スワップ市場は、ディーラー間取引はJSCCが9割、クライアント取引はLCHが9割という、世界にもまれにみるいびつな構造になっていた。これは米国当局が米国参加者のJSCC参加を認めてないのと、日本の当局が日本の参加者のLCH参加を認めていないという特殊事情から来ていた。

このため、日本ではCCP間の金利差であるCCPベーシスが乱高下しやすいという特殊なマーケットとなっている。もともと流動性がドルなどに劣るところに、こうした市場分断が存在しているので、さらなる流動性低下を招いている。欧州などでは、Brexit後もLCHが欧州クライアント向け業務を継続しており、様々な議論はあるものの、これを禁じてしまおうというところまでは行っていない。

その意味では、JSCCに参加するクライアントが増えてきているということは、このアンバランスを一時的に解消する方向に働くのかもしれない。

日銀の政策変更以降スワップの取引量が急増しているが、JSCCの統計からも明らかなように、2年のバケットに分類される短期のスワップの増加から来ている。したがって、PV01で見るとその増加幅は想定元本で見るほど大きくない。一方、JSCC同様、LCHの取引量も3月から急増している。LCHで特に短期のスワップが増えたという証拠は見られないので、日銀政策変更後は、JSCCにおける短期スワップの取引増が最も大きいのと、JSCCでクリアリングをする顧客が、緩やかながらついに増え始めたというのが大きな変化である。

いずれにしても今年の3月からは金利スワップ市場において何らかの変化の兆し見え始めている。せっかくグローバルな取引フローを取り込めるようになってきたのだから、極力公平性と透明性を高めて、円金利マーケットがグローバルに通用する市場であり続けることを期待したい。

アウトソーシングが難しくなってきた

金融業界では、様々な業務をアウトソースするとともに、ベンダーのサービスを利用するのが一般的だった。しかし、昨年の米国当局のガイダンス公表から、徐々に金融機関の間で、ベンダーの審査を厳しくする傾向が見られ始めている。以前は、金融機関での勤務経験を持つ専門家がFintechを起業して成功する事例も多かったが、実績のないベンチャーがこの分野に割って入るのが難しくなりつつある。

そもそもこのガイダンス自体は2013年頃から存在しており、特に目新しいものではなかったのだが、2021年の市中協議や2020年のQ&A集によって、徐々に形になっていき、2023年の新たなガイダンスにつながっている。

細かく何をしなければならないということを示すというよりは、リスクベースアプローチをとっており、細かいところは個々の金融機関自ら考えるようになっている。昨今の傾向では、こうしたアプローチをとる場合は、細かくルールが決められる場合より、金融機関サイドでできるだけ保守的なルールが作られてしまうことが多い。90年代の日本などでは、ルールが細かく決められ、禁止されていないものはOKといった雰囲気があったかもしれない。しかし、ルールが細かく決まっていないと、あらゆる行動が認められるかどうかを自ら判断することになる。そうすると、不思議なものでより保守的な運営がなされることが多い。

確かに、厳しい規制監督下にある銀行がその業務の一部をアウトソースするのであれば、アウトソース先も同じレベルの管理が要求されるのはもっともなことである。しかし、新しく設立したベンチャーのような場合、株主構造、企業戦略、守秘義務にかかるようなサービス内容の開示のほか、障害が起きないような体制整備や報告体制を銀行並みに整えるのは、並大抵のことではない。

影響の大きい決済サービスのような場合は当然としても、単純な分析、レポート作成、人事評価、研修などのあらゆるベンダーに同じようなデューデリジェンスが要求されると、大人数のコンプライアンス担当を抱えているところでもなければ、途中でギブアップしてしまうところも多いだろう。とは言え、金融機関としても、業務はアウトソースできても責任をアウトソースすることはできないというのが大前提となっている以上、自ら行っているコンプライアンスプログラムに近いものを求めてしまう傾向がある。当然ガイダンスでもリスクの程度に応じて柔軟に対応すべきとしているのだが、どうしてもすべてが保守的な方向に流れてしまいがちである。

このガイダンスに対して各金融機関がどのように対応するかに注目が集まっていたが、TPRM(Third Party Risk Management)という言葉も生まれたように、懸念された通り保守的な方向に向かっているような気がする。金融機関内には、こうしたTPRMをカバーするリスクマネージャーを専属で置くところもある。

日本も米国に合わせる必要はないだろうが、グローバルでここまで各金融機関が力を入れ始めると、完全に無視することは危険になってきている気がする。少なくとも米国のガイダンスを理解したうえで、対応をしていると示せるところまではやっておいた方が良いだろう。