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為替取引の増加に市場は対応できるか

日銀の利上げとFEDの利下げにより金利差が縮小したにもかかわらず、為替は円安方向に進んだ。これ以上の日本の利上げと米国利下げは当面ないと思われたのかもしれないが、一つだけ確実に変化しているのは、為替のヘッジコストである。ヘッジコストが下がればバイサイドや保険会社などがヘッジ比率を上げてくる可能性がある。ヘッジ比率が5%上がれば$1.4tnのフローが増えるというコメントも報道されている。

証拠金規制(VM)の対象になる生保などは有担保で取引をしているだろうが、小規模の金融機関や事業会社などは無担保で取引をしているところも多いため、銀行としては資本コストが大きくなる。

以前のCEM(カレントエクスポージャー方式)が適用されていた頃は1年未満の為替取引は元本の1%がEADだったが、SA-CCRになってからこれが満期によってより精緻に計算されるようになった。試しに$10mm FX Forward取引のEADをSA-CCRとCEMで比較してみる。横軸は満期(月)、縦軸はドルベースのEADである。

SA-CCRにおける為替取引のSF(Supervisory Factor)は4%であり、アルファ係数1.4がかかるので、EADは$10mm*1.4*4%*MFとなる。MF(Maturity Factor)はsqrt(満期)で計算される。SA-CCRになると、6か月取引ではCEMの時の約4倍、1年取引では5.6倍に跳ね上がる。これが2022年に米系がSA-CCRを本格適用した時にマーケットでb/oが急上昇した理由である。

このような資本コストに対して収益が少ないため、特に無担保為替取引はディーラーにとっても悩ましい商品となってしまっている。外資系などは為替のトレーダーを日本においているところは少なくなっており、為替のセールスは以前のように稼げなくなっている。日本の場合は無担保の比率も多く、競争も激しい上に、オペレーション的に特殊対応が多いためコスト高になっている。日本では日々のトレーディングで資本コストを気にする慣行があまりないが、今後これが大きな問題になってくる可能性がある。

またこうした取引は月末やIMM Dateに集中する傾向もあり、ディーラーにとっては、継続的に流動性を供給し続けるのが課題となっている。流動性の逼迫のみならず、オペレーショナルリスクや決済リスクなども同時に発生してしまうからだ。

取引ニーズが急上昇している中、SA-CCRなどの資本コストが逼迫している現状を見ると、何らかの市場危機が起きた際に、円滑な流動性へのアクセスが制限されてもおかしくない。特にドル調達ニーズの高い日本やアジアの国々にとっては死活問題となり得る。市場動向の変化が為替市場にどのような影響を及ぼすか引き続きモニタリングしていく必要がある。

MVAを加味したトレーディング

SIMMの計算をおさらいしていて思ったのだが、意外と相関の影響が大きい。今回は$10mmのドル金利スワップとJPY1.5bnの円金利スワップの二つだけがあると仮定してIM計算を行ってみた。両方とも同じ年限と仮定してSwapの年限毎にIM金額をプロットしてみる。本来IRSはCCPで清算しなければならないが、ここでは相対としてSIMMの計算を行う。金利は12/18のOISカーブに適宜線形補間を行ってSensitivityを計算した。

結果は上の通りで、リスクウェイトの差があるため、ドル金利スワップのIMは円金利スワップの2倍近くになっており、単独で30年スワップだとドル金利スワップが$1.2mm、円金利スワップが$630kとなっている。両方とも払い(受けでも同じ結果)として一緒のポートフォリオに入れてIM計算をしたのがグレー、オフセットする反対方向の取引として計算したものが黄色である。

30年スワップでみると、同方向なら$1.5mm、オフセットする方向なら$1.1mmとなっている。これは相関係数が0.35になっているからだが、もう少し相関が高くても良いような感覚に陥ってしまう。

ここで注意すべきは、Separateと書いた薄いブルーの線だ。これはドル金利スワップと円金利スワップを異なるカウンターパーティーと取引した場合、つまり同じポートフォリオに入っておらずネッティングができない場合である。30年だとIM合計が$1.8mmに跳ね上がる。

つまり、こうした二つの金利スワップを行うなら、同じカウンターパーティーと行った方がIM的には有利ということだ。SIMMのVarsionが変わる時に相関係数が0.35から増えればさらにその効果が大きくなる。当然取引を集中させてしまうと50億円のIM Thresholdを超えてくるので、ある程度分散したほうが良いが、IM Thresholdを超えているカウンターパーティーが多い場合は、極力取引を集中させた方がIMは少なくなる。これがMVAの計算が複雑になる理由である。また、集中リスクが増えるため、SA-CCRなどの資本が増えたり、大口リミットに抵触する可能性もある。

ただし、IMの最適化に参加している場合は、こうした集中リスクを後で減らし、IMも減らすことができるので、MVAをフルでチャージするのはやりすぎということになる。最適化に参加していないところはNovationや解約をしないとポジションが移せないので、MVAを考慮するのが正しいのだろうが、ここまでの計算を精緻に行うのは進んだシステムがないとかなり困難だろう。またSIMMのVersion変更時にパラメーターの変更があれば、その時にMVAも変わってしまう。

今回は相対を仮定してSIMM計算を行ったが、実際はCCPでクリアされる取引なので、IMの水準や相関の前提はCCPによって異なる。AIでかなりのことができるようになってきたので、こうした各種パラメーターを考慮した上でクリアするCCPや取引相手を選ぶ仕組みなども作れるのかもしれない。

SIMM v2.8を使ったMVAの試算

久しぶりにSIMMの証拠金計算をバージョン2.8の文書を使っておさらいしたい(何もツールにアクセスできないので間違っていたらすみません。誤りがあれば指摘願います)。

まずは簡単な10年のドルIRSのSIMMを計算する。ドルはRegular Currencyなので、10年のリスクウェイトは60である。したがって、割引率を無視して10年IRSのDV01を$10,000と仮定すれば$10k*60で$600k、つまり元本の6%となる。

グローバル大手行の社内ファンディングコストは1%~2%を使うところが多いため、単純化のため1%と仮定すると、このスワップにかかる担保コストは6bp runningとなる。大手ではこれをMVAとして日々計算しているところが多いものと思われる。

年間6bpのコストがかかるということは、6bprはb/oに入れないと赤字ということだ。ファンディングコストがトレーディングデスクにチャージされるところが多くなっているため、最低限このコストをプライスインしなければならない。ただし、既存のポジションとオフセットすることによりIMが減るケースもあるので、本来はポートフォリオベースで考えなければならない。

ディスカウントを無視するのは正確ではないと言われそうなので、4%のフラットカーブを使って再計算すると、デュレーションが7.6年程度になるため、担保コストは6bprから4.6bprに減る。

では円金利スワップの場合はどうだろうか。計算方法は同じだが、円は低ボラティリティ通貨に分類されているため、リスクウェイトが29とUSDの半分程度になっている。同じくファンディングコスト1%でマージンコストを計算すると2.9bprとなる。円の場合のディスカウントレートは以下のTONAを前提として計算した。
1年 1.0%
5年 1.5%
10年 1.8%
20年 2.5%
30年 3.0%

それではここまでの計算をグラフに示してみる。概ねSIMMのリスクウェイトとデュレーションをかけたものに近い形となっている。ドルの方が2倍近くコストが大きいのは円がLow Volatility通貨に分類されているからである。つまり、円の金利変動が激しくなり、ドルやその他の通貨と同じようにRegular Currencyに分類されれば、IMコストが倍近くに跳ね上がることになる。

ここまで計算してみて、次にポートフォリオ効果が気になったので、以下のような方向がオフセットするUSDとJPYの金利スワップ取引があった場合にマージンコストがどうなるか計算してみた。

10 year JPY1.5bn IRS, pay fix
10 year USD10mm IRS, rec fix

為替は1ドル150円として計算した。

先ほどと同じ金利カーブを使うと、それぞれのスワップのDV01はドルが$8.1k、円が$9.1kとなり、MVAはUSD IRSが4.85bpr、JPY IRSが2.64bprとなった。固定受けと払いでオフセットがあるので、IMはこの合計ではなく、相関係数0.35で相殺効果が得られ、4.63bprとなる。これを各年限毎に計算してプロットすると以下のようになる。グレーの線がUSD IRSとJPY IRSを同時に取引した場合のIMである。

思ったより大きな減少ではないものの、USD IRSだけを取引した時に比べ、反対方向のJPY IRSを一緒に取引したほうがIMが少なくなっている。まあ相関が0.35なのでこの程度なのかもしれない。

次に2年10年のようなカーブ取引を考えてみる。SIMMのバケットは2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年、5年、10年、15年、20年、30年となっている。6年とか7年のように定義されていない年限のものについては、SA-CCRの資本計算のようのオフセットできるかというとそういう訳ではなく、何らかの方法で補間して計算する必要がありそうだ。

では20年固定払いドル金利スワップと、25年固定受けドル金利スワップをそれぞれ取引した場合と、パッケージで取引した場合のIMを比較すると、以下のように単独では非常に大きかった担保コストがパッケージにすることによりかなり安くなっている。他通貨のオフセットに比べると削減幅が大きい。

20年ドル固定金利払いスワップ単体 8.9bpr
25年ドル固定受け金利スワップ単体 10.8bpr
上記20年と25年のスワップを同時に行った場合 2bpr

ここで清算取引と比べたらどうなのだろうと思ったので、開示のあるJSCCのデータと比較してみる。清算取引はMPORが短くなるが、プロシクリカリティを避けるためにIMが下がりすぎないようにしていたり、極端な市場変動シナリオを加えている。したがって、SIMMよりIMの所要額が大きくなることもある。ただし、CCPの場合はネッティングが行われる可能性が高くなるので、一般的にここで示すイメージよりはIMコストは低くなるはずである。

今回は個人的にざっと計算しただけだが、本来トレーダーはこうしたファンディングコストについて、イメージを持った上でプライシングしているのだろう。おそらく社内システムを使って精緻に計算すれば、どのカウンターパーティーならいくら上乗せするかといったことが瞬時に判断できるようなツールを作ることはそう難しくないものと思われる。

Fourth-trigger CDSが一般的になってきた

グロバール大手銀行ではこれまでも普通に使われてきたForth Trigger CDSであるが、ここへ来てすそ野が広がってきているようだ。Risk.netで紹介されていた記事でも、少なくとも10社以上が既に取引をしており、大手行はほぼすべてこれを利用していると報じられている。米系銀行では特に珍しいものではなかったが、これが欧州系にも広がるとともに、売り手にも拡がりがみられる。

日本においても、CDSの取引されていない企業のCVAリスクをヘッジするため、邦銀やファンドなどからCDSを買うといった動きは20年近く前からあった。信用力の高くないヘッジファンドからProtectionを買うというのは不思議に思われるかもしれないが、担保で保全することにより、CVAを減らし、資本コストを下げることが可能である。

このRorth Trigger CDSは、通常のCDSのクレジットイベント(CE)である倒産、支払い不履行、リストラクチャリングの3CEに加えて、ISDAのデフォルトをCEに入れるものである。

以前からあった問題としては、業界標準契約が確立していないため、交渉に時間がかかるというものがあるが、それでも実際に契約を作ってみると既存のCDSのテンプレートに若干の変更を施すだけなので、意外と時間がかからないことが多い。しかし、海外ヘッジファンドなどで細かいところに突っ込みだすと合意ができないということも往々にしてある。本来であれば業界標準テンプレートがあれば望ましいのだが、これまではそこまでのニーズがなかった。

しかし、徐々にこうした取引が一般的になってきたのであれば、何らかの標準化を考えても良いかもしれない。そして将来的には資本や証拠金の最適化のように、第三者がCVAリスクの最適化アルゴリズムなどを提供できるようになるかもしれない。

そしてその第三者が何らかの手法によりクレジットスプレッドデータを提供できれば、CVAを日々時価評価することもできる。資本計算上このヘッジを考慮することもこうした透明性の高いデータがあった方がやりやすい。

CVA慣行の拡がりとFourth Trigger CDSなどのヘッジツールの拡大の動きからすると、今後信用リスク移転も活発になっていくかもしれない。これまでの最適化は大手銀行間でリスクを融通しあうのが精一杯だったが、保険会社やヘッジファンドなども含めて最適化ができるようになれば、信用リスクの集中によって市場混乱が起きる可能性が低くなるものと思われる。引き続き市場の動向に注目したい。

適応型プライシングが変える為替トレーディングが

為替取引の適応型プライシングが話題になることが多くなってきたので少し前のペーパーになるが、バーゼルの為替執行アルゴリズムと市場機能についての内容をおさらいしておく。昨今では為替取引のかなりの部分が何らかの市場執行アルゴリズムに基づいて行われるようになってきた。

電子取引においては、市場のニュースや変動などを的確にとらえてプライシングを自動的に変更する仕組みは既に一般的になったが、どの顧客フローが最も価値があるかなども瞬時に把握できるような仕組みが揃いつつある。2010年頃から使われ始め、このバーゼルのペーパーが出された5年前の2020年には、市場取引の約1~2割がアルゴ取引に基づくものとされている。

BISの2022年時点のデータでは、スポットFXの75%がアルゴ取引だとされている。これは銀行間や大手機関投資家間の取引に関するものと思われるので、バイサイドや小口投資家の取引は含まれていないだろうが、それでもアルゴ取引のシェアは半分を超えているだろうし、2025年の現在では7割近くになっていたとしてもおかしくない。

初期のアルゴ取引は、単に大規模注文を分割して執行するという簡単なものが中心だったが、最近ではAdaptive Pricdingと言われる、市場の変化に応じて戦略を変える適応型のアルゴが増えてきている。ディーラーサイドでは、外部にプライスを取りに行く前に、他の顧客フローとぶつけてInternalizeすることによって執行コストを削減することができるため、為替トレーディングにおいてはなくてはならないものとなっている。

バーゼルのペーパーでも指摘されている通り、これらの取引は取引所やブローカーを経由せずに行われ、統計データに反映されないものも存在するため、実際の取引の全体像を見えにくくしている。しかし、流動性が迅速に提供されている限り、市場機能が損なわれている訳ではないので、特に問題視はされていない。一方で、取引前、リアルタイムのデータ、TCAなどのポストトレード分析能力がない銀行は、市場から取り残される危険性が指摘されている。

コロナショック時は特に適応型プライシングを中心としたアルゴ取引は非常にうまく機能し、通常の相対取引に比べて良好な執行実績を示した。ただし、こうしたアルゴが一斉に動くことにより、プロシクリカリティ的な動きを誘発し、市場混乱につながる危険性も指摘されている。

特に最近は経済指標が為替マーケットを動かすというよりは、トランプのTweetが市場に与える影響の方が格段に大きい。こうしたTweetが出た瞬間にアルゴが適応できなければ、大きな損失を被ってしまう。市場のVolatilityがすっかり変わってしまったにもかかわらず、いつも通りのQuoteを出し続ければ、ヘッジファンドの標的になってしまう。これを避けるには、何かニュースが出たらQuoteを止めたり、Bid-offerをワイドにしたりすれば良いのだろうが、そういった銀行は為替市場のプロのマーケットメーカーとは呼べないだろう。

今では多くの大手銀がSNSのコメントなどにも対応できるよう工夫をしており、瞬時にプライシングを変化させるようになっている。為替市場で収益を上げるためには、もはやトレーダーの良しあしというよりは、こうしたアルゴの質による勝負になっているところもある。特に最近は、G10のリニアなリスクを担当するトレーダーで、数十年前のように大きく儲けられるトレーダーはあまり見たことない。

今年4月のトランプ「解放の日」の後などはボラティリティが5倍とか6倍に上がり、執行コストも数倍に跳ね上がった。大手銀行は何とかマーケットメークを続けるべく市場に流動性を供給し続けたが、そこでうまく乗り切れたところもあっただろうが、適切なプライシングができず損失を被ってしまったところもあったものと思われる。

特に方向性が偏りがちなアジアの銀行やバイサイドの中にはうまく流動性にアクセスできなかったところもあったかもしれない。ディーラーのマーケットメーク能力が下がってきている昨今の市場環境においては、いつでも流動性にアクセスできることの重要性が以前にもまして高まっている。

2027年10月に英国がT+1決済を義務化

先週英国当局から決済期間短縮化の法制化に向けた政令のドラフト市中協議文書が公表された。

約10年前の2014年から英国やEUではほとんどの証券がT+2(取引日から2営業日以内)決済となっているが、グローバルで起きている決算期間短縮の動きを受け、約2年後を目途に短縮化を義務付ける方向だ。カウンターパーティーリスクの削減のみならず、処理の効率化や自動化の促進も同時に謳われているのが重要だ。T+1でも人海戦術は使えるだろうが、当然将来的なT+0へのシフトを前提としているだろうから、システム的に自動化ができるようにしておく必要がある。

T+1といってもそれより短いT+0での決済を妨げるものではないため、正しくはT+1以内の決済義務付けと言ってよいかもしれない。英国の証券決済システムであるCRESTが既にT+0決済をサポートしている。様々な議論があったのだろうが、今回の政令ドラフトにおいては、T+0を義務付けるのは時期尚早と判断されたようだ。

レポや株券貸借のようなSFT(証券ファイナンス取引)については、T+1要件が免除されるという条項が加わっており、企業の流動性管理や資金調達要件を柔軟にサポートすることが重要と述べられている。

コメント期限は来年の2月27日までとなっており、最終案は議会での審議と承認手続きを経て2027年10月11日より前に提出され、施行されることになっている。

今年は年末の市場混乱は起きるか

11月最終週に入り、年末の流動性が気になる時期になってきた。昨年は米銀の株価上昇がG-SIBスコアの上昇を招いたことから、米銀中心に各種取引を控える動きが出て、流動性が逼迫した。今年も年初に比べると米銀の株価は2-4割程度上昇しており、デリバティブの取引量も増えているため、ある程度の影響が予想される。

ただ、昨年閾値ぎりぎりのところで削減努力をしていたのに比べると、ある程度スコアの上昇が予想されていたため、既に上のバケットへの資本増を覚悟しているところもあると思われるので、昨年のようにパニック的に取引を抑える動きにはならないかもしれない。

それでも米国のレポレートは高い水準で推移しており、Fedのターゲットの上限を超えることも多くなっている。10月末などは、GCレートが4.25%まで急上昇し、銀行がバランスシート削減を進めていると噂された。こうなると一部日本のドル円通貨スワップにも影響が出てくることが多いので、注意が必要である。

今年は特にヘッジファンドが米国債の現物と先物のベーシス取引を行う際のレポファンディングが増えているのが、この流動性逼迫に拍車をかけているようだ。前回流動性逼迫が起きた2019年の倍以上のレポ取引が行われているとも報じられている。当然これには、ある程度米国財務省の国債発行と政府閉鎖が関係している。米国の財政悪化による国債発行増も影響する。財政赤字が$1.8tnとのことだから、毎月$100bn超の国債が市場に流れ込んでくる計算になる。

レポが逼迫すると、株式やその他資産の解消を引き起こしマーケットを混乱させることがあるので、注意が必要である。政府の緊急レポスキームを使えば良いのだろうが、銀行としては、あまり取りたくない手段の一つとなってしまっている。引き続き米国短期市場には注目していきたい。

Axeの取引市場が立ち上がった

トレーディングにおいてはAxeという用語が頻繁に使われる。例えばトレーダーがある社債を保有していて、それを何とか売りたいときは、マーケットに出てプライスを動かすのではなく、二社間などで探りを入れて買いたい人がいないか探すことになる。特にあまり流動性のない社債などを持っていた場合には、それを広く知らしめてしまうと、価格が下がってしまうため、プライベートで買い手を探しに行くことが多い。

これは何も社債だけではなく、一定の回号の国債、Out of the moneyのオプション、特定の年限のCDSなど様々な商品についても幅広く使われる。では、このAxe情報を取引所のようなところで集約して、売りと買いがマッチした場合に取引をプライベートに成立させることができれば、情報がマーケットに広まることなく、Axe同士をぶつけて取引を成立させることができるのではないか。

アイデアとしては非常に単純だが、これまでこうしたマーケットは存在していなかった。しかし、今般FX Optionについて、これが遂に実現したというニュースが出ている。

これを使えば、これまでであればなかなか減らせなかったポジションを、Bid-Offerなどの取引コストを払うことなく絶え間なく削減し、流動性がないためにかかっていた資本コストやバランスシートコストを削減することができる。

日本でもVolatility Surfaceの右下などの長期のSwaptionなどで、なかなか解消できず残ってしまっている取引が多いと思うが、こうした取引にも拡大できれば、市場の安定性向上に資するものと思われる。将来的には、流動性に難のある社債や物価連動国債、一定の回号の国債、ColVA、XVA、クロスガンマリスクなども減らすことが可能かもしれない。

SIMMのVersion 2.8が12月6日から適用

もうすっかりおなじみとなったISDAのSIMMのバージョン変更が12月に行われる。全般的に大きな違いは見られないが、JPYについてフォーカスを当ててみる。

全般的に円金利のRW(リスクウェイト)は上昇しているが、テナーごとにかなりのばらつきがある。特に1-3年などの中短期、10年-15年あたりの長期の上昇が比較的大きい。

テナー V2.7 RWV2.8 RW変化量変化率
2w15150変化なし
1m2118-3減少
3m1012+2増加
6m1011+1増加
1y1115+4増加
2y1521+6増加
3y1823+5増加
5y2325+2増加
10y2529+4増加
15y2327+4増加
20y2326+3増加
30y2528+3増加

銀行が多く取引をするテナーだろうから、若干のSIMMインパクトがあるかもしれない。ただし、JPYのリスク集中のThresholdが150bpから230bpへと大幅に引き上げられているので、こちらはIMを減少させる方向に働く。またボラティリティについてもHistorical Volatility Ratioが0.69から0.74へと若干上昇しており、他通関との相関も30%から35%へと増加している。

以上を総合すると、おそらくJPYについてのSIMMは若干の上昇が見込まれるが、取引をするテナー、集中度合、他通貨との相関などの条件によっては減るところも出るかもしれない。いずれにしてもマーケットに与えるインパクトは少なそうだ。

次に為替についてみていくと、集中Thresholdが2000mm/%から3100mm/%へと大幅増加しているため、IMを減らす方向に働く一方、ボラティリティについては0.62から0.68へと増加しており、IM増加方向に働く。

集中リスクのThresholdが金利も為替も増加しているため、偏ったポジションをもつ本邦市場参加者にとっては若干朗報なのかもしれない。しかし、通貨によるカテゴリ変更もなかったため、為替も金利同様インパクトは限定的だろう。

ストレス時にも銀行は資本管理を行うことが可能

バーゼルから、「ストレス期における銀の資本及びバランスシート管理」についてのワーキングペーパーが出ており、金融庁のホームページでも紹介されている。銀行の資本管理のモデル化を試みたものなので、若干難解な文書ではあるが、結論はいたってシンプルである。

銀行は平時およびストレス時において、能動的に資本計画、資本管理を行っていることが実証され、資本比率は急速に向上させることはできないという従来の仮説に異論を唱えている。銀行は、ストレス時であっても資本増加、利益留保、資産売却、リスクウェイトの最適化、不良債権の削減などの手段を通じて資本を能動的に調整できるとしている。

銀行が短期間で資本水準を調整できなという従来の仮説も明確に否定されている。特に資本制約が大きい銀行ほど、様々なツールを使って能動的に資本調整を行っていることも証明されている。

考えてみれば明らかなのだが、昨年末のように銀行のGSIBスコアが急上昇した時は、一部の取引を止めて、ひたすらコンプレッション、資本最適化や資産圧縮を進める銀行が多かった。GSIBスコア以外でもレバレッジ比率やNSFRが基準以下に下がりそうなときは、大銀行は平気で取引を圧縮しにかかる。この辺りは欧米の銀行の方がドラスティックに動く傾向があるが、重要顧客であったとしても何とか説得して取引削減を推し進める。

顧客関係を重視するアジアでは、表立って取引を減らすとは言えないので、プライスを悪化させて取引がつかないように調整するところが多い。相手に気づかれないように行っているだけで、アジアの顧客だけを優先して取引することもできないため、結局はグローバルと同じことをやっていることになる。

このペーパーでも、こうした慣行が確認されたといってよいだろう。そして、監督当局としても、銀行がある程度の柔軟性をもって資本不足に対応できるという前提で銀行監督を行っていくべきだという主張にも読める。そして、高い成長率を維持している銀行は、資本管理をより頻繁かつより大規模に行う傾向があるとされている。

つまり、こうした資本管理ツールを数多く揃え、ストレス時には適切に行動することが重要ということだ。日本でもROE経営が叫ばれるようになったので、こうした資本管理の重要性はますます高まっていくことだろう。

アジアにおける為替の一方向性がリスクに

レバレッジ比率規制などによって国債やレポ取引の流動性悪化がみられたが、SA-CCRやアルケゴス移行のカウンターパーティーリスク管理の強化により為替やその他のマーケットにも影響がみられつつある。

SA-CCRの影響は今に始まったことではなく、最も市場を騒がせたのは米系が新方式に移行した2022年の初めである。従来のCEMでは1年未満の為替取引などには資本コストがほとんどかからなかったものが、SA-CCRに移行した途端に資本コストがかかるようになり、短期の為替取引のBid-Offerが拡大した。

このころから為替の資本コストが意識されるようになり、市場変動が起きた時、四半期末などに市場が逼迫し、為替の流動性にアクセスできない市場参加者が出てきた。とはいっても、平常時には競争上のプレッシャーから、ディーラーサイドもあまりBid-Offerをチャージする訳にもいかず、為替が低収益性ビジネスとして苦境に陥るようになった。だが、引き続き為替取引に対する顧客ニーズは強く、取引量自体も増え続けている。

その中で生まれてきたのが顧客のティアリングである。海外大手銀行は、為替取引だけでなく、全体としての取引収益を考え、重要顧客に対しては、為替で損をしたとしても顧客関係全体から収益が上がっていれば、為替取引やレポ取引などをサポートし続けるというモデルに代わり、最近のRisk.netの記事でもこの慣行が報じられている。

こうなってくると、為替取引が一方向に偏りがちなアジアの市場参加者への影響が大きくなる。おそらく大手ディーラーは、ディアリングを開示することはなく、営業担当はいつも最良のプライスが出せるよう努力をするので、あまりこの変化を感じられないかもしれない。これが表面化するのは、やはり市場急変時や四半期末などの銀行のバランスシート、資本コスト削減が意識される時になる。

最近サブプライムオートローンに端を発するクレジット市場における破綻が起きているが、リーマンショックとまではいかなくとも、何らかのショックが起きた時にアジアの市場参加者がドル調達に窮することになるかもしれない。ヘッジファンドなどは、あまり為替のポジションを一方向に偏らせたりしないうえ、解約の頻度も高いため、枠が一杯になるということが少なく、たとえ一杯になったとしてもすぐにポジションを動かせる。しかしアジアの銀行や生保などは、米国債やモーゲージ、米株への投資を行う際にドル調達が必要になり、それを通貨スワップやフォワードでファンディングしているため、いざというときにファンディングがロールできず、資産売却に追い込まれる可能性が懸念される。

特に台湾の生保などは巨額の米国資産への投資を行っており、ヘッジ比率も高い。決算期末のヘッジ調整により台湾ドルのフォワードポイントが極端に動くことも多い。韓国でも保険会社や年金、銀行のドル調達取引は多くこれも主に1年未満の為替取引でファンディングしている。オーストラリアはSuper fund (Superannuation)が活発に為替ヘッジを行うようになっている。香港やシンガポールではソブリンウェルスファンドやアセマネのドル調達ニーズがある。当然日本で銀行や生保のドル調達ニーズが高いのは言うまでもない。

これらのドル調達ニーズに応えるためには、欧米銀がアジアの市場参加者にドルを提供することが多いが、これはWWRを持つ誤方向取引になる。欧米銀がスポットでドルを貸してフォワードでドルを返してもらうので、現地通貨安になったときに現地の市場参加者に対するエクスポージャーが増えてしまう。したがって、ここにWWRのリミットや信用リミットを設けるのが普通で、ストレステストなどを組み合わせて制限をかけているはずである。この傾向はアルケゴス以降顕著になっている。

こうした環境の中では、既に当局が警鐘を鳴らしているように、危機時におけるドル調達能力を確保し、普段からこのリスクが高まりすぎないように、ポートフォリオを管理していく必要がある。マーケットが何となくきな臭くなってきた今、特にこうした準備が求められる。

デジタルアセットはデリバティブの担保になるか

ドル離れが懸念される中、トランプ政権がデジタル時代において米ドルの優位性を確立し、強化するための手段として、米ドルに裏付けられたステーブルコインを位置づけている。関税ショックによってドルを敬遠する動きがみられるかもという話があったが、現実的にはドルの地位は揺らいでおらず、代替となるのはステーブルコインくらいかと思っていたのだが、そこに対しても米国は早くから目をつけている。米国政権は、ホワイトハウスが出したレポートの中で、アメリカのクリプト黄金時代を到来させ、世界のクリプトの中心地としてアメリカが君臨することを目標としている。

この機を捉えて、CFTCのファム委員長代行は、9月23日に、デリバティブ市場におけるステーブルコインを含むトークン化された担保の利用に関するイニシアチブを正式に立ち上げた。これは、GMACのデジタル資産市場小委員会が昨年に発表した非現金担保の利用拡大に関する提言に基づくものである。ファム氏は、担保利用こそステーブルコインのKiller Appだと断言している。若干強引ではあるが、こうなると突然トランプ大統領の壮大な未来像がデリバティブの担保利用の話につながってくる。

確かに流動性とコスト効率の向上が期待できるステーブルコイン(USDCなど)を担保として使用すれば、担保授受が瞬時にそして用意に行われることになり、MPORの短縮を通じて資本コストの削減にまでつながるかもしれない。

ISDAも、トークン化が担保管理の適時性と効率性に大きな改善をもたらし、市場参加者により大きな選択肢と柔軟性を提供するとコメントしている。例えば、これまで担保利用が難しかったMMFをトークン化すれば、現金化して担保に出すというプロセスを経ることなく、ファンドのシェアを直接担保提供できるようになる。これは各種資産に投資している年金やファンドにとってはGame Changerになることは間違いない。決済が難しかったゴールドなどもトークン化することによって担保利用が可能になる。

米国ではいわゆるGENIUS法によって法的枠組みの整備を進めており、証拠金規制の担保としても利用できるように議論が続けられている。ISDAにおいても、CDMなどのイニシアティブを進めて、明確で一貫性のある法的および規制の枠組みを確立する方向で議論が続けられているようだ。

こうなってくると、おそらくCFTCはDCOに対してもデジタル資産担保受け入れに向けたガイダンスを出してくるのではないだろうか。そしてCCPやカストディアンがこれを後押しすることにより、思ったより近い将来にこれが実現する可能性もある。

やはりこういった動きについては米国が早い。日本では金融業界でもあまり話題にならないが、JSCCではDRR/CDMを使った規制報告などの高度化に取り組んでいる。可能であればデリバティブの分野においても日本主導で業界の進歩につながるような変革が起きてくれると良いのだが。

英国ではレバレッジ比率規制緩和はなさそう?

米国を中心に、レバレッジ比率規制の分母から自国の国債を除くという規制緩和が叫ばれているが、英国当局からこれを明確に反対するコメントが一昨日出された。英国中銀のSam Woodsは、こんなことをするのは、防寒用のジャケットや帽子、手袋を全て崖の下に捨てるようなものだと痛切に批判している。

英国の最低レバレッジ比率は3.25%で、米国のSLRほどではないものの、バーゼルの3%よりは少し高くなっている。もちろん計算方法は各国微妙に異なるので単純比較はできないが、米国が様々な緩和を進めている中、英国の厳しいスタンスが続けば、競争上のインパクトがじわじわと出てくる可能性がある。

とはいえ、言っていることは一理あり、シリコンバレーバンクなどに代表される米国中堅地銀の破綻は、米国債の金利リスクを持ちすぎたことから発生している。もちろん、満期保有目的の債券は売却さえしなければ損失は確定しないのだが、何らかの理由により売却を余儀なくされると一気に損失が膨らみ銀行が破綻の危機にさらされる。

現場の議論でもよくあることなのだが、CLOなどちょっとよくわからないものへの投資と、米国債への投資を比べると、誰もが米国債の方が安心と思ってしまう。そもそもクレジットリスクと金利リスクは違うのだが、特にローン中心の銀行においては、国債投資をリスクと見ないトップマネジメントがいるのも事実である。証券会社のトレーダーであれば、数億円程度のpv01を持つというのがどれだけRiskyなのかすぐにわかるのだろうが、ローンオフィサーが長かった経営トップなどは、10年債を数千億円保有するといっても、まあ何とかなるだろうと思ってしまう人もいる。

ただ、レバレッジ比率の問題は、これが国債であってもジャンク債であっても同じとして扱われてしまうところだ。英国当局の懸念も理解できるが、本来こうしたリスクは信用力に応じて判断すべきであり、レバレッジ比率という単純化された指標で金利リスクを管理しようとするのには若干無理がある。特に米国外ではIRRBBがあるのだから、ある程度の金利リスクはそちらで管理可能である。

誰もが正しいことは言っているのだが、すべてがグローバルにつながる金融においては、やはり統一されたルールというものがあった方が競争上の公平性を担保できるのだろう。とはいえ、最近はそれがますます難しくなっているので、ISDAやFIA、SIFMAなどの業界団体の重要性は高まってくるのだろう。

CVA RWAに対する各国当局の扱いが異なってきた

Basel III endgameという言葉が注目されて随分経ったが、米国では、業界からの反発やトランプ政権の発足もあり、徐々に緩和方向への動きがみられている。特に米国では、当局がデリバティブポートフォリオについて注目をするというのもあり、全体としてのRWAが小さかったとしても、細かい項目についてかなりの精査が必要になり、活発に資本コントロールが行わている。

日本の場合は、ローンによるRWAが大部分を占め、デリバティブRWAが相対的に小さいという理由から、あまりデリバティブRWAにフォーカスが当たらないが、JPMやバンカメのレポートを見ると、ローンRWAの占める割合は日本とそう変わらない。だが、最近では、日本でも大手中心にROEを経営目標とする風潮が強くなり、資本コストに対する意識が変わってきた。グローバルマーケットで、海外大手銀行と競争していくためには、他国の規制にも注意を払っておく必要がある。

カウンターパーティーリスクに関しては、大手はSA-CVA、小規模行はBA-CVAというのが一般的になりつつあるが、CVAヘッジを適切に行うところは、金利スワップのヘッジ効果が認められるSA-CVAのメリットが圧倒的に大きい。特に米国では、BA-CVAのエクスポージャー計算にSA-CCRのみが利用可能となっており、内部モデルが使えないことから、大手は必然的にSA-CVAを選択することになる。

また、欧州ではCCPでの清算取引がCVA RWAから免除されるが、米国では対顧客ポジションがカウントされる。つまり、米国では、顧客-銀行-CCPという取引の場合に、銀行-CCPのレグにはCVA RWAは必要ないが、顧客-銀行のレグにCVA RWAがかかってきてしまう。大手銀行はクライアントクリアリングにおいて顧客のために清算をする場合、会計CVAを計上しておらず、通常CVAチャージもかけない。このCVAにかかる資本コストも明示的にはチャージしていないところが多いものと思われる。

米銀大手は、CVAを計上すると、会計上の損益がブレるのを防ぐため、それをCDS、金利、為替、コモディティなどの原資産でヘッジしているが、これが規制上のCVAの計算とは全く異なってしまっているのである。若干の差が生じるのはやむを得ないが、規制CVAと会計CVAがある程度一致していないと、ヘッジのインセンティブが損なわれ、経済的な潜在損失が大きくなってしまう。

また、先日紹介したISDA、SIFMA等のレターにもあるようにSTMとCTMのネッティングも業界にとっては大きな問題だ。米国では、清算取引については、STMのものをCTMとして扱い他のポートフォリオとネットすることが可能だが、相対取引にこれは認められていない。特にSTMについては、リーマンショック後の各種規制が施行された後に導入された概念なので、各国の規制において多くの不整合が生じている。本来であれば、STMの登場に従い各種法律を書き換えるべきなのだが、内容がテクニカルなので、大きな話題になりにくいのだろう。

実はここの微妙な差でプライシングに差がついており、取引流動性が偏るケースも増えてきているため、各国の規制の方向性を揃えておく努力は必要であり、日本のようにまじめな国が損しないように目を光らせておく必要がある。

バーゼルのCentral Bank Survey 2025‐金利編

BISのTriennial Central Bank Surveyの金利系商品についての統計を見ている。まずは全体像から。金利商品は2019年のFRAの急増がアノマリーとなっているが、それを除けば順調に右肩辺りで成長しており、特にここ3年の伸びが著しく、トータルで3年前対比約60%増となっている。2019年のFRAはよく覚えていないのだが、まだ4月だとコロナ前なので、3月のFOMCで利上げ収束観測が出てFRA-OISスプレッドがタイトになった時期だろうか。

為替と異なるのは通貨ごとの取引量である。昨今ではUSDではなくEURの金利商品が最大の取引量となっている。特にこの3年でEURは約2倍に増えている。さらに顕著なのが日本円で、なんと7.8倍へと急増し、AUDを抜いて第四位となった。他のCCPのデータなどを見ても同じような伸びが確認できる。GBPを抜いて三位になるかもという期待もあったが、意外とGBPも健闘しており、約3倍と取引量が増えている。

取引主体別でみると、圧倒的にその他金融の割合が大きく、市場全体の75%を超えている。金利スワップに関しては、既に銀行中心の取引から、マーケットメーカーやヘッジファンド、バイサイドへと主役が移っている。

取引地域についてみてみると、圧倒的に英国が強い。やはりBrexit後も金利に関してはロンドンの地位が強い。日本も3.5倍になっているが、かなり小さく、オーストラリアやシンガポールにも及ばない。ドイツが地味に2.4倍に伸ばしているのも注目だ。

YCCの下で日本円金利トレーディングは終焉を迎えたという声も多かったが、政策変更によりようやく日本円本来の姿に戻ってきた。海外からは開かれていないというイメージが付きまとっているが、資産運用立国を目指す金融庁の後押しもあり、注目度が高まり、日本への旬出も少しずつ増えてきた。他国の状況を見ていても、やはりこうした市場づくりには国としての後押しが欠かせないのだろう。

バーゼルのCentral Bank Survey 2025‐為替編

3年ごとに公表されるBaselのTriennial Central Bank Surveyが出ているので、今回も簡単にまとめてみたい。まずは、為替取引から見てみる。このデータは4月の一日平均の取引量を調べたものだが、4月というとTrump Liberation dayのあった月である。したがって、通常より取引が多かった可能性もあるので、少し割り引いてみる必要があるかもしれない。

まずは全体の取引量を見てみると、以下のようにSpot、Fowardを中心に3年前の約30%増になっている。中でもForward、通貨スワップが伸びており、伸び率でみるとOptionその他も倍以上になっている。一方、FX Swapがほぼ横ばいなのも興味深い。

取引主体別にみるとその他金融との取引が最も伸びているが、ここはヘッジファンドや銀行以外のマーケットメーカーが中心だろう。

次に通貨スワップにフォーカスしてみると、約40%の伸びで、その他金融の伸びが大きい。また、実額は小さいものの、非金融も3倍近くに伸びている。債券発行や実需ヘッジなど、事業会社のフローも増加していたのかもしれない。

通貨ごとの取引量を見ていると、ドルが依然として強く、その傾向はむしろ強まっているように見える。円は第三位の地位を保っているが、中国元やスイスフランの伸びが大きくなっている。

取引される通貨ペアを調べてみると、USDJPYはUSDEURに次ぐ第二位のペアとなっているが、驚くことに第三位がUSDCNYになっている。USDGBPなどを一気に追い越した形だ。

取引執行を地域別にみると、以前英国が強く、全体の38%で首位、次に米国が19%で続く。そのあとはシンガポールと香港で、二つ合わせると米国とほぼ同じ水準になっている。為替市場に関しては、英国、米国、香港+シンガポールという3極になっており、日本の割合は3.5%にとどまっている。香港は頭打ちになっているが、シンガポールの躍進が進んでいる。

トランプ関税ショックの影響もあるだろうが、為替の取引量が順調に伸びていることが確認できる。ここからは特にドル離れは見て取れない。景気減速にも関わらず中国のプレゼンスは引き続き上がってきている。市場という意味ではアジアはシンガポールが為替の拠点としてはメインになってきているように見える。取引主体も銀行からその他のプレーヤーへの分散がみられる。

清算取引のポーティング

クライアントクリアリングによって清算取引を行っている際にクリアリングブローカー(CCSP: Client Clearing Service Provider)が破綻すると、通常は他のブローカーにポジションと担保を移管するポーティングが行われる。というよりは、ポーティングが行われるという前提でクライアントクリアリングの仕組みが作られている。

以前からここでも主張しているように、大手金融機関がデフォルトしているような状況で、大きなポジションを数時間から2日以内といった時間軸で移管するのはかなり困難な作業になる。米国では、2021年の破産法改正により、顧客ポジションと担保を清算するよりも、ポーティングが政策的に優先されたため、ポーティングの重要性はますます高まっている。

今回ISDAからポーティングに関するペーパーが公表されているが、こうした暗黙の前提に警鐘を鳴らし、普段から準備を進めておくことの重要性が強調されている。特にポジションが大きい場合は、他のブローカーに移管の依頼をしても、KYC、AML、リスクリミット、資本コストなどを総合的に精査する時間が必要で、普段から準備をしていない限りこれが数時間でできると思う人はまずいないだろう。ここで時間がかかってしまうと各CCPが決めた期限に間に合わず、ポジションがオークションにかけられてしまう。

大手であれば、若干コストがかかるものの、バックアップブローカーを決めておき、このポータビリティを確保しているところが多いだろう。またCCPによっては、バックアップブローカーがいる場合には所要当初証拠金を下げるところもある。IOSCOガイドライン(e.g. PFMI – Principal 14)などもあるので、ポーティングのFire Drillを定期的に実施して、備えを万全にしようという動きも一般的になってきた。

いずれにしても、最低でも担保がどのような形式で分別管理されているかを理解し、プランを作っておく必要性がこのレポートでは強調されている。例えば、担保の分別方法に関してはISA、Gross OSA、Net OSA、Custodial Seg、LSOCなどのストラクチャーが存在し、これによって、ポーティングのプランが異なってくる。

Net OSA(ネットオムニバス口座)

OSAはOmnibus Segregated Accountの略で、複数の顧客のポジションと担保をまとめて管理しつつ、清算メンバーの自己資産とは区分して保持する口座形態である。Netなので、複数顧客のポジションを合算してネット計算する。ネットされているため、CCSPのデフォルト後のポーティングの難易度は高い。理由としては、

①口座内の個々のクライアントが異なるCCSPへの移管を希望する場合の調整の難しさ、
②口座内の全当事者の同意が必要となる場合があること、
③CCPが最終的なクライアントを特定できない
などが挙げられている。

     この構造では、顧客から預かったグロス証拠金とCCPに差し入れるネット証拠金の差額(超過証拠金)がCCSPの口座に残るため、担保の移管も複雑になる。

Gross OSA(グロス・オムニバス口座 )

一部のCCPでは、顧客ポジションと担保が他の顧客分と分別されるため、CCSPが見つかればポーティングは容易になる。主に米国では、上場先物、スワップともに、すべての顧客ポジションと担保がこの形式でCCSPに保管される。

ISA(Individually Segregated Account)

顧客ポジションと担保が法的に完全に分離されるため、ポーティングが最も容易。この口座では、担保はデフォルトしたCCSPではなくCCPに保管されているため、ポジションと共に新しいCCSPへ移管しやすい。ただし、一部の法域では、オムニバス口座内の全クライアントの同意が必要となる場合がある。なお、米国LSOCはLegally Segregated Operationally Comingled)なので、ポジションや担保が法的に分別され、担保もCCPに保管されるため、このISAに類似した方法と説明されている。

一方、ポジションがそれほど大きくない市場参加者の場合は、ポーティングをするよりは、清算してしまった方が良いという選択肢もあり、ISDAのレポートでも、そのメリットデメリットを比較して検討すべきとしている。

一方で、欧州では一つのCCPにポジションが集中するリスクについても警鐘が鳴らされており、CCPからCCPへのポーティング?リスクも議論になっている。ESMAのストレステストにおいては、単一または少数のCCPにリスクが偏っている場合の集中リスクをレビューする必要がある。そしてCCPの破綻処理に関するRecovery and Resolutionプランにおいて、CCP自身がシステム的な重要インフラであることを理由に、特定のCCPへの依存がシステミックリスクになる点が懸念されている(Regulation No 2021/23)。

実際リーマンショックのような事態になれば、CCPやCCSPの信用力のレビューを行い、ポジションの縮小や他のCCP、CCSPへの移管を検討するところが増えるだろう。要はどれくらいの時間軸でこれが起きるかが重要である。アルケゴスのような巨額損失や不祥事、サイバーアタックなどが起きた場合には、突如ポジション清算が急増し、プロシクリカリティを招く可能性も否定できない。ポジション移管に失敗し、CCPによる強制的な清算に至った場合、CCPのウォーターフォールに影響が及び、デフォルトしていない他の清算会員にも損失が及ぶ可能性がある。いずれにしても、普段から準備を怠らないことが重要なのだろう。

DRR(Digital Regulatory Reporting: DRR)とは

DRRとは、取引情報などの規制報告の標準化を目指すもので、複雑なデリバティブ取引の報告規則を、コンピューターが直接実行できるオープンソースコードに変換するものである。ISDA主導で導入が進んでいる画期的なプロジェクトなのだが、まだ国内での認知度は必ずしも高いとは言えない。

しかし、ここまで規制や報告要件が複雑化していく現在の環境において、規制を業界レベルで解釈して統一見解を得られたゴールデンソースに基づくコードを自社システムに組み込めるのだから、報告違反で罰金を支払うといったリスクが小さくなる。過去にもデリバティブの取引報告義務違反はBarclays、JPM、DB、BofA、DTCCなどで実際に起きており、罰金額も数十億円に上ることが多い。

通常各金融機関はコンプライアンス担当を置いて、各国の報告規制を細かく解釈し、漏れのないよう対応を行っている。そして、規制に変更があれば、それを直ちに把握して報告システムに変更を加えなければならない。DRRを使えば、このような報告システムのメンテナンスが容易になり、コンプライアンス担当の負荷軽減につながる。

DRRは2022年11月に、CFTCの報告規則変更に先駆けて初めて導入されたが、その後、オーストラリア、EU、日本、シンガポール、英国の改正規則にも対応範囲を広げ、カナダや香港の要件も含まれる予定となっている。これで主要9法域における11の報告規則をサポートすることになり、規制が改正されるたびにコードが修正されていくことになっている。データの一貫性が業界全体で担保されるため、当局サイドにとってもデータの扱いが容易になるといったメリットもある。

CFMやCRIFファイルなどもそうだが、ISDAでは様々なデータの標準化のイニシアティブを主導しており、おかげで、かなりのプロセスが簡素化されている。日本では、Suica、PayPay、楽天Pay、au Pay、ファミペイ、ゆうちょPay、メルペイ、d払いなど、数えきれない支払い方法があり、店舗側もそれに対応するが大変だ。海外ではこんなにたくさんの支払い方法があるところはあまり見たことがない。しかし、金融取引においては、標準化によって得られるコストセーブは計り知れない。その意味でもISDAの行っているデータ標準化は非常に重要な取り組みだと思う。

米国eSLRの緩和案について

以前も書いたように、米国SLRの緩和案が6/25に公表されたが、コメント期限は60日後の8/26だったので、今後のプロセスが気になる。直ちに最終化されて施行されれば、年末の流動性逼迫を避けられる可能性もあるが、通常最終案の公開には数か月かかるため、11月くらいになるのだろうか。そして最終案公開から銀行がシステムやレポート変更をするための準備期間が必要であるため、実際の施行開始は2026年の第一四半期となりそうだ。

今回の案は既存の5%のSLR最低基準を、3%のベースチャージにGSIBのMethod1によるサーチャージの半分を足したものとなる。つまりGSIBサーチャージが2.5%だった場合、3%+2.5%/2で4.25%となり、5%から減ることとなる。これにより、特に証券系2社は、これまでSLRが最大の制約となっていたところが、他行や欧州系と同じようにリスクベースのRWAが最大制約となる。したがって、想定元本よりSACCRのRWAが重視されるようになる。とはいえ、GSIB問題は継続するので、想定元本削減が重要であることには変わりない。

6/25の緩和案には、トレーディング勘定の米国債をSLRの分母から除外するという案についてはどう思うかという質問もあったので、これもダブルで緩和されればかなりのマーケットインパクトになるかもしれない。

こうしたパブコメの流れを見るには業界団体のレターを見れば銀行サイドの意見がわかるので、まずは、ISDA/FIA/SIFMAレターを確認してみる。当然ながら計算方法の変更については強く支持している。今回の変更を歓迎すべき第一歩としつつも、さらなる見直しを認める形となっている。

まずは、クロスプロダクトネッティングの拡大について触れている。デリバティブ、レポ、ストックローンといった異なる商品間のネッティングを認めるべきとの主張だ。そしてSA-CCR拡張版ともいえるExtended SA-CCRを導入し幅広いネッティングを資本計算に考慮することを求めている。当然契約上のクロスプロダクトネッティングができないと元も子もないので、適格クロスプロダクト・マスターネッティング契約(QXPMNA:Qualifying X-Product Master Netting Agreement)下にあるレポ取引等(SFT)をデリバティブとして扱うことで資本賦課を下げるべきとしている。このQXPMNAについてもどこかで書いた気がするが、以前からISDAなどが進めているプロジェクトである。なお、この問題については、ISDA/FIA/SIFMAは別のディスカッションペーパーを7月に出している。

同時にSTMを適用している相対デリバについて、SA-CCRの計算上CTMを選択適用できるようにすべきとしている。現状FCMモデルの清算取引ではすべてがSTM扱いとなるケースが多いが、SA-CCRの計算上はCTM扱いが可能である。しかし、これは相対取引については認められていない。つまりレポ取引などがCTM適用だと、SA-CCR計算上、STMとCTMでネッティングができないという問題が発生してしまうのである。

少しテクニカルな話になるのでここまで今回認められるとは考えにくい。しかし、今後さらなる議論が続いていくものと思われる。SA-CCRは日本でも標準的に使われるようになっているため、米国が先んじて緩和した場合は、日本も劣後しないように注意しなければならない。

金融の進化を促す規制とは

バーゼルIIIの早期適用など、日本は規制については優等生で、欧米が規制導入を頻繁に遅らせる中、常に約束通りの導入を実現してきた。バーゼルが提唱するガイダンス等もきちんと国内で法制化し、欧米当局からの規制の同等性も確保して、市場安定のために率先して規制導入を進めてきている。

米国SEF規制に倣って導入したETPのように、あまり実効性はなくなっているように思えるものもあるが、それでも同等性を確保するために一応のガイダンスは存在している。

そんな中、先進国の中で唯一日本が力を入れてこなかったのが2014年のBasel IOSCOガイダンス、Risk Mitigation Standards for Non-centrally Cleared OTC Derivativesである。当時は、可能な限りCCPで取引を清算し、清算できないものについては証拠金規制によってリスク削減を図るという方針だった。ご存じの通り証拠金規制は日本でも完全に導入され実体的にも意味のあるものとなっているが、オペレーション面に注目した上記のガイダンスについては、香港やシンガポール、オーストラリアといったアジア圏でも導入されているにもかかわらず、唯一日本だけが一部の証拠金に関係するところ以外のガイダンスを出していない。

海外当局としては、担保授受を義務付けたからといって、時価や取引件数の不一致、Disputeによって担保が受け渡せないとなると意味がないので、こうしたオペレーション面に関してのガイダンスは一連の規制の中で重要なパートとして位置づけられている。ここで重要視されているのは以下のような項目である。

  • 取引関係の文書化、法的確実性の確保
  • 取引の確認、条件の不一致のチェック
  • 時価評価のプロセスの合意と文書化
  • ポートフォリオの照合
  • コンプレッション
  • 紛争(Dispute)の解決

日本はそもそも、為替取引が何の契約もなく行われていたこともあり、コンファメーションの送付が遅れたり、時価がずれていてもその原因究明に時間が割けなかったという事情もあった。

他にもシステム化、オートメーションなどを促すSTPガイダンスも日本にはない。また〇分以内に取引を報告するというガイダンスも少ない。つまり、日本には、オペレーションを標準化、システム化し、即時処理を促すようなガイダンスが少ないように見える。マニュアル作業が多いため、数分以内に処理をするなどという規制を入れようとすれば、日本では大きな反対運動が起きそうだ。

海外はこうした規制の効果もあり、マニュアル作業を廃止し、早くからシステム化、オートメーション化が進んだ。USの取引報告などは、規制導入時に、取引直後15分以内の報告が求められ、さらなる時間軸短縮の話も出ていたため、手作業でのレポートは早々にあきらめ、すべて自動化を進めた。

それでも海外展開を行っている大手邦銀はこうした基準に併せて事務効率化を進めているので、あまり大きな問題になっていないところが多い。しかし大手以外となると、かなり海外との差が大きくなってきてしまったところもある。

また、海外でも日本の特殊性が語られることが若干多くなり、2019年などは欧州が上で述べたような日本の慣行について問題提起を行っており、日本は欧州規制とはいくつかの点において同等ではないという文書も公表している。

欧州ESMAが出した2013年の当初文書では、日本の規制は取引条件の確認やポートフォリオの照合・圧縮、証拠金の授受など多くの点で要件が不十分であると指摘された。その後、証拠金規制導入後に再評価したのがこの2019の文書である。その結果、Valuationと紛争解決、証拠金の授受については同等性が認められた。

しかし、一方以下の項目については同等性が認められなかった。

  • 取引条件のタイムリーな確認(Timely confirmation)
  • ポートフォリオの照合(Portfolio reconciliation)
  • ポートフォリオの圧縮(Portfolio compression)

これらの分野については、日本の規制が依然としてEMIRの基準と比較して不十分であると判断されたため、同等性決定の対象外とされてしまった。確かにConfirmation送付までの時間を比較すると日本はかなり長くなっており、ポートフォリオ照合やコンプレッション量も少ない。ただし、一部外資系が問題提起をしている程度で、この同等性が否定されたことすらあまり大きな話題にもならず、特に問題があるとはみなされていない。

確かに問題がない部分については特に厳しい規制をかける必要はなく、グローバルに問題視されない程度に海外と同レベルの規制を入れておけばよいというのは現実的な対応である。ただ、特に米国の場合は、リーマンショックを受けて銀行規制を厳格化しようという狙いのほかに、標準化、システム化、自動化を進めて、金融の進化を促進するような方向性へのガイダンスも数多く導入しているような気がしてならない。

確かに米系のシステム投資はかなり大きく、今やほとんど人手を介さず取引をするのが一般的となり、手数料の圧縮と取引流動性の拡大が起きているようにも思える。残念ながら海外で主流となった規制が世界中に業界標準として拡がっていく傾向は否めないので、日本でも大手だけでなく、海外規制動向に注意を払い、日本にない規制についても極力注意を払っておく必要があるのかもしれない。