昨日ARRCから公表されたLIBOR改革のBest Practicesガイドラインが注目を集めている。今後の具体的なスケジュールが細かく設定されており、これからはこのタイムラインに向けて業界が動いていくことになりそうだ。
米国のGDPの10倍の200兆ドルにものぼる巨額のLIBOR参照資産の移行に支障が生じると、市場混乱につながるため、早急に準備を進めるべきという趣旨になっている。このガイドラインはあくまでも規制で定めたルールではなく、市場参加者が自らの規模やビジネス特性に応じて、自主的に利用すべきものとされているものの、ARRCメンバーには、当局関係者も含まれており、単なるガイドラインよりは強い意味合いを持つのではないかと予想される。日本においてもこのタイムラインは意識しておく必要があるだろう。
主な論点として以下の4点が強調されている。
- 新たなUSDLIBORのCash ProductsについてはARRCが推奨したFallbackの文言を入れるべき
- LIBORからの移行に関するベンダーはSOFRをサポートするための準備を年末までに完了させるべき
- 商品毎に定められた期日以降は、新たなUSDLIBORの使用をストップさせるべき
- LIBOR消滅後に代替レートを相対で決める場合は、適用半年前までには、選択する代替レートを公表すべき
商品別には例えばデリバティブ取引に関するものを抜粋すると、以下のようなガイドラインとなっている。
- ISDAのFallbackプロトコルが公表されてから4か月以内に批准
- ディーラーはSOFRデリバティブに対する流動性を顧客に提供する様努力する。
- 今年9/30までにSOFRスワップの電子によるマーケットメークを提供
- 年末までに担保金利をSOFRにするCSAの修正
- 年末までにSOFRリンクの金利オプション取引を提供
- 来年末までにUSDのデリバティブ取引をQuoteする際のMarket ConventionをSOFRに変更
他にもビジネスローンについては、来年の6/30移行は新規USDLIBOR参照ローン(満期が2021年末を超えるもの)の提供をストップ、Closed-endの住宅ローンについては、今年の9/30が期限になっている。
ここまではっきりとしたタイムラインが決められると、業界全体で努力を継続しようという機運が高まるため、今後は移行準備が加速することになるだろう。2021年を超える満期の住宅ローンが9/30以降全てSOFRベースになり、USDの金利スワップなども来年6/30以降はSOFRだけになったりと、あまり時間がない。CSAの変更も年内に終わらせる必要がある。ここまでくると、日本の遅れが世界的にも目立ってきており、個人的には大きな危機感を抱いている。