ARRCがターム物推奨の条件を提示

LIBOR代替金利として、相変わらずフォワードルッキングなターム物金利を望む声が強いが、ARRCがこの度ターム物金利を推奨するために考慮する市場指標を公表した。3月には、流動性が不十分であることを理由に、ターム物金利を推奨できないとコメントしていたが、不満の声が多かったのかもしれない。

条件としては以下の通りだ。

  1. SOFRに連動するオーバーナイトのデリバティブ取引量の継続的な増加
  2. SOFRデリバティブの流動性を高めるためにつくられたARRCのベスト・プラクティスに対する目に見える進展。
    a. SOFRスワップおよびスワップスプレッドの電子的なマーケットメークおよび執行の提供
    b. 米ドル建てデリバティブ取引のクォートの市場標準をLIBORからSOFRに変更すること
    c. SOFRに連動した金利変動商品(スワップション、キャップ、フロアを含む)のマーケットメーク
  3. SOFR平均にリンクした、ローンを含むキャッシュ商品(前決め、後決め共)の目に見える増加

英国でもターム物金利を推奨するには、新レートであるSONIA連動のデリバティブ取引の流動性が高まることが必要としている。流動性がない中で前決めのターム物を使うと、結局市場操作が可能になり、何のためにLIBORから移行したのかわからなくなってしまうからである。その点後決めであれば、流動性の高いオーバーナイトのマーケットで実際に取引された金利から決められるので恣意性がなくなる。

米国では、やはり金利が後から決まることを問題視している参加者が多いようで、これは日本とも同じである。ただ、米国ではAmeriborやBSBYなどの代替金利が生まれ始めるとともに、流動性のない中ターム物金利に移ることはできないという原則を保っている。この点日本ではなぜか、TONA Swapの流動性がない中、ターム物のTORFを盛り上げたいという声が多いような気がする。

ARRCの今回の推奨により、SOFR Swapの流動性が高まればターム物が使えるということが明確になったため、頑張ってSOFRの流動性を上げようという動きが出てくるかに注目が集まる。日本でも「TONA Swapの流動性が上がらないとTORFが支持できない」くらいの声明があってもよさそうなものなのだが。