ほとんどの金融関連業界団体が、今年9月のマージン規制フェーズ5の延期を求めている。COVID-19関連で在宅勤務が進む中、必要な契約、オペレーションのセットアップに時間が割さけないためだ。延期の期間としては6ヶ月と1年というのが案として出されている。契約に関しては、電子署名の認められている国は良いだろうが、この点で遅れている国は在宅勤務が長引くと対応できないというコメントも報道されているが、日本のことを指しているのかもしれない。
半年延期になるとフェーズ6が来年9月に控えているので全てが半年遅れになるのだろうが、1年遅れだとフェーズ5が来年9月、フェーズ6が再来年9月ということになるのだろう。現状を見ると1年延期の可能性の方が高いように思う。
契約書やカストディアンの準備等は既にフェーズ1-4でプロセスが出来上がっているので、それほど手間がかかるとは思えない。ただし、初めて対象になるバイサイドの投資家にとっては心理的ハードルが高いのも理解できる。
ただ、個人的には、業界がこぞってこの延期を求めている背景には、昨今の市場変動によるバイサイドのパフォーマンスがあるのではないかと勘繰ってしまう。海外ではマージンコールに応えられずデフォルトをしているファンドが増えてきており、決済が滞ったり、担保が入ってこなかったりといったことが増えてきている。市場心理の悪化から投資家からの現金化要請も増えており、一時的に担保となる現金が足りなくなっているものと推測される。特にマージン規制によってVM(変動証拠金)に対する担保は欧米では現金であることが求められるため流動性危機に陥っているところが多い。
こんな状態の時に、いくらIM(当初証拠金)には国債等の現金以外の資産が使えるといっても、更なる担保負担増は避けられない。このウィルスが夏に収束するという見通しが遠のく中、9月から追加担保拠出は何としてでも避けたいという心理が働いても不思議ではない。こういう報道の仕方をするメディアは見かけないが、当然業績が悪化したから証拠金規制を延期して欲しいなどとは言えないため、今のような言い方になっているのだろう。とは言え、今回の極度の市場変動の中無理に規制導入を進めて更なる解約と市場混乱の増幅を招くのも得策ではないため、延期はやむを得ないのだろう。