SA-CVAは広がるか

SA-CVAになって、マーケットリスクヘッジやCDSによるヘッジの一部を資本計算に反映できるようになったことにより、リスク管理の実務と資本計算が近づくことになった。内部モデルを使った方式とは異なり、大手銀行が行っているヘッジのすべてが反映されている訳ではないのだが、それでも大きな進歩である。

とは言え、他の標準法とは異なり、欧州ではSA-CVAの適用に当局承認を求めているようで、モデルの検証や銀行に立ち入っての検査などが行われているらしい。CVAに関して自信をもって当局に語れる人材はそう多くなく、専門家というと、社内のクオンツが最もモデルには詳しいのだろうが、ヘッジの仕方や会計的な扱いにまで通じている訳ではなく、当局対応に慣れているという訳でもない。

欧州では標準法であるSA-CVAをあきらめて基礎的手法であるBA-CVAを適用するところが増えているという記事も以前見られたが、こういった当局対応などに関するコストが原因となっているのかもしれない。おそらくSA-CVAはコストがかかる割りにはベネフィットが少ないので簡便法で良いという判断になっているのだろう。

通常の標準法というのは、資本削減幅が限定的である代わりに、当局承認が必要なく当局が決めた方法に従って計算すれば良いという簡便法が多い。しかし、SA-CVAについては、標準法の中では若干計算が難しく、きっちりと当局が精査すべきという意見もあるのだが、そうするとBA-CVAで良いのではないかということになってしまう。

FRTBに関して言えば、市場リスクフレームワークにおいて同じことが起きており、3行を除くほとんどの欧州銀行がコストのかかるIMA(内部モデル方式)ではなく標準法で十分なのではないかという判断を下している。

ある程度厳しく精査していく必要はあるのだろうが、それが厳しすぎると誰も高度な手法を使おうと思わなくなる。そして、資本計算が実際のリスク管理と乖離したり、業界全体のリスク管理能力を低下させることにつながる可能性もある。どの程度厳しくするかについて正解はないのだろうが、この調整を誤ると金融業界にとって望ましくない結果となる危険性もある。SA-CVAについては何とか多くの銀行が適用できる方向に動いてほしいものである。