FRBの肝煎りでRRUCという団体が米国で立ち上げられた。これはReference Rate Use Committee の略でARRCを想起させる。事実、新しく立ち上げられたウェブサイトによると、Libor 改革とARRCのrecommendationから得た教訓に基づき、レファレンスレートの利用に関するベストプラクティスを確立することを目的とした会議体とのことである。最初のミーティングが今週10/9にあったようだ。
メンバーは大手銀行の専門家を主体にFRBの市場グループからも5人が参加している。FRBといっても、メンバーを見ると以前野村やドイチェで活躍したMichelle Nealなど、業界の専門家が入っている。日本でもこのような会議体で専門的な議論が活発に交わされればと思う。日銀の日本円金利指標に関する検討委員会が似たようなものではあったが、米国の方がもう少し権限が強いように感じる。特にARRCなどは規制当局の一部のようにみている市場参加者も多かった。
米国の場合銀行と当局の間で回転ドアのように人が行き来することがあるが、これは大学と銀行、政治と銀行の間でも良く見られる。これが望ましいことなのかは議論の余地があろうが、少なくとも専門家が同じ言語で議論を戦わせることになるので、議論のレベルが高くなる傾向がある。日本でも専門家が当局サイドに流れることはあるが、あくまでもアドバイザーのような役割で、当局の重役候補になるようなケースは海外より少ない。
さて、ARRCというと、ターム物SOFRのインターバンクでの取引解禁をめぐる議論が思い出されるが、Risk.netでは、今回のRRUCがこの問題に決着をつけるようなことはなさそうだという意見が紹介されていた。クレジットセンシティブレートについての議論よりも、SOFRがどのように算出され、使われるか、期末に変動しがちな点などを議論することになりそうだ。
こうなると、ターム物SOFRは当局からのアナウンスが出ない限りは現状維持が続くことになりそうだ。つまり、そう簡単にディーラー間でのターム物SOFRが取引されるようになる可能性は極めて低くなったと言えるのかもしれない。