Eurexが清算基金を15%引き上げ

EurexがDefault Fund Operational Bufferというものを9月から導入することとなったが、あまり好意的に受け入れられていないようだ。

先月7月9日に公表されたESMAのCCPに対するストレステストにおいて、Eurexの集中リスクやマーケットストレスに対する備えが十分でないという結果を受けての変更かと思われる。Eurexとしては、当局の指摘に迅速に応えたということなのだろうが、やはり拙速に対応した感は否めず、負担増の不公平感を問題視するディーラーからの反応が良くない。

集中度合いの高いポートフォリオの清算コストに対しては、以下のような不足額がESMAによって指摘されている。

ICE Clear Europe €3bn
Eurex €2bn
European Commodity Clearing €1.2bn
Euronext Clearing €0.4bn

ほかにもプロダクト別の不足額も詳細に示されており、CCPのリスク管理を見るには非常に有用なレポートとなっている。おそらくEurexはこのレポートで指摘された不足に対応するために、比較的容易に導入可能な清算基金の引き上げ(15%Up)に踏み切ったのだろう。

CCPのデフォルトマネジメントにおいては、当初証拠金(IM)と清算基金(DFまたはGF)のバランスが重要となる。特にクライアントクリアリングの顧客としては、清算基金が増えても何ら変化は生じない。CCPの仕組み上、清算基金はディーラーが拠出することになっているからだ。一方IMを増やすと顧客の拠出担保が増えるため、ディーラーにとっては影響が生じない。

したがって、DFの上昇はディーラーに不利、IMの上昇は顧客に不利(?)ということになる。ここで?を付けたのは、顧客がリスクを増やした分担保が増えるので、本当に不利と言えるかどうかは疑わしいためだ。本来自己責任原則を貫けば、リスクを増やした参加者が負担を増やすべきというのが正しい。

ではDFが増加したらその分を顧客に請求すれば良いのではないかと思われるかもしれないが、通常ディーラーは、このDFを負担する代わりにそれを手数料として請求する。手数料を上げるのは、競争上の理由から困難が伴うため、今回のような変更は単純にディーラーのリスク増、と収益源につながる。

どちらが正しいとも言えない問題なのかもしれないが、リスクの自己責任原則からすると、やはり集中リスクを加味するようIMモデルを変更する、あるいはIMのConcentration Chargeの計算を見直すというのが王道ではなかったのだろうか。