FTなどで報じられている通り、Citiの清算計画(Resolution Plan)が米国当局に却下された。これは、金融機関が、自らの破綻時に迅速に破綻処理を行い、税金投入なく秩序だった清算ができるようにする計画である。遺言状を意味するLiving Willとも呼ばれる。
米国当局の一つであるFDICが5人のメンバー全員一致で却下となった。内容的にはCitiのデータコントロールの評価を2年前の「Shortcoming」から「Devidient」に変更している。これでFEDもFDICと同じ判断をすれば罰金が科されることになる。これは何もCitiに限ったわけではなく、他の大手銀行についても、より問題は少ないとしながらも同様の懸念を表明している。
今回重要なのは、何か不正があったというよりは、リスク管理やデータガバナンスが不十分とされたという点だ。データの信頼性が低いということは、ストレスがかかった環境でのポジション解消時に大きなリスクが発生することを問題視している。詳細はFRBのレターでも確認できる。
ここで重視されているのは、社内の各部門から、正確なデータをタイムリーに取得し、分析をすることができるかどうかである。データが得られないと、ストレス時のポジション解消にどのくらいのコストがかかるかが計算できない。そしてカウンターパーティー毎の信用リスク、資本なども同時に把握する必要がある。資本計算のためにはグループ間でのデータを総合的に見なければならない。当局は、各社の状況を比べ、良いところがあれば別の銀行にも同じことを求め、業界標準が出来上がっていくことが多い。
こうしたデータ分析はユニバーサルバンク形式を取る米系では比較的容易なはずなのだが、それでもこれだけの問題が指摘されている。銀行、信託、証券などが分かれている場合、各社のポジション、リスク、資本などをタイムリーに把握できるのだろうか。少なくとも米系は商品ごとにシステムは違えども、グループ間での相違が少ない。部門、地域、子会社などのポジションを横断的に集計し、それに対してストレステストやシナリオ分析をタイムリーに行うことが求められる中、世界中の金融機関が業務フローの見直しを迫られることになるだろう。
資本計算はグループ毎に行うので、日本でも大きな変革が求められるようになるかもしれない。LIBOR改革の時に明らかになったように、グループ内のすべてのエンティティのデータを集計するのに手間取るところが多かったからだ。ネット銀行、証券、為替証拠金子会社、さらに海外拠点まで含めてストレステストを行うとなるとかなりの手間になるだろう。
世界中で資本、ファンディングなどの最適化をグループ横断的に行うのが一般的になった。最近では、取引前に資本ハードルを満たしているかを確認するだけでなく、取引を行った後の最適化処理も含めて資本ハードルを考えるようになってきている。この分野において日本は特に遅れているように感じる。