FRTBとCVA Capitalの施行は延期されるか

欧州でBasel III FRTBの延期を求める声が強くなっているが、米国の状況が不透明になってきているので、おそらく欧州でも延期となるのではないだろうか。

大手銀行にとって、資本が最大の制約になりつつある中、資本規制の施行タイミングや内容が異なると、一部の銀行を利することになってしまう。それほどまでに、資本は重要であり、このルールの違いによって、各銀行はその行動を大きく変えている。実はFRTBは、日本ではすでに一部導入されているのだが、資本やROEを現場レベルで細かく管理する必要がないからか、あまり大きな問題になっていない。

欧州がFRTB施行開始を遅らせるとすると、CVA Capitalの扱いが焦点になる。当然CVAについてもFRTBに併せて延期されると考えるのが自然なのだが、これはすでにEBAによって却下されたとの報道もある。CVAについては、FRTBほど強くPush Backするところが少ないのかもしれない。また、欧州の場合は事業会社をCVA資本賦課の対象から外してしまっているのも事態を複雑なものにしている。

事業会社向けエクスポージャーがCVA資本の対象外だとしても、会計上CVAの計上はしなければならず、それに対するヘッジも行うところがほとんである。新たなCVA資本のフレームワークでは、従前のようなシングルネームCDSのヘッジに加えて、為替や金利スワップによるマーケットリスクヘッジを資本賦課の計算時に考慮できるようになる。しかし、事業会社向けのCVAが免除になると、こうしたヘッジだけが浮いてしまう。

こうした実際のリスク管理と会計や資本計算の手法が異なるケースはほかにもあるが、個人的な経験では、これらは極力揃えていった方が望ましい。これが食い違うことにより、誤ったインセンティブで取引が行われてしまうことがあり、総合的にみるとリスク管理として望ましくないことが起きかねないと思う。