CDSのDC問題

以前から問題にはなっていたが、CDSのDC(Determination Committee)のバイサンド参加者が減っていることがニュースになっている。DCはCDSのBig Bangによって設置されたデフォルトの認定を行う決定委員会(Credit Derivatives Determinations Committee:DC)である。以前はこのクレジットイベントの認定は当事者間に委ねられていたが、これをDCの下で業界横断的にクレジットイベント認定するようになったものである

導入当初はメンバーになるべく働きかけを行っていたところもあったようだが、結局このような公の場で自分のポジションに有利な主張をするのは難しく、特に規制やコンプライアンスの厳しい銀行では、当然トレーディングポジションに基づいた発言ができないよう、法務部門担当者がDCに参加し、トレーディング部門との情報遮断も行われた。

初期の頃はフロント部門でも議論の内容に興味を持つものが多かったが、結局議論をするというよりは法律の解釈に従って決定するだけなので、次第に関心が薄れていった。コンプライアンス的に問題にならないよう慎重に外部弁護士と相談するところもあったが、結局これにはコストがかかり、業界のためにコスト負担をするという側面が強くなっていった。当初はCDS取引に詳しいフロントやオペレーション部門の担当者の参加もあったように記憶しているが、今ではほとんどが法務部門の参加者になっており、CDSの市場について議論をするというよりは法的な文言についての議論が大半を占めているものと思われる。

ここまでくると、各社から代表を送る意味があるのかという議論も持ち上がり、本音を言えば抜けたいというところが多くなっている。結局この情報を使って取引を行い利益を得ることは不可能であり、自分のポジションに有利なように議論を誘導することも不可能である。LIBOR問題などもある中、参加者間で結託して議論の方向性を変えようと思うところがあるとは考えにくい。一方準備や法的分析、社内コンプライアンス対応なでのコストは大きい。業界でコストを出し合い、法律事務所などにアウトソースしても良いのではないかと思う。

委員会の構成としては15人のうち5人がバイサイドとなっているが、今ではこのバイサイド席の2つが空席になっていると報じられている。公平性を期すためにバイサイドを加えたのだろうが、銀行ではないからといってポジショントークができるとは思えず、銀行のような大規模な法務コンプライアンス部門を持たないところにとっては、負担が大きすぎるのだろう。このような状況でバイサイドが法律主体の議論に参加できるとは思えず、参加自体に意味がなくなっているように思う。

そういう意味ではCCPの破綻管理委員会なども同じで、業界を支えるために銀行から出席者を送らざる得ず、税金や参加料のようなイメージになっているのだろう。昨今の規制環境下においては、レートを提出したり、市場にインパクトのある事柄に意見するようなことは極力避けたいというのが銀行の本音であり、そこで市場操作を画策することは不可能である。銀行サイドでは、こうした委員会への参加について厳しいポリシーを策定しており、その発言内容も細かく精査される。DCについても早晩見直しの議論が持ち上がることになるのだろう。